■「内定へ
の一言」バックナンバー編

「人の苦労なんていくら聞かされても成長しない。自分で苦労しろ」

(瀬戸雄三)




昨日の『就活コース07』は、西南大の部屋が取れずに赤坂ベローチェで実施しました。


僕は5分くらい話しただけで、あとは学生さんの話を聞いていました。毎年この時期になると、たった一人で福岡女子大学で講演した2003年の10月30日を思い出します。

「FUNって何?」、「それってサークル?」、「20代の社長さん?」とか言われながら、様子見に見学に来た学生さん14人に「仕事の見方と考え方」を話すと…。

サークルの説明は一言もしなかったのに、その場で「全員入部」。

そして半年後、みんなが志望業界に内定しました。

「学生の就職って、社会人と比べてなんてラクなんだ…」と感じた初年度の就活サポートでは、謝礼の「たけのこの里」が冷蔵庫に23個集まり、感謝しながら少しずつ食べたのを懐かしく思い出します。


それが、今では当時の3年生だった大月舞さんが立派に成長して学生を応援し、また、内定をもらった4年生が3年生の時以上の速さ、熱さ、深さで後輩を応援し、僕はもう、ほとんどやることはありません。

ただ、「慢心の除去と軌道修正」を除いては。


当時も今も、学生さんを見て僕が驚くこと、あるいは僕でなくても採用側の経営者であれば僕と同じように驚くであろうことを、今日は少し書いてみます。

僕が最初にビックリしたのは、学生は「書類がうまくかけて面接が上手にできれば、内定はもらえる」と思い込み、「アピールする書き方」や「受かる面接法」といった表面的なことばかり聞いてくる、その浅ましさでした。

「一体何を考えているんだ?」と思っても誰にも相談できず、一人で学生の就職心理に思いをめぐらせる日々が続きました。


だって、「やり方が分かれば受かる」ですよ。そんなバカなことが起こるはずがありません。

たとえば、ここに「英語が得意」と自称する人がいるとします。発音はネイティブに近く、単語もよく知っていて、文法上の間違いもほとんどない。確かに「英語を上手に話す」という点では申し分ありません。

しかし、惜しむらくは…「話が全然面白くない」。聞けば聞くほど退屈で、そのくだらなさに思わず何度も時計を眺めてしまうほどのワンパターンぶり。それでも「I can speak English」とか言うのですから、言葉を失います…。

こんなのは、たとえ発音がキレイでも、とても「上手」とは言えないでしょう。

「英語を話す」なんて意味がありません。「英語で話す」が大事なのです。

PCに関しても同じで、「ワードは使えます」、「エクセルを習っています」とは一応言いますが、「ワードで何が作れる?」、「エクセルで何ができる?」と聞いてみたら、「それは…」との答え。


これじゃ、何も使い物にならないじゃありませんか。ワード、エクセルなんて失業したおじさんでも使えます。

では、なぜ使えるのに失業したのか?

それは、「PCで仕事ができない」からにほかなりません。言われたことはやれるけど、自分で何かを企画、提案することはできない…。こんな能力には意味がありません。


僕が学生さんと会って最初に感じたのも、このような気持ちでした。

ただ、「手続」だけやれば受かると思っている甘さを僕は江藤淳さんの著書にある言葉をもじって「就活ごっこ」と名付け、そこに相手を介在させ、初歩的な会計センスをまじえて伝える練習に没頭しました。

「就活ごっこ」というのは、相手が想定されておらず、どこに行っても同じような内容を一方的に話し、小手先のテクニックを改良しながら友達と一喜一憂し、「働くため」ではなく「内定するため」に行う「ままごと」のことです。


なんで、僕と違って大学まで卒業したのに、こうも大卒の人間は使い物にならない人間が多すぎるのかと思っていたのですが、就職活動ジャーナリズムを観察して、その理由がよく分かりました。

それは、「人の話を聞いただけ」で自分もできると勘違いして安心するからです。

地道さや素朴さは嫌われ、華やかさや要領の良さが幅を聞かせ、まるで受験のように「その場限り」の努力に熱中したフリを練習する学生を見て、「こりゃ、かなり気合い入れんとなあ」と思ったものです。



そこから、最年少で6ヶ月連続でトップ営業マンを実現した時の業界・企業分析手法や、初対面の人から続々契約を取るセールストーク、人を動かすスピーチ術などを教え、それ以来FUNでは毎年、「九州初」、「大学初」、「県で一人」、「大学で一人」、「学部で一人」という内定が続出しています。

まあ、それは楽勝です。

僕はベンチャー企業の法人営業で2,000社を超える社長、専務、常務と接し、630社の商品、サービス、技術、特許、ビジネスモデルを記者として文章化してきたのですから、人事部長と話す面接などは、「スーパーマリオ」の「クリボー」のようなものでした。

今年の就活コースでも、内定などというレベルの低い目標は一切視界に入れず、「期待の新卒即戦力」一本を目指して、「内定するまでも、内定してからも人生でモノを言うスキル」の訓練に励むのみです。


ですから、僕に「どうやったら面接受かりますか?」、「どうやったらエントリーシートは通過しますか?」などと聞いてもムダですよ。

だって、僕は面接をする前に「ぜひウチに来てくれ!」としか言われたことがないのですから。受ける前に受かっていたので、どうやったら受かるかは知りません。

ごめんなさい。


ですが、社長が頭を下げて「ぜひウチに!」と言ってくれるような働き方なら知っています。相手が欲しくなるようなコミュニケーションテクニック、心を動かし担当者を引き付ける交渉術も知っています。

また、そういう働き方が可能になる仕事の捉え方、会社の見方、ビジネスの考え方、会計センスなら人より早く社会に出た分、若干多めに知っています。

僕が毎年FUNで「1回100円」くらいで教えているのは、そういう基本的な考え方ばかりです。だから今年も、またまた「○○初」、「○○で一人」が続出することでしょう。そんなのは既に分かりきったことです。


学生の皆さんには、ネットや説明会で多くの情報を収集されるのも結構ですが、人の話を聞いて分かった気になるより、たった一つの苦労でも引き受けて、実体験から不動の信念を育ててほしいと願っています。

アサヒビールを再建させた瀬戸雄三さんは、「人の苦労なんていくら聞かされても成長しない。自分で苦労しろ」と言っていますが、まさにその通りですね。

受け売りでは受かりません。受かっても使えません。皆さんが今目指している内定は、「大好きな会社に入って、信頼できる仲間や尊敬できる上司との関係の中で自分の夢に向かって進むような仕事ができる内定」だと思います。


ですから、その目標を決して下げないことです。「とりあえず内定さえもらえればいいや」などと下げないことです。

紙を相手に自分一人で進めればいい受験とは違い、就活には「相手」がいます。「そんなのは分かってる」と言われるかもしれませんが、実際に分かっているような行動ができる学生は1割くらいしかいません。

例えば、皆さんはマクドナルドを「ハンバーガーの会社」、トヨタを「車のメーカー」、エプソンを「プリンタ製造会社」と思っておられるかもしれませんが、これは「相手が見えない人の答え」です。要するに、「落ちる人の考え方」です。


今日は一つ、受かる考え方をお知らせしておきます。

それは、「能力に合わせて期限を決めるな。期限に合わせて能力を引き出せ」ということです。成功したかったら、先に目標を決めてしまうことです。

「決まらない」と言われる学生さんも多いですが、当たり前です。目標の方が自動的に成長して学生に合わせてくれるなんてことはありません。

目標には「決める」しかないのです。「決まる」などという対象に依存した自動詞型の発想は、次々と失敗と後悔を呼び込むだけです。


ですから、今、何かを決めましょう。そして、決めたことに対してまずは全力を振り絞ってみましょう。すると、今まで気付かなかった能力が身についていることに気が付くはずです。

新たな能力が増えると、夢もその分大きく描けるようになりますよ。

「決まったら動く」ではなく、「動いたら決まる」です。

「やる気になったらやる」ではなく「やったらやる気になる」です。

「挑戦が行動力」ではなく「達成が行動力」です。

まずはこれらの「独りよがりの勘違い」をなくし、決めてどんどん動いてみましょう。今お持ちの「不安」が、実は全く気にする必要もないほど小さいものだということが、よく分かるでしょう。

そして、そういう「同意」のもとに取られた行動が生み出した「苦労」こそ、あなたを他の学生と違って印象付ける、何よりの魅力になるものです。

面接のテクニックや書類の書き方などは、それから考えればいいことですよ。話が下手、文章が下手なことよりも、「話題がない」、「話題が面白くない」、「話題に同意していない」ことこそ、今解決すべき問題です。