■「内定への一言」バックナンバー編

「お菓子がなくなったら、箱をひっくり返してみよう」




いきなりですが…。

そもそも、なぜ就活サポートの謝礼が「たけのこの里」なのか?

企業取材サークルFUNが発足して3年半、最もどうでもいいこの質問に答える日が、まさかこのような形でやってこようとは、予想外でした。



今日は午前中から天神で、FUNでは「金融勉強会」でおなじみのスターHD・Kさんにお会いしました。

参加者みんながいつも楽しみにしており、経済・商学部ではない学生さんからも「楽しい」、「役立つ」、「丁寧」、「優しい」と毎週評判の勉強会を主催して下さっているだけあって、一目お会いするなり、Kさんはその評判を裏書するような雰囲気をお持ちでした。

本メルマガにも、以前から何度か温かい感想をいただいており、その文面から感じた雰囲気がそのまま漂ってくるような話しぶりに、「みんな、良い方に教わっているものだ」と思った時間でした。


名刺交換を済ませると、Kさんの手元には、「ヨドバシカメラ」の袋が。

PC用品でも見に行かれたのかと思っていたら、「袋はヨドバシですが…」とそれを頂き、中身を見てみると、なんと「たけのこの里」と「カゴメトマトジュース」ではありませんか。

まさか、社会人の方にまでこのような贈り物を頂くとは…。


年齢から考えても、オフィス街でスーツを着た方から受け取っている袋の中身が、よもや「たけのこの里」とは、その時ドトールにいた大人の誰が想像しえたでしょうか。

「ありがたい。しかし申し訳ない。さらにいえば、ちょっと、ありえない」。

学生さんに人気の「ありえない」をすかさず連想してしまうほど、驚いた対面でした。(Kさん、本当にありがとうございます。一つはO月さんにあげました)


3年前の秋からFUNで新卒の就活サポートを引き受けて以来、僕は部費の中から顧問謝礼を月額600円しかもらっていませんが、中には僕のサポートの様子を親に話し、「あんた、しっかりお礼せんね!」と謝礼を持ってこようとした学生さんも数名ですが、いました。

僕はただ、サークル活動の一環として担当しただけで、現金を受け取るつもりでお手伝いしたわけでもなく、「社会人生活の準備もお金がかかるから、そっちの貯金に回したらいいよ」と受け取らなかったんですが、3年前に、「どうしても」という学生さんがいました。

それで困り果てた僕が、「そやね…だったら、お菓子でもいいですよ」と言うと、「フラン好きですか?」との質問が。


正直、僕のお菓子に関しての知識は子供以下で、ましてや売店の大半がお菓子に占拠されている福岡女子大学の学生さんを相手に、何の注文が出せるものでもありませんでした。僕が勝てるわけがありません。

そこで、「たけのこの里が好き」と言ってしまったのでした。今思えば、それがあの長く苦しい道の始まりでもありました。

確かにたけのこは僕のお気に入りです。それは自ら認めるところです。思い返せば10年前、苦難の海外勤務から帰国して最初に買った食べ物も、たけのこの里でした。


しかし、自分から買うようなことはありませんでした。僕は食や服には興味がなく、どちらかといえば音楽や本への投資が多いほうで、お菓子を1年間食べなくたって、別にどうってことはありません。

しかし、女子大生の口コミとは恐ろしいものです。僕は経済誌の記者として、細かな経営分析を記事にしたり、あるいは専門用語を駆使した特集を書いたりしていたものですから、新卒採用のエントリーシートを見て、「なんだ、この簡単すぎる内容は?」と面食らったほどでした。

添削して、「こりゃ、受かるだろうな」と思ったら、案の定受かりまくり。あまりに通過しすぎて、既に書類選考の段階で数社辞退しないといけない学生が続出しました。あの頃は人数が少なかったから、全員分をゆっくり添削できたからでしょう。


困ったのはその後です。学生さんは大体、作業が増えると先延ばしにして、夜中に一人でうなりながらエントリーシートを書く傾向があり、夜中の2時や、時には4時に、「添削お願いします!」というメールが来たりしました。

「おいおい、何時だと思ってるんだ」と思いつつも、そのメールの最後に「明日の朝、羽田に着いてすぐに選考です」とか書いてあると、「やれやれ…」と思いながら、何度も睡眠を中断して取り組んだものでした。

そんな中、またもや「ピピッ」とメールの音が。「今度は誰だ?」と思って見てみると…。



「きのこは嫌いなんですか?」とか、「たけのこの里の冬季限定バージョンがあったんですが、こちらでもよろしいですか?」と書いているではありませんか…。

「それくらいで夜中にメール送るな!」と思いつつ、かわいい女子大生が相手だけに、「限定バージョンでお願いします」とか返事を書いている自分に、「意外だ、オレはここまで甘かったのか…」と悔やんだほどでした。

かくして、初年度は内定やら選考通過やらで、実に30個近くの「たけのこの里」が届き、わが家は「箱ごと万引きしたのか?」と勘違いされかねないほど、部屋中にたけのこが溢れまくり、危うく糖尿病になるところでした。


ということで、2年目からは健康路線にシフトし、「トマトジュース」と言ったら、またもや恐ろしい量のトマトジュースが届けられ、冷蔵庫2つがいっぱいになるほどでした。

おそらく、あの時期のカゴメの株価は、FUNのおかげで1銭くらい上がったと思います。

もちろん「たけのこ伝説」も健在で、母親が立ち寄るたびに、「ちゃんとご飯食べとう?」、「なんね、このお菓子は」と不審がられ、弁解に苦労した2年目の冬でした。

3年目は、さらにスケールが大きくなり、「4年目はどうにかしないと」と思っていた時に、Kさんから意外な形で頂いたわけでした。

僕は粗食でもリッチに感じる性格ですから、もし贈り物で感謝の気持ちを表したい学生さんがいたら、今年はトマトジュースか野菜ジュースでお願いしますね。

あとは、意外とコンビニのおにぎりも好きですよ。こうなると、学生さんから食糧支援を受けているような、いびつな関係でしかありませんが…。


「たけのこの里」を食べていて、あまりのおいしさについ止められず、箱を見たらいつの間にかなくなっていて、「あぁ、もう終わりか」と悲しい思いを味わった経験がある人は、僕ばかりではないでしょう。

ところが、捨てようと思って箱を持ち上げた瞬間…「ころっ」。

「なんだ、おまえ、こんなところに隠れてやがったのか」と、見つけるやいなや捕まえ、全員を仕留めるのもまた、小さな幸せであります。夏などは溶けてくっついている場合もあるので、注意が必要です。


3年前、このような「たけのこの正しい楽しみ方」を学生さんに話していたら、「この人、バカじゃなかろうか」という目で見られたので、「君、たけのこをバカにしたらいかんよ」と、ある説教をしました。

上から見て、「何もない」と思う。それは、視点が一つだからそうなるのです。そういう時は、「箱ごと持ち上げる」という「当たり前の転換」を試みてみると、案外1つや2つのたけのこが転がってくるものです。

就活もまた、そのようなものだ。行き詰ったら考え方そのものを変えてみることが大事なんだ。これが「たけのこ理論」と呼ばれる考え方だ、ともっともらしく言うと、「へぇ~」とますます怪しそうにうなずいてくれました。


そうです。たけのこは、それをたけのこと思う人にだけ、ただのたけのこです。学生さんは、会社や仕事もまた、そのようなものだと思っているでしょう。だからいつまでたっても、志望動機も見つからないわけです。

建設会社を見れば、「建物を作っている会社」、証券会社を見れば、「株の売買に関わっている会社」、広告代理店を見れば、「広告を作っている会社」…。


こんな見方を「唯物論(ゆいぶつろん)」と呼びます。物を物たる側面からしか捉えず、そこに働く動機や精神、及ぼす効用や見えない関係を無視する、共産主義の代表的な思考方法です。


日本の公立学校は、このマルクス直伝の唯物論や労働価値説を子供たちの頭脳に注入する作業を「教育」と称しているので、このような教育で育った子供たちは、必然的に以下のような思考方法になります。

「営業?モノ売るのきつそうやし、あんましたくないね」、「先物?危ない商品扱ってそうやし、あんま受けたくないね」、「不動産?別にビルには興味ないし」…。

判断基準は全て「可視的」な要素に限定され、見えないものを見る想像力や思考力は、全く登場の機会を与えられません。要するに、自分に対する説明能力が十分に発揮されず、消化不良か消化未遂を起こすのです。


こういう思考基盤でいくら就活サイトを見て情報収集をしようが、果ては「情報が多すぎる」とか「情報が氾濫している」とか、「何を見ていいか分からない」と言うのがオチでしょう。

従って、僕は就活に際し、学生さんによく以下のような「レンガ職人の話」をやっています。


19世紀のアメリカに、ある旅人が訪れました。

色々な場所を歩き回るうちに、何やら大きな建物を作っている風景に出会ったので、旅人は興味を持ち、近付いていって、働いている数人の若者に質問してみることにしました。

若者たちは、せっせとレンガを運び、積み上げ、あたりを行ったり来たりしています。



一人目の若者に、「あなたは何をやってるんですか?」と聞くと…

「ふん、1日5ドルの仕事をやってるんだよ」との答え。


二人目の若者に、「あなたは何をやってるんですか?」と聞くと…

「見れば分かる通り、レンガを積み上げているんだよ」との答え。


三人目の若者に、「あなたは何をやってるんですか?」と聞くと…

「歴史に残る建造物の工事に参加しています」との答え。



いかがでしょう。三人とも、全く同じ仕事をしているのに、答えは三者三様で全く違います。それは何によって違うかといえば、「何を見ているか」によって違うのです。

あなたが博多駅をリクルートスーツを着て歩いていて、偶然昔の友達に会ったとして、友達が「何しようと?」と聞いてきた時のことを考えてみればいいでしょう。

「見りゃ分かろうが、面接たい」とか、「ふん、就活だよ」と答える人は、その程度のものしか見ていないから、もっと言えば就活を就活としてしか見ていないから、何をやっても疲れ、不安ばかり蓄積されるだけです。


学生は会うなり「何しようと?」と聞くのが癖で、おそらく、大半の学生さんは就活中に友達に会って「何しようと?」と聞かれても、唯物論的な答えが正しいと思っていて、その当たり前を疑うことすらないでしょう。

しかし、みんながそうであれ、それはみんな間違っているだけ。みんなが同じだと安心しがちですが、全員で赤信号を渡ってみんなでひかれることだって多いのです。

どんなに少なかろうが、「楽しい」と感じて頑張れる人の見方が一番正しいということを知っておきましょう。


愚者は「みんながやっていること」を正しいと考え、賢者は「成功者がやったこと」を正しいと考えるものです。就活中は、ため息をつく人間とだけは話さないことです。そういう人がいたら、助けてあげましょう。


同じスーツを着て、同じカバンを持っている学生さんでも、中には「夢の準備の第一段階で、楽しみながら挑戦しているところです!」と答える人もいます。


こういう人は、間違いなく成功します。それは、「問いを変える」という思考習慣を持っているからです。

こういうビジネスセンスがある学生さんは、「自分に合った会社」などという敗者の思考方式は採りません。「楽しみ、成功するには、自分をどう合わせていけばよいか?」と自分を変える方向で問題に対処します。「自分が合わせたくなる会社」こそ、最も楽しい会社です。



こうして、正しく謙虚に課題を認識し、自分を変えていける習慣と学習意欲を持った学生には、他の学生に申し訳ないほど内定が集中します。

それを「格差」と呼ぶなら、そんな格差は埋める必要はありません。努力の結果を格差と呼ぶのは、どう考えても間違っているからです。

どっちみち、内定したところで学生は学生ですから、仕事では依然として使い物にならないのは、分かりきったことです。つまり、知識や経験、実力はあと10年ほどは、慢性的に不足か欠落の状態にあるわけです。


ということで、就活の時に求めた楽しみや持っていた不安は、成長と同時に変化、変質していくものです。それと同時に、「考え方」もまた成長させていくのが、本来なら正しい対処法です。

ところが、「一つの見方」しか持てないと、自分の中に「意欲のネタ切れ」が早くから起こり、「会社辞めたい」、「この仕事、合ってないんじゃないか」、「もっと自分に合った業界があるんじゃないか」…


等々、黙って聞いておけば際限なく都合のいい要望や愚痴ばかりを口にし、まったく自己改善の努力を図ろうとしない若者が多いのは、一体どうしたことでしょうか。

「運命の出会い」?…ドラマの見すぎじゃないでしょうか。



つまり、「たけのこがなくなった」と思ったら、すぐにそれを捨て、「また買おう」と思ってしまう人は、いつも同じ性質の課題にぶち当たるのです。「箱をひっくり返してみよう」と前提(問い)を変えることは、まず考えようとしません。

仕事が楽しくないなら、そう思うような働き方をしている自分に責任があるのであって、会社や環境のせいにするのは筋違いです。

楽しく思えるようにしたいなら、「自分」をひっくり返せばいいのに、ほとんどの人は会社や環境をひっくり返します。しかし、そういうのをひっくり返すのは最初から無理です。


現代人は、こういう思考習慣が病的なまでに頭脳に注入されているので、求人・転職業者がボロ儲けなのも、よく理解できる話です。

「キミにピッタリの会社が、きっとある!」とでも書いておけば、思考力の弱い連中がうじゃうじゃ集まってきますからね。ほんと、サギじゃないでしょうか、この手の仕事は。なぜ求職者を教育しないのでしょう。

プロのコンサルタントとは、経費を下げて利益を増やす人間です。すなわち、環境を変えずに自分を変える発想を採れる人間のことです。僕はその意味で、プロです。僕と関わった人は、確実に儲かるからです。儲かるまでやめないので、当たり前です。

新しい要素を投入して改善するのは、小学生にだってできること。学生は「コンサル」と付けばカッコいいと思いがちですが、コンサルの本質を全然知らずに浮かれている人も多いので、社会に出て苦労するでしょう。


ですから、就活で行き詰まった時は、「自分はたけのこを買い換えようとしているのか?それとも箱をひっくり返そうとしているのか?」と自問自答してみて下さい。

あるいは、「どのタイプのレンガ職人なのか?」と考えてみるのもよいでしょう。

説明の上手な会社や、社員が生き生きと働いている会社は、例外なく「3番目のレンガ職人」の意識が共有されているものです。ですから学生さんも、そのタイプの捉え方を学べばよいのです。


「人に合わせるのは嫌だ」なんて言葉は、合わせられる実力が伴ってから、改めて考えればよいでしょう。大半の学生は「マネできる実力すらない」というのが事実ですから。

事業や就職を成功させようと思ったら、まずは、そこで仕事を最も楽しんで成果を出している人の考え方を参考にするのが大事だとは、僕も人事担当者や求職者によく言っていることです。

世の中、本当に不公平です。できる人は散々楽しんで、取り組むこと全てが笑いが止まらないほどうまくいって、しかも儲かりまくります。反対に、考え方が間違っている人は、ことごとくうまくいきません。


これからの本メルマガや就活コースでは、特に「就活で成功できる考え方」を含む情報に比重をおいて、皆さんとお付き合いしていく予定なので、どうぞよろしくお願いします。

最後に念を押しておきますが、お礼はトマトジュースか野菜ジュースでお願い申し上げます…。

スターHDのKさんの「金融勉強会」も、本当にいいですよ。「私には関係ない」と思う人ほど、チャンスがあるでしょう。だって、チャンスとは「関係ない」を「関係ある」にできる知識がもたらすのですから。