◆「内定への一言」バックナンバー編
「忙しいから本を読めないのではなく、本を読まないから忙しい」
おはようございます。「業界ゼミ」全108回の講義のうち、20回の下書きを作って、今日はこれからブックオフを回るのが楽しみな小島です。
昨日の「信販・カード」には、3年生は西南法・Kさん1人。他はいつものことながら、「取引先を研究したい」、「実務知識を付けたい」、「後輩の役に立ちたい」と言う4年生が大半でした。
また、演劇部からは2年生のJさんが初参加で、発表では演劇のようなコメントをいただき、見方が面白いなあと感心しました。いろんな学年の方が集まって、毎回楽しい時間を過ごさせてもらっていることに感謝しています。
さて、FUNで今年度、4年生に人気だった本といえば、『雄気堂々』(城山三郎/新潮文庫)でしょう。春からベンチャーキャピタリストになる西南4年・M地君はじめ、多くの方から「今読んでよかった!」という感想を聞きました。
昨日は慶応大学の大学院に通うTさんからも、「雄気堂々を読んでいます」という感想をいただき、その内容に対する評価を読んで、メルマガでご紹介してよかったと感じました。
僕は大学2年の春くらいだったか、本書を読み、「おれの夢はこのような事業家だ!」と決意し、秋には中退して、海外勤務に旅立ちました。それくらい、「経済・産業」の面から見た明治維新の歴史に感動したからです。
初めて本書について聞いたという方に、「雄気堂々」の概要を説明すると、この本は日本の資本主義の土台を築いた渋沢栄一の伝記です。主に全半生を描いた小説で、幕末から開国の時期、産業基盤や税制を作るのに、どれだけの努力と工夫があったか、スリリングに描かれています。
渋沢栄一は、若い頃は熱血漢で、尊皇攘夷の情熱に燃えて横浜の外国人居留地の焼き討ちを決意し、失敗してからは、なんと「幕臣」として一橋家の家臣・平岡円四郎に仕え、平岡暗殺後は、後継者の原市之進に仕えるなど、反対派からは「変節者」とも言われました。
幕府の使いとしてフランスに渡った栄一は、そこで見た銀行家と政治家、軍人のやり取りから、商業の発展が国家の成長に及ぼす影響を目の当たりにし、改革の熱意を秘めて帰国するのですが、彼の渡仏中に、幕府は崩壊してしまいました。
その後は大蔵省に勤務するも、意見の対立から下野し、多くの人材と産業を育て、500の会社、500の公益団体の設立に邁進し、93年の人生を日本経済の発展に捧げたのが、渋沢栄一の人生の概要です。
本メルマガの読者の方の中にも、一橋大学や東京女子大学の学生さんがおられますが、これらの大学も、経済教育や家庭教育を未来の日本の礎だと考えた渋沢栄一が設立を支援した大学ですよね。
大学だけではなく、証券取引所や商工会議所なども、彼の発案で創設されています。今では学生さんが憧れる大手有名企業も、彼が設立に関わった会社は数知れません。
とにかく、渋沢栄一がいなければ、明治、大正の日本経済の発展がどうなっていたか分からないほど、多方面で偉大な功績を残しつつも、決して財産欲や名誉欲に負けず、公益のために尽くした人物で、僕も学生時代、このような生き方がしたいものだと強く共感しました。
それからは、渋沢栄一に関する本やエッセイは、数多く集めてきました。その中でも優れたものをいくつか挙げると…
『論語と算盤』(渋沢栄一/国書刊行会)
『論語講義 一~五』(渋沢栄一/講談社学術文庫)
『徳川慶喜公伝』(渋沢栄一/東洋書房)
『日本型リーダーの条件』(山本七平/光文社文庫)
※最終章で渋沢栄一のリーダーシップを説明しています。
『一九九○年代の日本』(山本七平/PHP文庫)
※「起業家」について触れた箇所で、渋沢栄一を紹介しています。
『正義の時代』(渡部昇一/PHP文庫)
※「愛憎の日米関係史」に渋沢栄一の記述があります
などでしょうか。
学生時代は、近現代史の文献に加え、城山三郎さんの経済小説や高杉良さんの企業小説を読みふけり、海外勤務以降は深田祐介さんの「商人」シリーズや「東洋事情」シリーズをよく読んだものです。
帰国後、経済誌の記者になってからは、主にドラッカーやロバート・ライシュ教授の実務書や、営業関係の本が中心になりましたが、若い頃に壮大なスケールの物語を何冊も読みまくったことは、後の人生にもどれほど役立ったか分かりません。
ということで、小学生の頃から、地元の図書館の貸し出し記録を何度も塗り替えてきた僕は、学生時代も、社会人になってからも「読書中毒」の習慣が抜けず、今もって、時間があれば古本屋を巡り、喫茶店で読書に耽っています。
そういう知識と経験の集積を、今各種の講座で学生さんと共有できていることは、30代を迎えた僕の大きな喜びです。
だって、社会人の友達に本を勧めると、「忙しい」と断られ、読みたいと言ったから貸しても、「忙しくて読めなかった」と、必ずと言っていいほど読んでいないからです。
しかし、「忙しい」というのは、自分の想像力や行動のスタイルが成長しないからそう感じるだけであって、だからこそ時間を作って本を読むべきではないでしょうか。
「忙しい」、「忙しい」と馬鹿の一つ覚えのように繰り返す人に限って、時間が空いても本を読むことはありません。そもそも、時間以前にやる気がないんじゃなかろうか、と疑ってしまいます。
忙しいなら、忙しいからこそ、今の時間をもっと生産的に使うためにも、過去の偉人や優れた人物の姿勢に学び、自分の来し方と行く先を見つめる時間を、どのようにしてでも確保すべきではないでしょうか。
そうして、忙しい中にも精神の落ち着きを作って書を開くと…
「自分はなんと浅い考えでクルクルと駆け巡っていたのか」
「何のために頑張っているのかを忘れては、焦るのも当然だ」
「時間がないと言う前に、自分にはやる気がなかったのだ」
など、根本的な部分で積極的な反省が得られ、その後は見違えるように行動と結果が変わっていくものです。
そもそも、今やっている「タイムマネジメント塾」でも言っているように、「ヒマ」とは「時間を持て余していること」ではなく、「結果を出せない時間を過ごすこと」です。
どれだけ忙しく立ち回ろうが、試験や就活でバタバタしながら取り組もうが、結果が納得できるものでなければ、それは全て「ヒマ」でしかありません。
頑張ったから何か得たはずだ、ムダに見える時間だって、何かに貢献しているはずだ…と思いたいのが人情ですが、結果が出せないのなら、それは単なる「ヒマ」です。
そうして、忙しく立ち回ったはずなのに、過ごしてみて自信が得られず、何をやったか自分でも分からない…
そういう経験を繰り返すほど、人は臆病になり、自ら挑戦することがなくなって、最後は「時間がない」、「時間がなかった」などと時間のせいにし始めるものです。
だからこそ、偉人の伝記や古典を読み、精神の基盤をしっかりと形成しておくことが大事です。大きな物語を心にインストールしていない人間は、後から行動と結果に天地の差が出てくるものです。
ということで、未来ある学生の皆さんには、ぜひとも今のうちに本に親しむ習慣を作り、この、最も経済的で成果の大きい時間使用法を味方につけてほしいものだと思います。
勉強やバイトも忙しいでしょう。しかし、それとは関係なく、いつもカバンの中に1、2冊の本を入れておきましょう。そして、ちょっとでも時間がある時は、本を開いて読み進めるような習慣を付けることから始めましょう。
本を読んでいない人、本を読まない人は、社会に出てからバカにされます。知識が少ないこと以前に、空き時間を自分の成長に使う習慣がない人間は、バカ扱いされるものです。
もし今、本を読まないのが当たり前の環境にいて、それで焦らない日々を過ごしていれば、それは確実なる「退歩」を意味します。学生で本を読まないなら、それは「学生証を持ったフリーター」に過ぎません。
マーク・トウェインも「本を読まない人間は、字が読めないのに等しい」と言っていますが、それは本当にその通りです。本という「偉人の永遠の姿」を活用しない人は、文盲と何ら変わりません。
本を読まない人間に、学校に行けないアフリカの子供たちに同情する資格はありません。だって、どちらも「かわいそう」という点では同じだからです。
どっちみち、本を読まなくても、人は空き時間を何かに投じねば生活できないのですから、本を読まない人は、それをカラオケかボーリング、酒、遊びで代用し、「その場限り」の楽しみに金と労力を投じて、ますます貧しくなっていくものです。
例えば、ブックオフ今泉店で「105円」の名作を買い、50m横のベローチェで「160円」のコーヒーを注文し、2時間で読みきってしまえば、なんと「265円」で貴重な勉強ができることになります。
大学の授業は「90分=3,400円」で、「10分=380円」ですから、古本を買って安い喫茶店にこもる時間は、大学の授業で寝ている時間や、教授が遅刻して踏み倒す時間よりも、遥かに生産性が高いのが分かります。
貧乏人は「ヒマやね~」と言って1時間で数百円、数千円使って余計に知的蒙昧の度を深め、お金持ちは節約と創造で知的投資と成長を楽しむ…「空き時間の使い方」ほど人を判断できる尺度はありません。
「忙しい」。
だから何なんでしょうか。
それで、どうするんでしょうか。
そもそも、なぜそう言っているのでしょうか。
それは、改善案や目標がなく、それ以前にやる気がないのを、そう言うことでごまかしているだけ、という場合が多いものです。
「忙しい」と言うのは、本人の知恵とやる気のなさの証明にはなっても、時間のなさやその人の仕事の重要性を示す証拠にはなりません。
どんなに忙しくても、今後は、本を読む時間を確保した上で、そう言わねばなりません。
ということで、「忙しいから本が読めない」は、「本を読んで勉強しないから、いつまでたっても無駄な作業を繰り返し、能率が上がらずに忙しい」のだと解釈し、進んで本を読む習慣を作っていきましょう。
FUNのホームページには、これまでの4年間で学生さんに紹介してきた本が数百冊掲載されていますから、ぜひページごとコピーして、お近くのブックオフや古本屋さんで、買い占めるのに活用して下さいね。
大衆の口ぐせは、繰り返すうちに簡単な事実が見えなくなり、頭が洗脳されてしまう恐ろしい病気です。
そういうのに害されないためにも、偉人の鋼鉄のような言葉で精神を映し、力強く未来に挑戦していく学生生活を送りたいものですね。今そういう習慣を付けておくと、のちのち、鮮明に自覚できる差がつくものですよ。