■「内定への一言」バックナンバー編
「何をやってきたかより、何をやれるかで自分を評価しよう」
こんばんは。昨日は一日中、『暗黒日記』(清沢洌/評論社「復初文庫」)を読みふけっていた小島です。
戦前の貴重な記録にして「日本人と教育」を論じた一級資料なのに、岩波文庫から復刊された「暗黒日記」には本編の1/3しか収録されておらず、どうにかして「評論社版」の合本を探すも、既に「品切れ」…。
ところが、先日立ち寄った六本松の葦書房に、なんと4,500円の格安価格で、そこまでは要求していなかった「昭和21年版」が売っていました。
これは実にすごい本で、日本人の深層心理、群集心理が手に取るように見えてきます。こういうのを、本当の日記、記録と言うのでしょう。詳細は夏の「近現代史勉強会」で。
今日は朝から…
8:00~9:30 Business Cafe『信ずることと知ること』(小林秀雄)
10:00~12:30 FUNゼミ リーダー塾⑥『歴史に学ぶリーダーシップ』
13:45~15:30 FUNスピーチ塾④『例え話の作り方と使い方』
16:15~17:30 FUN近現代史勉強会⑪『文化なき文化國家』
というスケジュールで、先ほど帰宅しました。
今日は西南国際文化3年のAさんが新たに仲間に加わり、またまた活気が高まりそうで、来年の活動が本当に楽しみですね。女子大3年・Tさんは本当に友達いっぱいで、頼もしい限りです。
さて、僕は最近は全く本業をやっていないんですが、今まではフリーターや中途採用社会人を対象とした再就職・転職支援をやってきました。
記者時代の思い付きから始めた仕事で、色々と考案したノウハウも多いのですが、やはり、就職や転職には世代や経験に応じたメリットとデメリットがあり、案外、当事者がそれを知らないことに驚くこともあります。
ということで、今日は「新卒」ならではのメリットを簡単に説明します。
これは、知っている人は知っているでしょうが、世の中で新卒のみが、「見込み」だけで採用してもらうことができます。
要するに、できるかできないかではなく、できたかできなかったかでもなく、「やりたいかどうか」で判断してもらえるというわけです。
つまり、「過去」や「現在」以上に、「未来」に比重を置いた志望動機を語れるのが、新卒の一番のメリットだと言えるでしょう。
「え?それがどうメリットなわけ?」と思った方もいるでしょうから、皆さんがそのまま卒業すれば、どういう基準で見られるかをご説明します。
社会人の転職には、エントリーシートではなく「職務経歴書」というものが必要になります。あまり重視しない会社もありますが、重視しない会社はあまり良くない会社だというのが僕の印象です。
僕の持論としては、「学歴不問」とか「経験不問」なんてことはあまり言いたくなく、そういうのは学歴コンプレックスのある人間のまやかしだと思います。
やはり、その人がどういう人間であるかを知るのに「過去」は貴重な情報源だし、25歳も過ぎれば、人がいきなり「突然変異」をする、なんて出来の悪い進化論めいた話は信じられません。
出た学校が有名であれ無名であれ、本人が誇っていれば、それは立派な経歴です。大学名しか誇れない人も使い物になりませんが、学歴を軽視する人も信用なりません。
ですから、過去は与信対象としては、立派な基準になります。
大体、社会に出ておきながら語るべき物語を持っていない人間に、まともな未来が開けると考える方がおかしいし、「経験不問」と言っておきながら、それは宣伝上の文句で、実際は過去で評価する、なんてこともよくあります。
ですから、僕の仕事の大半は「経済教育」であると同時に、もう一つは「埋もれた物語の発掘と再現」や「言葉にならなかった経験や思いの抽出・整理」です。
人に説明する時は面倒なので「再就職支援」と言っていますが、実際は脚本家や翻訳家の性質が強い仕事で、非常に言語感覚が鍛えられる仕事です。
さて、「職務経歴書」はその名の通り「職務」の経歴を時系列で記した書類ですが、そこには具体的な①期間、②規模(人数・予算)、③目的、④関係者、⑤成果、⑥所感を過不足なく記入せねばなりません。
しかし、「辞めればいーことあろーもん」という気分で気軽に辞めた社会人には、なんと、驚いたことに、人にまともに語れる職務経歴すらないのです。
これは、信じられないことかもしれませんが、本当に「着替え」のような感覚で転職を希望する人が、驚くほど多いものです。
そういう社会人やフリーターの中で「一番多い経歴」は何だと思いますか?
それは…。
「一身上の都合」です。
毎年ほどよく身内の不幸があり、それと間隔を隔てるように「人間関係のもつれ」、「超過残業」、「約束違い」、「夢への挫折」が起こるなんて、「一身」に対して、そんなに都合よく事件が起こるはずがありません。
中には、まともな仕事を任せられる前に解雇された人や、「それで職務か?」と思うほど瑣末な作業を雑然と書いている人もおり、世の中には自分をうまく説明できずに貧困や就職難に苦しむ人のなんと多いことか、驚かずにはいられません。
そして、そういう人ほど決まって、「人のマネはしたくないっす!」とか、「今はダメでも、未来で勝負するっす!」とか言うんです…。
あんたねぇ…。
「人のマネはしたくない」なんて、マネできる実力がある人間だけが発言を許される言葉で、マネする意志力もない人間には、そういうことを言う権利もないんだって。
「今はダメ」なら、未来もダメなんだって…。じゃあ、なんで前職の文句を言ってるんでしょう。慣れた職場でもダメだった人が、どうして新天地でそれ以上の成果を出せるというのか。
こういう方々の職務経歴書をバッチリ仕上げ、本人の人格までも文章のように変えてしまう僕って、やっぱり天才なのか?と思うほどです。
ひとたび社会に出れば、夢を語る前に、それにふさわしい過去を保有していなければ、未来を語る資格は奪われてしまいます。
もちろん、夢やビジョンを聞く会社はたくさんありますが、前職の不満を口にする人や、「環境が変われば頑張れる」という人は、まず受かりません。
ちゃんと、職務経歴書を通じて客観的に検証・共有できる履歴を公開しない限り、中途採用の場合は話が進まない場合が多いのです。
それに、1~2年でまともな仕事を任されることはなく、それくらいの期間は大事な下積みですから、下積みの意義を積極的に描かず、下積みのうちに辞めた人間は、職務経歴以前の問題で、正直、「話にもならない」のです。
もちろん、退職者にこういう話をすると、「ちょっと待って下さい。私にだって言い分はあります」と勇ましくなりますが、それは僕に言うことじゃなくて、前の職場で実行しておくべきこと。
退職については無関係、そもそも面識すら発生していなかった僕に不平や不満をぶつけて自分を正当化するほど、「ああ、クビにされて当然だなあ」と思うわけです。
このように、過去の怠慢や前職の中傷によって「夢を語ること」を禁じられた社会人は、乏しい過去のみで勝負しないといけないため、転職において給料が上がることは、まずありません。
学生さんは「夢が見つからない」、「やりたいことが分からない」と言って悩んでいますが、あと数年もたつと、たとえそれがあっても、それに見合う過去の実績を持っていなければ…。
「夢はいいから、何やったの?」と言われるだけです。夢で、未来で自己表現できない辛さは、そういう状態に陥って初めて分かるようで、それで困り果てた人たちが僕の所に来て「再生」するのです。
ここまでご説明すると、新卒という身分がいかに恵まれた立場か、よくお分かりだと思います。
それは別に「甘やかされている」という意味ではなく、「初めて社会人になる」という人生のステップアップの舞台に、どういう意気込みを持っているかという「覚悟」が判断基準になる、ということです。
新卒ゆえに、職務経歴が聞かれることはなく、「働く姿」は学生時代の諸経験からの類推で描かれ、「将来への意思表示」は丸ごと聞いてもらえます。
判断はその先の問題ですが、未来を堂々と語って許されるという立場は、利用しない手はありません。
もちろん、そのメリットに付け込んで虚偽報告や誇張を行おうと思っても、そんなのは5秒くらいで見破れますから、そういう「背伸び」や「メッキ」を奨励するのではありません。
それよりも、「仕事そのもの」より、社会や人生に対してどのような考え方を持っているか、どういう人間になりたいか、どういう生き方をしたいか、それが新卒の一番のニュースなのです。
つまり…。
「何をやってきたかより、何をやれるか」が大事だということです。
学生さんは「自己分析」といって、さも自分の価値は2年弱の大学3年生の時点で決まってしまったかのようにノートを書きなぐっては、ため息をついたりしていますが、それは「話題は過去から探すもの」と思い込んでいるからではないでしょうか。
もちろん、過去に素晴らしい経験がある方は、それを堂々と語るべきです。
しかし、皆さんの身分だけが「未来」を同等に語って歓迎されるのだという事実も、自己分析や志望動機作成の際には思い出してもらいたいことです。
人の価値は過去でも決まりますが、それ以上に未来によって決まるもの。
多くの学生は「過去か今によって未来を決める」という思考方法を採りますが、それは逆で、「未来を描けば今が変わる」と考えるべきです。
要するに、自分の価値は「夢」で決まる、と本気で信じていいのが新卒の特権です。
しかし…この世で一番自分の夢を疑い、自分を邪魔し、自分を批判するのも、また「自分」です。
我々は劣勢に立たされたり、物事がうまくいかなくなると、すぐに「適切な責任者」を探し、自分だけを潔白に保とうとしたがりますが、そうすればするほど、自分の責任が際立つばかり。
本当のところ、環境も他人も、どれだけ頑張っても、若者の夢を阻害したりできないのですが、惜しむらくは、自分で自分の芽を潰してそれを「景気」とか「時代」のせいにする若者の多さです。
話題が足りないと思う方は、過去だけを見るのではなく、未来も話題に加えましょう。別に心配はいりません。実行して達成すればいいんですから。
「お客様に、君がいてよかったって言われたいんです!」
「同期トップを達成したいです!」
「5年後、新人が憧れる上司になりたいです!」
そういう話題を、どんどん付け加えればいいではありませんか。
大半の新卒は「でも、やれなかったらどうしよう…」と考えて遠慮しているんですから、話さない手はありません。
話せば、人事担当者も先輩も、皆さんの夢を理解し、応援します。そして動けば、必ず夢は叶います。
成功は簡単なことです。
「言って、動いて、そうなるまでやめない」だけで、小学生でも理解できるプロセスを踏めば実現できるんですから。
頭がいい人間ほどこういう単純な哲学を疑いますが、そういう人こそ世の中で一番頭が悪いのです。だって、「自分で自分の邪魔をしているから」。
「実は、頑張るのは嫌なんだ」と言う人は知りませんが、本当に頑張りたい人は、会社だってそういう新卒には万全の応援体制で応えたいと望んでいるんですから、どんどん夢を表明すべきです。
皆さんが今、自分が運営している野球チームに「小学生」を採用するとしたら、どこを見ますか?
日頃の素行もある程度は判断するかもしれませんが、それ以上に「4番になりたいです!」、「ショートを守りたいです!」、「ホームラン王になりたいです!」という意欲ではないでしょうか。
そして、そういう夢を表明してもらってこそ、要望に応じた指導や支援が可能になるというもの。ですから、夢を「孤独な作業」と考えず、「チームプレイ」だと捉え、積極的に発信すべきです。
社会人になって転職する時は、全て職務経歴、つまり「実績」や「信用」で語らないといけないので、その頃になって「夢を語りたい」と思っても、新卒のように単純にはいきません。
将来語るべき実績は、まさに今の自分が「最初の仕事」をどう考えているか、によって決まるのです。その意味では、今の決断で、この5年くらいの将来は全て決まってしまう、ということです。
そう考えず、「今だけ」、「とりあえず内定」と思って夢を出し惜しみし、小利口な要領だけで受かった人が、応援も理解もされず、寂しく退職して、語るべき実績を持たないフリーターになっているのです。
夢の発信は、内定のためだけに必要なのではなく、むしろ、その先の皆さんの活躍にこそ、大切なこと。
「言ってできなかったらどうしよう?」などは愚問で、「言ってやらなかったらどうしよう?」と考えるべきです。自分がやれば、あとは周囲が応援してくれるし、周囲が応援してくれれば、不思議なくらいの力が出ます。
未来の自分と約束し、それを必ず達成するのだと言い聞かせ、「やってきたこと」に感謝しつつ、「これからやれること」を描いて自分を鼓舞していきましょう。
「何をやってきたかより、何をやれるかで自分を評価しよう」
こんばんは。昨日は一日中、『暗黒日記』(清沢洌/評論社「復初文庫」)を読みふけっていた小島です。
戦前の貴重な記録にして「日本人と教育」を論じた一級資料なのに、岩波文庫から復刊された「暗黒日記」には本編の1/3しか収録されておらず、どうにかして「評論社版」の合本を探すも、既に「品切れ」…。
ところが、先日立ち寄った六本松の葦書房に、なんと4,500円の格安価格で、そこまでは要求していなかった「昭和21年版」が売っていました。
これは実にすごい本で、日本人の深層心理、群集心理が手に取るように見えてきます。こういうのを、本当の日記、記録と言うのでしょう。詳細は夏の「近現代史勉強会」で。
今日は朝から…
8:00~9:30 Business Cafe『信ずることと知ること』(小林秀雄)
10:00~12:30 FUNゼミ リーダー塾⑥『歴史に学ぶリーダーシップ』
13:45~15:30 FUNスピーチ塾④『例え話の作り方と使い方』
16:15~17:30 FUN近現代史勉強会⑪『文化なき文化國家』
というスケジュールで、先ほど帰宅しました。
今日は西南国際文化3年のAさんが新たに仲間に加わり、またまた活気が高まりそうで、来年の活動が本当に楽しみですね。女子大3年・Tさんは本当に友達いっぱいで、頼もしい限りです。
さて、僕は最近は全く本業をやっていないんですが、今まではフリーターや中途採用社会人を対象とした再就職・転職支援をやってきました。
記者時代の思い付きから始めた仕事で、色々と考案したノウハウも多いのですが、やはり、就職や転職には世代や経験に応じたメリットとデメリットがあり、案外、当事者がそれを知らないことに驚くこともあります。
ということで、今日は「新卒」ならではのメリットを簡単に説明します。
これは、知っている人は知っているでしょうが、世の中で新卒のみが、「見込み」だけで採用してもらうことができます。
要するに、できるかできないかではなく、できたかできなかったかでもなく、「やりたいかどうか」で判断してもらえるというわけです。
つまり、「過去」や「現在」以上に、「未来」に比重を置いた志望動機を語れるのが、新卒の一番のメリットだと言えるでしょう。
「え?それがどうメリットなわけ?」と思った方もいるでしょうから、皆さんがそのまま卒業すれば、どういう基準で見られるかをご説明します。
社会人の転職には、エントリーシートではなく「職務経歴書」というものが必要になります。あまり重視しない会社もありますが、重視しない会社はあまり良くない会社だというのが僕の印象です。
僕の持論としては、「学歴不問」とか「経験不問」なんてことはあまり言いたくなく、そういうのは学歴コンプレックスのある人間のまやかしだと思います。
やはり、その人がどういう人間であるかを知るのに「過去」は貴重な情報源だし、25歳も過ぎれば、人がいきなり「突然変異」をする、なんて出来の悪い進化論めいた話は信じられません。
出た学校が有名であれ無名であれ、本人が誇っていれば、それは立派な経歴です。大学名しか誇れない人も使い物になりませんが、学歴を軽視する人も信用なりません。
ですから、過去は与信対象としては、立派な基準になります。
大体、社会に出ておきながら語るべき物語を持っていない人間に、まともな未来が開けると考える方がおかしいし、「経験不問」と言っておきながら、それは宣伝上の文句で、実際は過去で評価する、なんてこともよくあります。
ですから、僕の仕事の大半は「経済教育」であると同時に、もう一つは「埋もれた物語の発掘と再現」や「言葉にならなかった経験や思いの抽出・整理」です。
人に説明する時は面倒なので「再就職支援」と言っていますが、実際は脚本家や翻訳家の性質が強い仕事で、非常に言語感覚が鍛えられる仕事です。
さて、「職務経歴書」はその名の通り「職務」の経歴を時系列で記した書類ですが、そこには具体的な①期間、②規模(人数・予算)、③目的、④関係者、⑤成果、⑥所感を過不足なく記入せねばなりません。
しかし、「辞めればいーことあろーもん」という気分で気軽に辞めた社会人には、なんと、驚いたことに、人にまともに語れる職務経歴すらないのです。
これは、信じられないことかもしれませんが、本当に「着替え」のような感覚で転職を希望する人が、驚くほど多いものです。
そういう社会人やフリーターの中で「一番多い経歴」は何だと思いますか?
それは…。
「一身上の都合」です。
毎年ほどよく身内の不幸があり、それと間隔を隔てるように「人間関係のもつれ」、「超過残業」、「約束違い」、「夢への挫折」が起こるなんて、「一身」に対して、そんなに都合よく事件が起こるはずがありません。
中には、まともな仕事を任せられる前に解雇された人や、「それで職務か?」と思うほど瑣末な作業を雑然と書いている人もおり、世の中には自分をうまく説明できずに貧困や就職難に苦しむ人のなんと多いことか、驚かずにはいられません。
そして、そういう人ほど決まって、「人のマネはしたくないっす!」とか、「今はダメでも、未来で勝負するっす!」とか言うんです…。
あんたねぇ…。
「人のマネはしたくない」なんて、マネできる実力がある人間だけが発言を許される言葉で、マネする意志力もない人間には、そういうことを言う権利もないんだって。
「今はダメ」なら、未来もダメなんだって…。じゃあ、なんで前職の文句を言ってるんでしょう。慣れた職場でもダメだった人が、どうして新天地でそれ以上の成果を出せるというのか。
こういう方々の職務経歴書をバッチリ仕上げ、本人の人格までも文章のように変えてしまう僕って、やっぱり天才なのか?と思うほどです。
ひとたび社会に出れば、夢を語る前に、それにふさわしい過去を保有していなければ、未来を語る資格は奪われてしまいます。
もちろん、夢やビジョンを聞く会社はたくさんありますが、前職の不満を口にする人や、「環境が変われば頑張れる」という人は、まず受かりません。
ちゃんと、職務経歴書を通じて客観的に検証・共有できる履歴を公開しない限り、中途採用の場合は話が進まない場合が多いのです。
それに、1~2年でまともな仕事を任されることはなく、それくらいの期間は大事な下積みですから、下積みの意義を積極的に描かず、下積みのうちに辞めた人間は、職務経歴以前の問題で、正直、「話にもならない」のです。
もちろん、退職者にこういう話をすると、「ちょっと待って下さい。私にだって言い分はあります」と勇ましくなりますが、それは僕に言うことじゃなくて、前の職場で実行しておくべきこと。
退職については無関係、そもそも面識すら発生していなかった僕に不平や不満をぶつけて自分を正当化するほど、「ああ、クビにされて当然だなあ」と思うわけです。
このように、過去の怠慢や前職の中傷によって「夢を語ること」を禁じられた社会人は、乏しい過去のみで勝負しないといけないため、転職において給料が上がることは、まずありません。
学生さんは「夢が見つからない」、「やりたいことが分からない」と言って悩んでいますが、あと数年もたつと、たとえそれがあっても、それに見合う過去の実績を持っていなければ…。
「夢はいいから、何やったの?」と言われるだけです。夢で、未来で自己表現できない辛さは、そういう状態に陥って初めて分かるようで、それで困り果てた人たちが僕の所に来て「再生」するのです。
ここまでご説明すると、新卒という身分がいかに恵まれた立場か、よくお分かりだと思います。
それは別に「甘やかされている」という意味ではなく、「初めて社会人になる」という人生のステップアップの舞台に、どういう意気込みを持っているかという「覚悟」が判断基準になる、ということです。
新卒ゆえに、職務経歴が聞かれることはなく、「働く姿」は学生時代の諸経験からの類推で描かれ、「将来への意思表示」は丸ごと聞いてもらえます。
判断はその先の問題ですが、未来を堂々と語って許されるという立場は、利用しない手はありません。
もちろん、そのメリットに付け込んで虚偽報告や誇張を行おうと思っても、そんなのは5秒くらいで見破れますから、そういう「背伸び」や「メッキ」を奨励するのではありません。
それよりも、「仕事そのもの」より、社会や人生に対してどのような考え方を持っているか、どういう人間になりたいか、どういう生き方をしたいか、それが新卒の一番のニュースなのです。
つまり…。
「何をやってきたかより、何をやれるか」が大事だということです。
学生さんは「自己分析」といって、さも自分の価値は2年弱の大学3年生の時点で決まってしまったかのようにノートを書きなぐっては、ため息をついたりしていますが、それは「話題は過去から探すもの」と思い込んでいるからではないでしょうか。
もちろん、過去に素晴らしい経験がある方は、それを堂々と語るべきです。
しかし、皆さんの身分だけが「未来」を同等に語って歓迎されるのだという事実も、自己分析や志望動機作成の際には思い出してもらいたいことです。
人の価値は過去でも決まりますが、それ以上に未来によって決まるもの。
多くの学生は「過去か今によって未来を決める」という思考方法を採りますが、それは逆で、「未来を描けば今が変わる」と考えるべきです。
要するに、自分の価値は「夢」で決まる、と本気で信じていいのが新卒の特権です。
しかし…この世で一番自分の夢を疑い、自分を邪魔し、自分を批判するのも、また「自分」です。
我々は劣勢に立たされたり、物事がうまくいかなくなると、すぐに「適切な責任者」を探し、自分だけを潔白に保とうとしたがりますが、そうすればするほど、自分の責任が際立つばかり。
本当のところ、環境も他人も、どれだけ頑張っても、若者の夢を阻害したりできないのですが、惜しむらくは、自分で自分の芽を潰してそれを「景気」とか「時代」のせいにする若者の多さです。
話題が足りないと思う方は、過去だけを見るのではなく、未来も話題に加えましょう。別に心配はいりません。実行して達成すればいいんですから。
「お客様に、君がいてよかったって言われたいんです!」
「同期トップを達成したいです!」
「5年後、新人が憧れる上司になりたいです!」
そういう話題を、どんどん付け加えればいいではありませんか。
大半の新卒は「でも、やれなかったらどうしよう…」と考えて遠慮しているんですから、話さない手はありません。
話せば、人事担当者も先輩も、皆さんの夢を理解し、応援します。そして動けば、必ず夢は叶います。
成功は簡単なことです。
「言って、動いて、そうなるまでやめない」だけで、小学生でも理解できるプロセスを踏めば実現できるんですから。
頭がいい人間ほどこういう単純な哲学を疑いますが、そういう人こそ世の中で一番頭が悪いのです。だって、「自分で自分の邪魔をしているから」。
「実は、頑張るのは嫌なんだ」と言う人は知りませんが、本当に頑張りたい人は、会社だってそういう新卒には万全の応援体制で応えたいと望んでいるんですから、どんどん夢を表明すべきです。
皆さんが今、自分が運営している野球チームに「小学生」を採用するとしたら、どこを見ますか?
日頃の素行もある程度は判断するかもしれませんが、それ以上に「4番になりたいです!」、「ショートを守りたいです!」、「ホームラン王になりたいです!」という意欲ではないでしょうか。
そして、そういう夢を表明してもらってこそ、要望に応じた指導や支援が可能になるというもの。ですから、夢を「孤独な作業」と考えず、「チームプレイ」だと捉え、積極的に発信すべきです。
社会人になって転職する時は、全て職務経歴、つまり「実績」や「信用」で語らないといけないので、その頃になって「夢を語りたい」と思っても、新卒のように単純にはいきません。
将来語るべき実績は、まさに今の自分が「最初の仕事」をどう考えているか、によって決まるのです。その意味では、今の決断で、この5年くらいの将来は全て決まってしまう、ということです。
そう考えず、「今だけ」、「とりあえず内定」と思って夢を出し惜しみし、小利口な要領だけで受かった人が、応援も理解もされず、寂しく退職して、語るべき実績を持たないフリーターになっているのです。
夢の発信は、内定のためだけに必要なのではなく、むしろ、その先の皆さんの活躍にこそ、大切なこと。
「言ってできなかったらどうしよう?」などは愚問で、「言ってやらなかったらどうしよう?」と考えるべきです。自分がやれば、あとは周囲が応援してくれるし、周囲が応援してくれれば、不思議なくらいの力が出ます。
未来の自分と約束し、それを必ず達成するのだと言い聞かせ、「やってきたこと」に感謝しつつ、「これからやれること」を描いて自分を鼓舞していきましょう。