◆「内定への一言」バックナンバー編
「実力とは、いざという時に発揮される力ではなく、
いざという時を招かない力だ」
こんばんは。今日は久しぶりの「大橋文庫」に行ったら、なんと閉店間際で、おじさんから「まだ見ていっていいよ」と言われ、段ボールや網カゴで「行き場なし」の店内を体験した小島です。
ただでさえ「福岡最狭」を誇るあの古本屋、閉店後はあんなふうになっていたのか…と思った珍しい体験でした。
でも、岡潔さんの伝説の名著『情緒と創造』(講談社)を見つけ、他にも腰を痛めながら、いくつか名著を購入できました。
出色はやはり、もはや通販でも購入困難な『美に生きる』(林武/講談社現代新書)を\100で見つけたことでしょう。これは、FUNの朝の読書会「Business Cafe」をこよなく愛する女子大3年・T地さんに差し上げることにしました。
さて、就活ではそろそろ「エントリーシート」の提出も始まったようで、僕のところにも、添削依頼メールがちょこちょこ来るようになりました。
ということは…「通過の謝礼」の「たけのこの里」が続々届き始める季節がまた到来した、ということです。
皆様にご連絡ですが、今年は「たけのこの里」は遠慮させていただこうと思います。というのは、一昨年と去年、あまりにも多くの「たけのこ」が部屋を占領し、一時は「オレは30代で糖尿病で死ぬのでは?」と思ったからです。
今年は、ES添削は大月さんが担当することになっています。
例年、この時期の大月さんはご飯を食べる時間がないほど忙しくなるので、通過した方は「コンビニおにぎり」などがいいと思いますよ。
僕は「カゴメトマトジュース」で結構です。例年、深夜にわざわざ「ANA通過しました!野菜ジュースでもいいですか?」とか、「電通受かりました!カゴメじゃないとダメですか?」などというメールが来ますが、別に贈らなくてもいいので、夜は寝せて下さいね。
あ、ちなみにメール添削は一切受け付けません。今年は部員と就活コース参加者が倍増したので、毎週土曜日の午後を「ES添削タイム」とし、業界研究と書類・筆記対策をまとめてやろうと思っています。
さて、そのエントリーシートに「書くことがない」と言う学生さんが時々います。
本当にないことはないのですが、「企業」という、今までは一人のお客かバイトとしてしか接したことがない組織に、今度は「社員候補」として対面するわけですから、いくらか緊張もあるのでしょう。
ですから、平素は友達同士だと「あたし、○○には自信あるね」とか言っている能力も、採用試験だと控え目に書いたりする人もいます。
ということで、今日は「コンピテンシー」という、人事評価の分野で重視されて
いる概念から、「能力の評価基準」について考えてみましょう。
「コンピテンシー」が「compete」の派生語であるのは説明不要でしょう。無難に訳せば「競争力」とでも言っておけばよい言葉ですが、人事の世界では若干意味が広がります。
人事の世界では、このコンピテンシーを「安定的、かつ継続的に発揮できる能力」と定義しているからです。
例えば、学生時代に英会話に挑戦し、それをやめてエアロビクスに挑戦し、またやめてアロマセラピーに挑戦し、次は短期留学に挑戦した…という人は「行動力」なる能力がある人と評価すべきか?
答えは「NO」です。
なぜなら、行動力とは「物事に着手する力」ではなく、「着手したことに結果を出す力」を表すからです。取り組んだ物事が所定の結果(初心)に満たない状態で中断、あるいは放置するのは、「行動力がない人間だ」と評価するのが人事の常識です。
また、「試験前になると栄養ドリンクを買って徹夜し、必死の努力で乗り越える人」を、「いざという時の集中力はすごい人」と評価すべきでしょうか?
これも「NO」です。
集中力とは、リスクが来ないうちに事を処理する能力のこと。つまりは「いざという時」を招かない事前の対応力の根幹を成す力で、「いざという時」というシチュエーションがどれだけドラマチックでカッコ良くても、自分の能力や時間を計算できない能力は「欠点」でしかありません。
要するに、「行動力」にしても「集中力」にしても、発揮形態よりは発揮状態が問題になる、ということです。
いくら頑張っているとは言え、もっと早めに取り組んでおけば回避できたリスクのため、夜を徹して頑張っているというのでは、全ての能力は「あってなきがごとし」でしかありません。
リスクとは「賞味期限の切れたチャンス」のことですから、切羽詰まって、必要に迫られてからしか動けず、そうなってからしか能力を発揮できない人は「無能」だと見なすのが採用側の視点です。
なぜなら、「いざという時」、「必要に迫られた時」というのは、自覚している期限や程度を無視した時にしか到来しない状況だからです。
そういう時は、誰でもいつも以上に頑張って当然です。特に、卒業に必要な単位がかかっていて絶対に外せない試験などは、他の予定をキャンセルしてでも頑張るでしょう。
そんな努力は、学生の中では「武勇伝」のネタにはいいとしても、所詮「実力ではない」ということです。
仕事も学生生活と同じで、長期的に取り組む作業です。というより、学生時代の10倍くらい長い作業です。
仕事が日本シリーズのように「年に一度」しかやらない作業であれば、「ここぞという時の勝負強さ」は評価すべき能力でしょうが、長期的作業に「非常時の強さ」など不要です。
それより大事なのは「非常時を招かない地味な継続力」であって、そういうのを「コンピテンシー」と呼んでいるのです。
「今動けば回避可能なリスクを招かず、無理せず臆せず、日々安定的にある状態を持続していける、という前提で発揮される資質」という考え方が「コンピテンシー」です。
能力に「華やかな能力」などありません。華やかなのは結果だけで、能力はいつも地味で目立たないものです。
もし能力が目立つなら、取り掛かりが遅いか計画がまずいかのどちらかでしょう。
ということで、「エントリーシートに書くような目立った能力がない」という不安を持っておられる学生さんは、そういう「目立つ能力」など能力ではないのですから、安心して「平素無理せず発揮、継続していること」を書きましょう。
「友達と話すとき、出しゃばらずに謙虚に聞く側に回ることができます」
素晴らしい。そうやって既に習慣化している能力こそ、プラスになりますよ。
「朝は早めに学校に行って、予習や復習の時間を確保しています」
なんと優れた能力でしょうか。そうやって無理せず誇らず継続できている習慣こそ、伸びる人材にふさわしい行動です。
「誰に対しても、ありがとうとごめんなさいをすぐに言うようにしてきました」
それは絶対にプラスです。徹夜や無理はできても、そういう当たり前のことができない社会人も多いのです。これはポイントが高いですよ。
ということで、「人より目立つ」、「非常時に役立つ」、「珍しい」、「カッコいい」などという要素は、能力評価には全く関係ないことです。
「危ない時に発揮される力」など、実力ではありません。そういうのを選考書類に並べても、「こいつ、学生のくせに背伸びしやがって」と不採用にされるだけです。
それよりも、競わず飾らず、毎日地味に継続している能力の方が数倍カッコいいもの。ですから、そういう「安定的かつ持続的」な資質を、自信を持って記入しましょうね。