■「内定への一言」バックナンバー編
「商品を売るな。商品で売れ」
火曜の夜から珍しく体調を崩し、なんと前号から4日も空いてしまいました。この間、慶應義塾大学、九州工業大学、九州大学、福岡大学の皆さんから配信申込があったのに、遅くなってすみませんでした。
本当なら、今日は今から『近現代史勉強会』第⑦回のはずなのですが、無理を言ってお休みをいただきました。楽しみにしていた皆さん、すみません。
また、「就活アンケート」も締切間際に数人の方から回答をいただき、ありがとうございます。数日中に編集し、プレゼントと回答結果をお送りするので、今しばらくお待ち下さい。
この就活アンケート、ざっと見て面白かったのが、ほとんどの3年生が「自分は、周囲と比べて遅れていると思う」と答えていたことでした。
おそらくその学生さんを見れば「進んでいる」と思いそうな人まで、「遅れている」…。不思議です。
また、FUNの学生とそれ以外の学生さんを比べて顕著なのは、FUNのみんなは「イメージの良い業界」によく「金融」を挙げているのに対し、それ以外の方は「イメージの悪い業界」として保険や金融を挙げていたこと。
なぜでしょう。お金くんは何も悪いことをしていないのに。なんでお金が関わる業界のイメージが、こんなに偏って悪くなっているんでしょうか。
その答えは、マネー塾や近現代史勉強会に来た人なら、分かりすぎるくらいお分かりですよね。
「わが日本こそ、ソ連や共産中国がお手本にすべき社会主義国家です」とは、リクルート創業者・江副浩正さんの痛烈な皮肉ですが、この言葉に全てが集約されています。
他には、「自己分析の仕方が分からない」、「面接で何を話していいか分からない」、「業界研究の仕方が分からない」という悩みもありました。
毎年のことですが、僕はこの手の悩みに対しては「相手にしない」という対策を取ります。
「やり方」や「話す内容」が悩みというのは、付き合ったってどうしようもない問題だからです。
例えば、「お見合い」で考えるとして、「自分の好みが分からない」、「お見合いで何を話していいか分からない」、「男の研究方法が分からない」などというでしょうか。
仮にそう言う人がいたとして、先に一人で考えて「好み」や「向き不向き」が分かったら、それで万事解決でしょうか。
「何を話すべきか」が分かったら、幸せな出会いにつながるのでしょうか。見極め方が分かったからといって、どれほどの期間、役に立つのでしょうか。
だいたい、こういう表面的な「やり方」を悩みと言うこと自体おかしいので、僕は毎年、「そんな就活ごっこはさっさとやめてしまえ」とか言って、学生さんから反発を食らっています。
そういうのは、「ごっこ」です。「こう言えば、印象がいいらしい」、「こう書けば評価が高まるらしい」というのは、相手不在もいいところです。小手先だけで乗り越えられると思って取り組んでいるうちは、全て「ごっこ」です。
逆に考えてみればいいでしょう。たとえば女子大生の皆さんに、あるイケメン君が近付いてきたとします。それは、さも自然なそぶりでした。言葉巧みに話してあなたを口説き、あなたは「この人、いいかも」と思ったとします。
しかし、そのイケメン君は、実はあなたに会う前、「女心はこう手玉に取れ」とか、「こう言えば女はイチコロ」、「相手が迷ったらこう言って押し切れ」などというマニュアル本を読んでいたとしましょう。
あなたが「私でよければ」と言った頃には、相手は心の中で「ははは、こいつ馬鹿やん、マジ騙されてやがる」、「誰がおまえの第一印象がいいとか言うかって」、「ナンパって楽勝やん」とか思っているかもしれません。
それで交際が始まったとしても、まず相手はあなたのことは相手にしないでしょう。ということで、待てども待てども連絡なし…。
そりゃ当然です。相手は駆け引きのスリルだけ求めていて、別に付き合わなくても良かったからです。
それが分かったら、皆さんはどうですか?
「それでもあたし、面食いだからOK」と考える人は、「お持ち帰り」されるでしょう。そういう女性を昔、米兵は「イエローキャブ(黄色のタクシー=黄色人種の尻軽女)」と呼びました。誰でも乗せてくれるからです。
しかし、大半の常識的な女性なら、「許せん!」と頭に来るはずです。なぜなら、それは「あなただから」ではなく「女だから」という理由に基づいて取られた行動だった、と分かったからです。
こうやって人間の尊厳や、あるいは個性を無視されれば、本気になっただけ誰でも怒ります。普通の感覚を持つ人間にとっては、「はめられた」、「試された」というのは我慢ならないことです。
こう言えば、どの学生さんも「人が人と向き合うこと」における基本を振り返って、「そうだそうだ」という顔をしてくれます。
しかし、それがこと就活になると、大半の学生さんは、会社と会って相性を確かめる前に、「この会社だから」ではなく、ただ、「会社だから」という漠然とした理由で、「良さそうなこと」を言おうと画策しているのではないでしょうか。
そして、自分自身の人格や実力を磨くことよりも、そういう小手先の「マナー」や「言葉」を準備することが、「就活対策」と勘違いしているのではないでしょうか。だから、「就活ごっこなんてさっさとやめてしまえ」と言うのです。
こういう例え話を使うと、「あたしはそんなことはない!」と怒る学生さんもいますが、そういう時は、「じゃあ君たちは、練習で受けるとか言わんだろうな」と言えば、学生さんは瞬時に凍りつきます。
それは、この忌み嫌うべき「遊び人男」と同種の行為を、実は自分も企業に対してやろうとしていたという点で、全く同レベルの下劣な人間だと自覚したからです。
実際、「練習」とかいって心にもない会社を受け、行く気もないのに行きたいそぶりを見せたりする学生は、知らず知らずのうちにそれが癖になって、本当に志望する会社で苦戦するものです。
ですから、大衆と同じ悩みを持たないことが大切です。愚か者はいつも、「みんながやっていること」が正しいと思うものです。しかし正しいのは、「仕事を楽しんで誇りを持っている人」の考え方です。
「就活なんて嫌だ」、「できるだけ学生でいたい」と思っている人は、自己分析や業界研究、筆記対策に至るまで、就活と関わる全てが「悩み」の対象になるでしょう。そういう人間とは情報交換をしないことです。
そういう人間は、口先では自己分析とか業界研究と言いますが、そもそも就活自体が悩みなのです。「まだ学生でいたい」とか言う点でも分かるように、学生生活すら失敗しているのです。
就活そのものが悩みであるからには、それから派生する全ての問題は悩みになって当然です。
そんな人と話すと、悩まなくていい悩みが伝染し、あなたの貴重な時間と労力をどうでもいいことに浪費させてしまいます。
それに、そういう人間は人の足を引っ張ることにだけ生きがいを感じているので、あなたを邪魔することさえ厭いません。
面接や書類選考で「落ちてばかり」の学生と、「受かってばかり」の学生が、自分の話題をどう伝えるか、その顕著な違いを記しておきましょう。
これは、既に『FUN営業塾』で扱ったとおりです。トップ営業マンは「商品で」売るのに対し、ダメ営業マンは「商品を」売るもの。凡庸な教師は「教科書を」教えるのに対し、優れた教師は「教科書で」教えるもの。
「商品で」何を売るのかと言えば、それは営業マン自身であったり、あるいはお客様の可能性や展望です。「教科書で」何を教えるのかといえば、歴史のダイナミズムや日本に生まれた有り難さです。
優秀な人間にとって、全ての話題は自分と相手を関連付けるための手段に過ぎないのです。面接にも、これと全く同じことが当てはまります。
例えば、「商品を売る」型の面接をする学生は、もちろん「商品」に価値があると思っているわけですから、資格やバイト、サークル、ゼミ、旅行など、ありとあらゆる話題を装飾して売り込みます。
「学生時代に熱中したことは?」と聞かれれば、「はい、TOEICで必死に勉強して850点を取りました!」とか笑顔で答えます。「で、その動機は?」と聞かれれば、「教授から21世紀はグローバル化の時代だと言われたからです!」と、さらにさわやかな笑顔で答えます。
「TOEICという商品」に価値があると考えた学生は、それが850点なら相対的に高い方だと考え、「だから受かる」と思って笑顔で会場を出ますが、その後すぐに、履歴書は「シュレッダー行き」です。
ビリビリ…ポイ。はい、おしまい。
後日「不採用通知」を受け取ったこの学生は、「やっぱりTOEICなんてありふれているんだ。よし、じゃあバイトにしよう」などと知恵を出し、またもや同じように落ちます。
「何を売るか」を考えている人は、学生であれ社会人であれ、このように恐ろしく無能な改善策を繰り返すものです。
なぜ、こういう無意味な対策を続けて恥じず、気付かないかと言えば、それはもちろん、「話題」に価値があると思っているからです。話題を伝え、それが珍しくすごいものであれば、受かると勘違いしているのです。
まさに、「就活ごっこ、ここに極まれり」といった完成度です。
一方、受かりまくる学生はどうでしょうか。
受かりまくる学生は、全ての話題を「相手の興味との関連付け」の道具として、丁寧に語ります。
例えば、ありふれた「居酒屋のバイト」であれ、それをどう選んだか、挫折した時、どう改善したか、うまくいかない時どう工夫したか、叱られた時、どう反省したか、そして、始めた時の目標をどう達成し、それから何を学び、自分をどう成長させたか…を語ります。
話題はバイトであれ、ゼミ、サークル、旅行であれ、何でもいいのです。価値は「やったこと」ではなく、「動機」、「人生における位置付け方」、「工夫」、「達成から得た成長」、「挫折と反省の仕方」にあるからです。
もっと言えば、「TOEICが500点」でもいいのです。なぜ英語が好きか、英語を自分の人生にどう位置付けたか、継続と失敗によって何を学んだか、地道に続けて点数を上げる上で、どう工夫したか…。
そこには、その人の人格や個性が現れています。彼は英語を語っているようで、実は「英語で自分を語る」というトップ営業マンと同じ姿勢を採っているわけです。
FUNで毎年、平々凡々たる話題しかない普通の学生さんが、東京の有名大学の人たちを押しのけて「九州で一人」、「福岡で一人」、「学部で一人」、「大学で一人」という実績を出しているのは、ひとえにこの「関連付け」を徹底的に学ぶからでしょう。
もちろん、学生さんたちが素直なことが、一番の武器であることは言うまでもありません。
受かろうと思ったら、商品を売ってはいけません。商品で売らないといけません。一見似通って見える話題も、位置付け方や動機、工夫で全く違う個性を伝達する道具になるものです。
愚か者は、学生であれ社会人であれ、点数や期間といった計量可能な要素が「個性」だと思って、珍しさや高さにこだわりますが、それは頭の中にマルクス直伝の「労働価値説」が強固にインストールされているためで、仕方ないことです。
嘆くべきは「話題がないこと」や、「取り立てて誇れる材料がないこと」ではありません。こういう大衆型の悩みは、即刻捨て去ることですね。
本当に憂うべきことは、「相手の関心と関連付けられていないこと」です。企業の悩みや夢、その仕事に求められる資質、その会社の可能性をしっかりと想像し、そこにあなたの全ての話題を関連づけましょう。
「これって、関係あるんですか?」とか、「別にカンケーなさそうやし…」と最初から言ってはいけません。関係は、あると思う人にだけあるのです。すぐに「ない」と諦める人間には、見えてきません。
誰もが「ない」と言いそうな所に「関係」を見抜き、「これは、こう関係がある」と関連付けられる眼力こそ、「想像力」という貴重な能力です。
それが正解であるかどうかなど、どうでもいいことです。学生が社会人と知識で勝負しようとしても、赤ちゃんが大人に挑むようなもので無意味です。
大事なのは、「会社の夢」と「自分の夢」を少しでも近づけ、相乗効果をもたらそうと、苦心しながらも努力して関わりを見出そうとするその思いやりです。
そのような若者の情熱を見ると、我々経営者は、「なるほど、このようなセンスは鍛えればどんどん伸びそうだ」と高く評価するのです。
そういう思考習慣や配慮こそ、後に有為の人材として活躍する基盤になるのです。TOEICで何点だろうが、相手の興味を考えない人間などは、最初から「0点」なのと同じです。
エジソンやビル・ゲイツなど、各分野の偉大な創業者を見て下さい。
誰もが最初は気にもかけず、「関係ない」と決め付けて疑わなかったことを結びつけたからこそ、あのような成功がもたらされたのでしょう。
ということで、受かりたければ①大衆を無視すること、②モノ自体より動機や工夫を語ること、③相手の関心に立脚して話題を届けること、④全てを関連付ける練習をすること、です。
どうせ「ごっこ」をやるなら、「就活ごっこ」よりも、「関連づけごっこ」をやった方が何倍もお得ですよ。
お友達と一緒に、自分の持っている能力や経験は、志望業界の何とどのように関係があるのか、言い合ってみてはいかがでしょうか。
ということで、今日は「商品を売るな、商品で売れ」という、トップ営業マンの基本中の基本をご説明しました。