■「内定への一言」バックナンバー編

「本物の夢なら、現実を知るほど育つ」



おはようございます。昨日は第③期営業塾の最終回で、今までにないほど参加者の皆さん同士の仲が良く、見ていて同窓会のような雰囲気を感じるほどでした。

遠方から、また、忙しい予定の合間を縫ってご参加いただき、本当にありがとうございました。皆様の真剣な視線と熱意のおかげ様で、悔いなく全6回を終えることができました。

今日から「トップ営業マン」への道を一歩ずつ歩み、将来は全員で各社、各業種のトップ営業マンとして堂々と、楽しく再会するために頑張っていきましょう。



さらに、今日は第④期韓国語塾の第1回「容赦なくきびしすぎるミニテスト」でした。景品である『ベローチェのコーヒーゼリー』を巡る熾烈(?)な争いの結果、西南大1年のF山君と2年のO村さんが同点で1位に。

F山君は、これから数日間、「博多」と「チキンバーガー」に特別な感情を抱いて過ごすのかもしれません…。

ちなみに、他のみんなの「悔しぃ~!」という声に熱意を感じ、小島先生は全員にもれなく「ミニドーナツ」をごちそうすることになったのでした。

う~ん、最近はますます、僕って案外先生が適職かもな、と思ってしまいます。次のテスト、栄冠は誰の手に?女子大のF津さん、日記の継続で次はぶっちぎりトップを狙いましょうね。



それにしても、もう4年近く毎週学生さんと勉強していると、最近の学生さんは本当に向上心が強く、やる気満々だと感じずにはいられません。

そのやる気を感じるのは、集まる時間の早さや実家の距離からも感じるのですが、とりわけ思いを強くするのが「現実の見方」です。

就活が始まると、「やりたいこと」なるものの有無がまるで資格証明書か免罪符のような機能を持ち、それがある人は「いいね」、ない人は「仕方ないね」のような雰囲気が、どこからともなく出てきます。



しかし、やりたいことの有無がそれほどまで切迫感や安心感の根拠となるのは、狭い世代同士で見詰め合っているからでもあるでしょう。均質化した人間関係では、ちょっとした差が気になって仕方がないこともあるものです。

そのような時ほど視界を広く、視野を大きく保つため、壮大な伝記や人生論などを読んでみるのもいいと思います。

そういう本であれば、福田恒存さんの『私の幸福論』(ちくま文庫)などは、特におすすめですよ。僕は本当に大切な友人にしか紹介しない本ですが、あの中の「青春について」は、現在書店に溢れているどのような就活本、人生論よりも高貴で美しく、優しい文章だと思っています。

恋愛や異性との付き合い方、家族との関係、仕事の考え方、外見と内面の関係などについてお悩み中の方がおられたら、ぜひ読んでみるといいでしょう。

10年ほど前に亡くなられて以来、著書が相次いで売り切れ、絶版になっている福田恒存さんですが、『私の幸福論』は若者や女性向けに平易な文体で書かれた普及版なので、新刊で500円程度で見つけることができます。

これから就活を迎える方々や、社会に出る方々は、ぜひ読まれるとよい名作です。ただし、一つ言っておきたいのは、他の人生論やポップスの歌詞などが浅はかで楽しくなくなる可能性がある、ということです。それほど美しく気高い、内容と外面が見事に両立した名文です。

あまりに美しく勇気が湧いてきて、心と視野が同時に広がるような気分を味わえる名作なので、内容については触れませんが、その中でただ一つだけ名句を紹介しておきましょう。

福田さんは「青春」について、「信頼を失わぬ力だとはいえないでしょうか」と書いています。その前後の人間心理描写や体験談の紹介の仕方が本当に簡素、かつ絶妙で、それはぜひ本文で味わって下さいね。

「もう誰も信じられない」、「もう嫌だ」という気持ちは誰にでも何度か起こります。そうして世の中や現実が嫌になり、「青春」というものを取り違えた人々は、どのような心理になっていくのか…。

シェークスピア研究の第一人者だけにその心理観察は透徹しており、僕はこのエッセイの観察の鋭さは『文化なき文化國家』の中の「世代の断絶について」や「弱者天國」並みにすごいと思っています。

若者に対する深い愛情から導く「本当の青春」の見方は、就活前に絶対に知っておく価値があります。

今、どうしようもなく希望がなくて、どんなこともどうでもいいような気持ちで、何もしたくない。それでも未来に対して希望が湧く本があるなら、1冊だけなら読んでもいい…。

そういう自棄的な気持ちになっている人でさえ、きっと「そういうことなのか!」と、読む前までの自分の気持ちなんかすっかり忘れて、ふつふつと意欲が湧いてくるでしょう。

人生や将来、あるいは就活に対して希望を失っておられる学生さんが、本メルマガの読者の中にもおられるかもしれません。

なぜ失い、なぜ信じられなくなったのでしょうか。

それはひとえに、「甘やかすための情報」、「商業言葉」を信頼して裏切られたから、とはいえないでしょうか。世に、若者の歓心を買いたがる大人はたくさんいます。企業などは特にその傾向が強いものです。

しかし僕は、若者に対する言葉のやり取りは、「その結果がどうなるか」で判断すべきであって、たとえ見かけや初対面の姿が良かろうと、後になって自暴自棄や希望喪失を招くなら、そういう言葉は毒にも等しいと思っています。


だからFUNでも、本メルマガでも、僕は最初はあまりいい顔をされません。講義でも最初は、「この兄ちゃん、何を言ってるんだ?」というような顔をされることもあります。

しかし、僕は皆さんの「今」と付き合う気持ちはさらさらなく、ましてや過去に同情する気持ちもありません。今を大切だと思う気持ちも、過去の努力を評価する気持ちも、全ては「可能性と付き合う」という姿勢に込めています。

だからこそ、自分で頑張ってみた時や、就活を終えてみた時になって、「いいことを教えてもらってありがとうございます」と言われるような真剣な接し方が必要だと信じているのです。

最初はよく思われなくても、お互いが本気になった時に尊重しあえ、本当の意味で「忘年の交わり」となれるような信頼関係を若い皆さんとの間に地道に作っていきたいと思っているからこそ、こうしてサークルのお手伝いを続けているのです。

「忘年」という言葉は、今では「一年の出来事を忘れて飲み明かす」という、本来の意味とはかけ離れた宴会用語に堕落してしまいましたが、本来は「お互いの年齢を忘れ、相互に尊敬と愛情を分かち合う関係」を「忘年の交わり」と呼びました。

『私の幸福論』を読んだのは僕が今の大月さんの年齢くらいの時だったと思いますが、僕はその中に、本当の大人の厳しさと優しさが両立した「忘年のまじわり」を感じました。

本書や『論語物語』(下村湖人/講談社学術文庫)、『後世への最大遺物』(内村鑑三/岩波文庫)、『美に生きる』(林武/講談社現代新書)、『平生の心がけ』(小泉信三/講談社学術文庫)などの優れた人生論に共通しているのは、一体どういう真理なのでしょうか。

それは、一言で言って「本物の夢なら、現実を知るほど育つ」という事実を信じさせてくれる大らかさ、強さ、厳しさ、優しさに満ち溢れている、ということです。

読者や若者を決して甘やかさず、癒しもしないのに、深い人間性への信頼を基調とし、本来あるべき自分の姿をありありと甦らせてくれるだけの迫力と愛情に満ち溢れている、ということです。

若者はよく、「理想と現実」という対比的な思考を使います。理想というものは、現実を知るほど実現が難しくなるもので、また、その意欲も沮喪していくものだ、と考えている人も多くいるものです。

誰が言い始めたか分かりませんが、これほど間違った人生観もないでしょう。流行作家がそう言っていようが、誰それの歌手がそう歌っていようが、それは絶対に間違っています。

皆さんの中の多くの人は、こういう問題提起を受ける方が、逆におかしいと思う人もいるかもしれません。その「おかしい」という疑いこそ、自らが住んでいる世界の狭さや、心の狭隘さを示しているとはいえないでしょうか。


別に個々の人生観にケチを付けようという意味ではありません。僕が本当にケチを付けたいほど間違っていると思っていて、このままじゃ絶対に成功しないと断言できるのは「学生の経済観念」だけです。

「現実への積極的対処」以外に理想を実現させる手段がないとすれば、この両者は「補完」か「相乗効果」を与え合う関係になければならず、どう間違っても「対立要因」にはなりえないはずなのです。

少なくとも、対立、分裂といった相容れぬ尺度によって眺める限りは、理想か現実のどちらかを誤って認識していると言うほかありません。


「本物の夢」は、現実を知れば知るほど、なお一層達成したくなるものであり、隠れていた能力や資質を呼び覚ますものです。

吉田松陰も「挫折でくじける志など、本当の志ではない」と皆さんと同じ年齢の頃に言い切っていますが、やはりそれが真実だと思います。

夢とは「未来の気持ち」で今を生きる、その裏付けとなる精神基盤でしょう。どのような現実の不足、自分の欠落すらも「だから頑張るのだ」と思わせてくれるような自分の深い部分での推進力でしょう。


要するに、自分と環境の相互に「信頼を失わぬ力」です。

何を見聞きしても、どんなことを味わっても、だからこそ残り、強まる信頼と希望があるからこそ、夢と自分が同時に育っていくわけなんですね。

では、どうやってその心構えを育て、どうやってそのような信頼を持ったらいいのか。そういう深い所で同意できる希望、つまり今どきの言葉で言う「やりたいこと」は、どう描けばいいのか。


本当に知りたい方、知ってもいいと思う方は、ぜひ『私の幸福論』を読んでみて下さい。今日の夜から優しく大らかな気持ちになれるでしょう。

そして同時に、就活や仕事に対しても、優しく謙虚な気持ちをもって受け止められるようになるでしょう。

皆さんの疑いが信頼に、不安が希望に、恐怖が期待に、利己心が利他心に変わりますように。いや、きっと変わるでしょう。