■「内定への一言」バックナンバー編

「歴史は例証より成る哲学である」(伊藤肇)




こんばんは。昨日読んだ本があまりに面白くて寝違えてしまい、今日は「作文塾」をお休みして治療に行ってきた小島です。

時間を空けて下さっていた学生の皆様、僕の自業自得で当日にキャンセルしてしまい、本当にすみませんでした。

今日からは、新たに慶應義塾大学、横浜国立大学、京都産業大学の学生さんが読者に加わって下さったので、今日も頑張って書きます。



さて、仕事の傍ら、サークル活動を通じてもう4年も学生さんの就職のお手伝いをしていながら、僕の家には既に6年も「テレビがない」ということは、部員の方なら半分はご存知だと思います。

「どうして見ないんですか?」、「なくて退屈じゃありませんか?」と聞かれることもありますが、そもそも、経営者にとってマスコミの情報などは大半が「賞味期限切れ」であり、見る必要が存在しません。

それに、テレビの話はレベルが高くないし、お笑いもさほど笑えないので、見る時間がもったいないから見ないだけです。

そう言うと、「じゃあ、笑いのネタとかは、どうしてるんですか?」と聞かれたりしますが…。

ご心配なく。僕は日頃からよく笑い転げていて、大月さんや西南4年の石橋君などは、いつも酸欠寸前に陥っているくらいです。

そんな僕が「笑いの王道」として昔から重宝しているのが、かの有名な「ロシアンジョーク」、つまり「アネクドート」です。

これは、笑いのレベルの高さもさることながら、社会観察や人間心理の描写が巧みで、元はと言えば、海外勤務時代に同じ部屋で暮らしたユーゴスラビアの友達からたくさん聞いて、笑い転げたのがきっかけでした。

旧ソ連に国土を破壊されたユーゴスラビアを始め、東欧諸国やソ連の人々はとにかく「社会主義と人間」をモチーフにした笑いが大好きで、抑圧と搾取の中、本当に逞しいものだと感心したものです。

わが日本は、経済成長率がちょっと下がったり、サッカーの試合で負けたくらいでシュンとなってしまいますが、やはり、歴史の荒波にもまれた民族は、性格が違うものだなあと、改めて歴史や文化の違いを感じたのも、海外勤務の副産物でした。


ということで、皆さんもぜひ、就活に先立って、社会や学生のあらゆることを「定義」してみて、自分なりのポリシーを確認されてはいかがでしょうか。

きっと、学生のセンスを活かせば面白い話題が続々生まれると思います。就活も笑い転げて感動の内定、というのが理想的ですよね。

FUNの就活では、毎年明るい笑いが溢れ、「就活、めちゃ楽しい」、「やめたくない」という声が聞こえてきますが、そんな就活をぜひ、広げていきたいものです。


さて、ロシアンジョークのことを通常「アネクドート」と呼び、ユーゴの友達は「アネッドー」と発音していたのですが、調べてみると、ルーマニアかブルガリアの言葉で「地下出版」を意味する単語、とのことでした。

例えば、僕の友達は、こんなジョークを紹介してくれました。


~CIAがあるアメリカ人にロシア語、ロシア文化、歴史、風俗、習慣の全てを教え込み、スパイに仕立て上げた。

訓練は完璧で、誰が聞いても彼のロシア語はネイティブ以上であり、何を聞かれても問題ないほどのスパイに育った。

だが彼は、任務を前にして、シェレメチェボ空港でKGBに逮捕されてしまった。

彼は黒人だった…。~



こんな感じです。各国の政治や軍事の話題や民族性が盛り込まれ、抜群の機知と風刺を織り交ぜて、絶妙な笑いをもたらしてくれるのが、「アネクドート」です。

以下、いくつかネットや本で集めてみたので、今日はロシアンジョークをたっぷりご紹介してみますね。


■クレムリンの「赤の広場」にて。
ある酔っ払いが「フルシチョフはバカだ!」と叫んで走り回っていた。

すぐにKGBがやって来て、酔っ払いを逮捕した。

その罪状は「国家機密漏洩罪」だった。

☆「国家元首侮辱罪」じゃないんですねぇ…。



■夫が妻に悩みを相談していた。
夫 「妻よ聞いておくれ」
妻 「一体どうしたの?」
夫 「アレックス(息子)の奴、テストでいい点を取ったら金をやることにして以来、最高点ばかり取って来るんだが、実際のところ、どうだと思う?」
妻 「ああ、それならあの子、パパに習って半分のお金を先生に渡してるって言ってたわよ」

☆親は子供の鏡なり…。



■モスクワのあるレストランにて。
「ウェイター、これはコーヒーかい?それとも紅茶かい?」
「違いが分からないのでありますか?」
「わからんね」
「では、問題ないではありませんか」

☆共産圏では、似たような話が多いですね。



■モスクワのある工場で、3人の男が逮捕された。
一人目の労働者は、出勤時間に10分遅刻した。
「サボタージュの容疑」だった。
二人目の労働者は、出勤時間より10分早く工場に着いた。
「スパイの容疑」だった。
三人目の労働者は、定刻通り出勤した。
「西側の腕時計を所持している容疑」だった。

☆つまりは、みんな収容所行きってことなんですね。



■日本と韓国双方が領有権を主張する島があった。
所属を確認すべく、日本人と韓国人が「第三国の地図」を見ることになり、ソ連の地図を見た。
その島は日本領でもなければ韓国領でもなく、「ソ連領」と表記されていた。

☆Vladivostokは「東方を占領せよ」という意味だとか…。



■モスクワの、とあるテレビ局にて。
中央スタジオに、あのカール・マルクスが訪ねてきた。
彼の願いは、「ソビエトの労働者に呼びかけたいから、一分間でいい。時間をくれ」ということだった。
ディレクターはマルクスの過去の功績から、十秒だけ発言を許した。
「万国のプロレタリアート諸君!」
マルクスは興奮を抑えきれずに叫んだ。
「すまなかった、私を許してくれ!」

☆わが日本のテレビにも、ぜひ登場してもらいたいところです。



■モスクワのある本屋にて。
お客 「時刻表を探しているんだが」
店員 「ああ、それなら、フィクションのコーナーです」
ほどなく、もう一人のお客がやってきた。
お客 「マルクスやレーニンの本はどこかね」
店員 「一番左の一番奥にある、幻想文学のコーナーです」

☆ロシアの店員さんも、案外親切なようです。



■モスクワ大学経済学部の試験にて。
問 「資本主義はいかなる状態にあるのか、回答せよ」
答 「絶滅のふちに立っています」
問 「よろしい。では次に、共産主義はいかなる状態か、回答せよ」
答 「資本主義より、一歩進んだところにある社会です」

☆日本の国立大学でも、こんな問題を出したらいいのに。



■「プラウダ」と「人民日報」の共通点を述べよ。
「正しいのは日付だけ」

☆一党独裁、選挙なしで「全国人民代表大会」ですからね。



■ソ連の高校で、教師が生徒に質問した。
教師 「アメリカについて知っていることを述べよ」
生徒 「帝国主義で異民族は抑圧され、犯罪と汚職が横行する国です」
教師 「では、経済面で知っていることを述べよ」
生徒 「失業と貧困の巣窟であります」
教師 「よろしい。では最後に、わが国の経済計画について述べよ」
生徒 「まずアメリカに追いつくことであります」

☆これぞ、教育の成果…。



■天気予報で「シベリアの気温は-45度」と聞いた男。
心配になって、収容所にいる友人に電話をかけた。
男 「おい、お前のとこ、ひどい寒さだってな」
友 「そうでもない。-20度から25度くらいだ」
男 「でもテレビでは、-45度って言ってたぞ」
友 「ああ、確かに外はそのくらいだ」

☆1,000万人の無賃労働はスターリン最大の発明だそうです。



■ソ連の高校の社会科のテストにて。
問 「キリスト教と社会主義の共通点は何か?」
答 「キリスト教は清貧を説き、社会主義はこれを実行した」

☆なぜ…?その答えは次をどうぞ。



■マルクスは科学者だったろうか?
いや違う。
なぜ?
科学者だったら、社会主義をまず豚で実験しただろう。

☆社会科学と自然科学の違いは「実験できるかどうか」ですからね。



■社会主義の六つの奇跡とは?
1.失業はないが、働いている者もいない。
2.働いている者はいないが、全ての者が給料を貰っている。
3.全ての者が給料を貰っているが、それでは何も買うことができない。
4.何も買うことができないが、誰もが何でも持っている。
5.誰もが何でも持っているが、全ての者が不満を持っている。
6.全ての者が不満を持っているが、選挙では体制側に票が入る。

☆実に見事な回答です。



■息子がエリツィンに尋ねた。
息子 「お父さん。酔っぱらうってどういうことなの?」
大統領 「そうだな。例えばそこにグラスが2つあるだろう。それが4つに見えたら、酔っぱらっているということなんだよ」
息子 「でもお父さん。グラスは1つしかないんだけど」

☆橋本元首相の歓迎式典でも酔っ払ってました、そういえば。 



■ソ連とアメリカの「言論の自由」の違いとは。
ブレジネフ 「わがソ連では、憲法によって言論の自由を保障している」
ケネディ 「わが合衆国では、発言した後の身の安全も保障している」

☆言った後が大事なんですねぇ。



■モスクワの高校にて。
問 「資本主義とは何か」
答 「富の不平等な分配である」
問 「社会主義とは何か」
答 「貧困の平等な分配である」

☆わが日本の高校生より頭がいいかもしれません。



■ブッシュが神に尋ねた。
ブッシュ 「おお主よ、アメリカ国民はいつ幸せになれるのでしょうか」
神  「100年後だ」
これを聞くと、ブッシュは泣きながら走り去った。
プーチンが神に尋ねた。
プーチン 「おお主よ、ロシア国民はいつ幸せになれるのでしょうか」
これを聞くと、神は泣きながら走り去った。

☆KGB出身の大統領ということですからね。



■モスクワの小学校にて。
教師 「西側のおとぎ話の特徴は?」
生徒 「むかしむかし、で始まります」
教師 「では、わがソ連のおとぎ話の特徴は?」
生徒 「やがていつかは、で始まります」

☆さすが、子供はよく見てますね。



■「フルシチョフ書記長暗殺未遂事件」の容疑者となったイワン。
警察 「それにしてもだらしない男だな。あの近距離から射ち損なうとは」
イワン 「だって、私がピストルを抜いた途端、周りの連中が飛びかかってきたんです」
警察 「人民が書記長を救ったんだな」
イワン 「いいえ。みんな口々に、おれにやらせろ、おれにピストルをよこせ、おれがやる!ってわめくので、射ち損ねたんです」

☆そういう理由なら仕方ない。



■ブレジネフ曰く。
「わが国にジョークなど必要無い。なぜなら、わが国の存在自体がジョークだからである。」

☆書記長、日本の義務教育もジョークですぞ。



■フィンランドからソ連を訪れた旅行者が、夜のモスクワで道にできた穴に足を取られ転んだ。
フィンランド人はソ連の警察に言った。
「わがフィンランドでは、こういう危険な場所には赤い旗を立てて注意を促している」

警察は言った。
「あなたは、国境を越える時に赤旗を見なかったのですか?」

☆そういう意味だったんですね…。



■社会科の授業で、生徒が先生に質問した。
生徒 「民主主義と社会主義の違いを教えてください」
先生 「簡単に言えば、椅子と電気椅子の違いのようなものだ」

☆さすが先生。



■天国のドアで、ある老人が神の審判を受けていた。
番人 「お前の父親は生前何をしていた?」
老人 「実業家でした」
番人 「ふん、資本家か。で、母親は?」
老人 「商人の娘でした」
番人 「プチ・ブルジョワだな。で、お前の職業は?」
老人 「著述業です」
番人 「どうせ資本家の提灯持ちだろ?で、お前の嫁は?」
老人 「貴族の娘でした」
番人 「おまえのような者は天国に入れぬ。して、お前の名前は?」
老人 「カール・マルクスです」

☆空想から幻想へ…。



■モスクワ大学文学部の授業にて。
教授 「ソ連の作家とフランスの作家との違いは?」
学生 「フランスの作家は牢屋に入った後、ベストセラーを書きます」
教授 「して、わがソ連は?」
学生 「ベストセラーを書いた後、牢屋に入ります」

☆この順番の違いのために、人類は争ってきたわけです。



■ブレジネフ書記長が誘拐され、犯人から脅迫状が届いた。
「すぐに身代金を1000万ルーブル払え。でないと、ブレジネフを生かして帰すぞ」
クレムリンはすぐさま言われた額を用意した。

☆共産圏では人質の概念も逆のようです。



■中ソ紛争勃発。
役人 「閣下、大変です!毛沢東が核ミサイルを持って攻めてきました」
フルシチョフ 「安心しろ。あのミサイルはわが国の技術で作ってある」

☆さすが、謀略の国。



■アメリカに先駆け、月面着陸に成功したソ連の学校。
先生 「わがソ連は世界無敵だ。次は火星にだって行けるぞ」
生徒 「先生、その前に質問があります」
先生 「なんだ。言ってみよ」
生徒 「僕たちがドイツに行けるのは、いつになるのでしょうか」
先生 「慌てるな。社会主義には段階的な成長が必要だ」

☆ロケットは飛ばせても、トイレの水漏れが直せないのが共産圏。



■ソ連の高校の理科の授業にて。
問 「スプートニク号の仕組みを簡潔に述べよ」
答 「チェコのウラン、ドイツの技術、ソ連の犬によって出来ています」

☆なんだか、どこかの国のミサイルのようでもあります。



■ソ連の学生がワシントンでアメリカ人に自慢した。
アメリカ人 「俺の国では、ホワイトハウスの前でケネディの悪口を言っても、逮捕されないんだぜ」
ロシア人 「ふん、俺の国でも、クレムリン宮殿の前でケネディの悪口を言ったって、逮捕されないんだぜ」

☆どうも、前提がかみ合ってないようです。



■ニューヨーク発モスクワ行きの飛行機での機内放送。
「皆様、当機は間もなくシェレメチェボ空港に着陸します。現地との時差は、50年と1時間です」

☆この正確さ、有り難い。



…という、集めたアネクドートのうち、およそ1/4をご紹介しましたが、実に人間観察が巧みだとは思いませんか?

「義務教育」、「日本型資本主義」という名で社会主義を教えているわが日本にも当てはまりそうなジョークがいくつかあって、ロシアンジョークこそ、社会主義より普遍的だと思ってしまいます。

わが国では「歴史」と言えば「暗記物」とパブロフの犬のように答えるほどつまらない教育が支配的ですが、元来、歴史ほど勉強になる学問は他にないと思います。


FUNには昔から愛読者が多い『十八史略の人物学』(PHP文庫)を書いた伊藤肇さんは、本書の中でいくつかのアネクドートを紹介し、時代は変わっても、人間の変わらぬ愚かさを論じて、「歴史は例証より成る哲学である」と書いています。

崇高な価値を持つ人間の尊厳を思えば、人を使って実験できる理論や制度など、存在しません。

だからこそ、人間は歴史を学び、そこから無限の教訓と仮説を手に入れるのです。歴史が繰り返されることはありませんが、型はいつも繰り返されているからです。

そういう心掛けで各国の歴史を学んでみると、民族や文化、宗教は違っても、人間の浅はかさとみじめさは古今東西共通していて、人とはなかなか進化しないものだなぁという思いを感じずにはいられません。

これは、産業や経済についても言えることです。僕が学生さんに、志望業界や進路の型によらず、創業史を読むように毎年進めているのは、そこには仕事において経験するあらゆる苦悩や喜びが綴られているからです。

そして、そういう事例と人物を豊富に心の中に済ませておけば、人は「孤独」や「空しさ」など感じないものです。

また、「おれだけ」、「ウチだけ」などと慢心することもなく、謙虚さと積極性が両立するという、理想的な仕事や経営ができるようになります。


今日たくさん紹介したロシアのジョークも、時代と文化を超えて普遍性を持っていたからこそ、今もって世界中で笑われ、教訓にされ、思考の材料として活用されているのでしょう。

笑いの中に含まれた真実を思うと、とてもジョークでは済まないところが「哲学」たるゆえんです。

「歴史と就職?関係ないね」という貧しい気持ちで未来を展望するのではなく、こういう時期だからこそ、心を雄大に保ち、視野を壮大に広げるためにも、ぜひ歴史を勉強してみてはいかがでしょうか。


歴史と文学こそは、王者の学問です。

歴史や文学は「就職に不利」だとか言われますが、王者は就職しないからこそ、歴史と文学を何より優先して学んできたのであって、法学や経済学こそ、小役人の学問です。

思想や哲学を法律や経済に従属させたからこそ、社会主義は敗退し、問題は多くても、個人の思想や人生観の下に法律や経済制度を構築してきたからこそ、資本主義が生き残ったのではないでしょうか。

少なくとも、大卒なら、歴史や文学による感動に裏付けられないような就職など、すべきではありません。理想とする生き方に支えられない就職など、ただの奴隷の作業です。

まともな勉強をしている若者が、「就職が嫌だ」、「就活は疲れる」などと言うことがあるはずがなく、嫌なら考え方や生き方が間違っているだけです。

そんなのは、どうせ、自分の都合や見栄しか考えていないだけのことであって、そういうのは身分は学生から社会人に変わっても、内面的には何も変わりません。

人間や社会を深く見つめ、他人の喜びをわが喜びとし、雄大な人生を描き、一つ一つの経験を物語としていくためにも、最初の仕事である就活を、悔いなくやり抜きたいものですね。