■「内定への一言」バックナンバー編
「時間を引き延ばすほど、悪いことが起こりやすくなる」
現在、西南大4年・M地君の主宰で、第③期『FUNマネー塾』をやっています。
FUNで最も人気の本講座では、前半の3回を「支出・負債編」と位置付け、出ていくお金を減らし、貯金を増やすテクニックを教えているのですが、毎回毎回、学生さんの感想が集中するポイントがあります。
それは、「延期は最も深いネガティブ思考である」ということ。これがよもや「貧乏」を招く発想であるとは、多くの学生さんは考えないらしく、終了後のグループワークでは、時期・学年を問わずこの話題に議論が集中します。
・大学でレポートの課題が出た
・就活シーズンが迫ってきた
・書類選考や筆記対策が迫ってきた
など、皆さんもこのような課題といかにうまく折り合いを付けるか、日々お考えだと思いますが、「予定」や「課題」との向き合い方には、二つのパターンがあります。
言うまでもなく、「先取り」と「引き延ばし」の二つです。
大半の学生さんは、今、実社会で「貧乏」になっている多くの社会人と同種の思考パターンである、「延ばした方がいい」という考え方を選んで、日々実行している方が多いのではないでしょうか。
なぜそう考えるかと言えば、
①ただ単に、「今はやりたくない」、「今やらなくていい」と思うから。
②今やるより、直前になってやった方が集中できるから。
③今はまだ、それをやる時間的、能力的余裕がないから。
要するに、「今やるより、将来やった方が、良い結果が期待できる」と考えている、ということですね。
この思考法が仮に恋愛などに適用されれば、「将来はきっと運命の人にめぐり合える」という発想になります。
住宅購入に適用されれば、「もう少し待った方が地価や物件価格が下がって良い家が買える」などとなるでしょう。
「どんなことでも、今よりは将来やった方が、幸せになる確率は高いはず」。
…未来に希望のバトンを投げているようで、いかにも美しい「プラス思考」に思えます。
「大丈夫。何とかなるさ。時には気分転換も必要だよ」。
…青年の覇気と時間に対する大らかさを示しているようで、いかにも「積極果敢」に思えます。
しかし、愚者の常として、「みんながやっていることが正しい」と考える傾向があります。この誤解から、全ての不幸と失敗、後悔と愚痴のデフレスパイラルが始まります。
「今ではない未来に取り組んだほうが、今やるより良い成果が期待できる」。
この考え方は、さも合理的で理屈に適っているように思えます。もちろん、企業経営や軍事などでは、明らかに現在の力が不足しすぎている場合は、こういう考え方によらないと大変な損失を蒙ることもあります。
しかし、こと人生になると、この考え方は敗者か愚者の精神に巣食う習慣でしかなく、早急に改めなければなりません。
「未来の方が良いことが起こる」とは、とりもなおさず、「今はそれをやる力が不足している」と考えた反動に過ぎません。
それは確かに、ある程度は「謙虚さ」による認識結果であるかもしれませんが、まず何より、「不足面に目を向ける」という思考習慣の産物です。
今ある「長所」、つまり「できる根拠」よりも、「短所」、つまり「できない理由」の方を重点的に評価したからこそ、「今できるはず」だった作業は、今日以外の未来に先送りされるわけです。
ですから、「延期」とはその行為自体、「ネガティブ思考」に支配されないと起こらない行動です。
そして、この習慣が頭脳に根付いてしまうと、何でもないことまで次々と「できない理由」としてリストアップし、一瞬にして予定を先送りしてしまう「超高速・言い訳検索マシーン」が頭脳にインストールされることになります。
少なくとも、「今日やっても間に合う理由」などは、何一つ考えていません。要するに、「今の自分が持っている知識や能力」を無視しているということ。「あるのに見ない。そして見えなくなる」。これ以上の損があるでしょうか。
就活で考えてみましょう。ある3年生の学生さんが、友達から「ねえ、エントリーとか、もうしてる?」と聞かれたとします。
友達 ねえ、エントリーとか、もうしてる?
学生 いや、まだしてないけど…。
友達 へえ。あたしはリクナビには一応登録したけどね。
学生 ふーん。で、エントリーってのは、もうやったの?
友達 とりあえず、名前知ってる会社に5社くらい。あんたはしないの?
学生 うん、友達からは時々エントリーしたとか聞くけど、あたしはもう少し会社を調べてからじゃないとできないかな、って思うから。
友達 てかさ、会社とか誰も知らないよ。エントリーしてから入手できる情報もあるし、その会社を受けないとしても、受けないための情報ってのも必要じゃない?
学生 そうかもしれないけど、何も知らない状態で情報収集を始めても、どう影響されるか分からないし、先輩も12月から始めたとか言ってたから、あたしはもうちょっとしてからでいいかな。
友達 ふーん。ま、確かにあたしら学生で分かることは限られてるけどね。あんたがそう思うなら、そうしたら。で、SPI対策とかは、もう始めたの?
学生 あ、そっちは、まだバイトとかで忙しいから、来月のシフトが決まってから、改めて考えようと思ってる。
友達 バイト「とか」って、他に何で忙しいの?
学生 えっと…レポートもあるし、サークルの作業とか色々あるし、最近体調崩すことも多いし、こういう状態で筆記対策とか集中できないから、あたしはバイトのシフト減らしてもらってから、落ち着いて取り組みたいな。
友達 てかさ、選考が始まったら「試験とは比べ物にならないくらい忙しい」って聞くよね。あんたが今そんなに忙しいなら、それこそSPIをやる練習になると思うけど。
学生 今やってもどうせあたしは数学が悪いのは分かってるし、やるならちゃんと復習とかやってから取り組みたいの。
友達 どこが悪いか分かるだけでもいいじゃん。で、志望業界とかは、もう決めたの?
学生 いや、まだ…。就活に関しては、まだ全てゼロかな。色々忙しい状態だと、あたし安心して考えられないタイプだから、業界とかは落ち着いてから考えるよ。
友達 ふーん。というより、あたしら就活生が、冬とかになって今よりヒマになるなんてことが、常識的に考えて、あるの?
学生 とにかくあたしは忙しいの。来月は今より時間的に楽になるから、来月また色々教えて。心配してくれてありがとう。
友達 心配ねぇ…。
さて、12月。
友達 あんた、合説行った?
学生 いや、まだ行ってないけど。
友達 あたしはこの前初めて行ったけど、どの学生もソワソワしてる感じだったよ。ていうか、大体、外で待たされるのはたまらんね。
学生 あたしは、志望業界が決まってから行きたいな。
友達 別に決まってなくても、探すために行ったっていいじゃない。
学生 けど、決めてないのに質問とかできないし、第一、変な情報に影響されて損するのは嫌だから。
友達 あたしは、自分だけで勝手に想像して、現場の情報がないまま一人相撲で損する方が嫌だけどね。合説行ったら、フツーに「おい、それくらいネットで調べとけよ!」って思うような質問してる学生も、けっこういるよ。
学生 例えばどんなの?
友達 「御社はメーカーですか?」とか、「資本金はいくらですか?」とか。文学部のあたしでも「やれやれ」と思ったけど、企業の人も学生が何も知らないのを分かってるから、すごく丁寧に答えてくれてたよ。
学生 あたしは、そういう質問よりは、ちゃんと自分で調べた質問をするために行きたいな。第一、人が多いの嫌いだし、気分が悪くなるの。
友達 あたしは一人でずっとパソコンの前にいた方が、よっぽど気分が悪くなるけどねぇ。確かに人は多いけど、これからの時期は、もっとすごいんじゃない?今のうちに調べておけば、ネットの情報収集ももっとしやすくなるよ。
学生 最近はサークルの忘年会の幹事の手伝いで色々忙しいから、それが終わってから合説に行くよ。色々教えてくれてありがとう。
友達 てかさぁ、忘年会が終わっていつ合説なんてやるのさ?
…とまぁ、秋から冬にかけてよくマックなどで聞く学生さんの会話を再現してみましたが、延期する人は、心に思い浮かんだあらゆる用事を「できない理由」に挙げて引き延ばすのが、よく分かるでしょう。
仮に生活の中に時間的余裕があったとしても、あるいは自分の中に既に取り組める能力的根拠があったとしても、それは「まだ完全じゃない」という理由で、選択されません。
こういう場合、本当に時間や能力が足りないかという問題よりも、「すぐに欠落部分に目を向けてしまう性格的傾向」の方がよっぽど深刻な病気で、まさに「完璧主義者に前進なし」の典型です。
この学生さんは、月や季節に応じて、その時期にふさわしい「もっともらしい言い訳」を、ヤフーより高速で瞬時にリストアップする能力を磨き続け、どんどん「人生の視力」を低下させていくのは明らかです。
そして少しずつ、「優れた能力があるのに、自分だけ見えない」、「それほどでもないのに、実際以上に大きく恐れる」という状態が強化されます。
ここまで来たら、本当は「やらない」だけのあらゆる些事が、強固な信念によって「やれない」と断定されていることでしょう。
最後は、世の200万人のフリーターと同じく、「こんなはずじゃなかった」とか「やっぱりまだ景気は回復していない」などと言う評論家になって、「失業式」を迎えるわけです。
延期主義者の頭脳は常に「不景気」なので、日本経済、アメリカ経済、世界経済が好景気であろうが、その恩恵は、このタイプの人たちにだけは、決して訪れないことになっています。
冷静に観察すれば「こんなはず」であり、「そうなるしかない」という思考習慣としか言いようがありません。
「運命の人」、「運命の会社」、「運命の仕事」…
憧れているうちは「甘美な理想」として、現実逃避を正当化させてくれた「未来予想図」も、迎えてみれば、世の多くの敗者が遭遇したのと同じ「貧乏神」の顔に過ぎませんでした。
その貧乏神とは、実は「自分」であるということを、延期主義者ほど、絶対に認めません。
僕は、皆さんより3~7歳ほど年上の「フリーター」や「転職希望社会人」の再就職相談をやっています。
その中で見る、「金なし、人脈なし、信用なし」のトリプル安を20代で達成し、見事「貧乏三冠王」の座を射止めた若者に共通していることは…
①何事も、冷静に状況や能力を考える前に、「即延期」する。
②「やらないだけ」なのに、「やれない理由」を考えるのが天才的に上手。
③頭はいいかもしれないが、「可能性と選択肢を潰す」という目的に全ての情報と知識を動員するという、壮大な本末転倒を起こしている。
という点です。こりゃもう、立派な病気というほかありません。なにせ、全ての厄介事と失敗、後悔を次々に呼び込む「長期負債運用」の根源となる性格ですから。
ということで、こういう「貧乏神の信者」にならないように、以下の3つを心掛け、即実践していきましょう。
①価値ある予定は、何をおいても、まず取り組んでみる。
⇒早く取り組んで失敗を味わえば、成功への誤差が認識できる。
②未熟であれ、「最高の成果」を期待してやってみる。
⇒自分がどこで手を抜きたがるか、どこが足りないかが分かる。
③「やる気になったらやる」ではなく、「やったらやる気になる」と考える。
⇒やる気なんて、待っていてもあっちから訪れることはないため。
世の中には、「いいや、まだまだ」と男の品定めに熱中し、「運命の人がきっと私を待っている」と思い続けているうちに、賞味期限が切れてしまった「元本割れ女」がたくさんいます。
あるいは、「もっと自分にあった会社があるはず」と考えて今の仕事に手を抜き、表面的な動機で転職を繰り返したばかりに、何の知識も能力も蓄積されず、新卒並みの安月給で苦しんでいる「ストップ安男」もたくさんいます。
「引き延ばしたら、いいことが起こる」とは、引き延ばす前の頭の中でのみ起こることで、実際に引き延ばして良いことが起こることなどまずなく、起こっていても、本人だけには見えないでしょう。
なにせ、「ネガティブ思考」なのですから。
部員の皆さん、および就活コースへの参加を希望されている皆さん。
強い習慣と意志力を磨けば、就活なんて楽勝です。簡単すぎて「これでいいの?」と思うくらい、楽勝です。それが本当であることを、今年も先に宣言して、実現してみせましょう。
僕は「受かり方」になど、全く興味がありません。それよりも、「通用する働き方」ができるよう、学生さんの物の見方や考え方を広げ、深めるお手伝いに徹するのみ。
今年も「県で一人」、「学校で一人」、「学部で一人」、「九州で一人」の四冠王を、ぜひ達成したいものですね。先取りでチャンスを引き寄せるスリルを、みんなで楽しみましょう。受かりすぎに備え、交通費だけは多めに貯金しておいて下さいね。