■「内定への一言」バックナンバー編


「多くのろうそくに火を分け与えても、

自分のろうそくの火が小さくなるわけではない」


(ポール・ユリウス・ロイター)

その①




申し遅れましたが、僕の夢は「アジアに通信社を作り、そこから出版社、日本語学校、投資ファンド、大学を作って、起業、金融、雇用、文化、歴史、産業の教育を担うミニ財閥を経営すること」です。この夢は、20歳から一度も変わっていません。




そして、これもまた「変わっていない」と思うのが、「通信社」と言った時に、たいていの人が「何、それ?」と答えることです。日本ではメディアと言えば「テレビと新聞」のことですが、これらは「加工食品業者」のような位置付けで、本当にマスコミを握っているのは、欧米の通信社です。




例を挙げればロイターAPAFPなどのことで、日本にも「時事通信社」と「共同通信社」の二社がありますが、大手の下請です。テレビでも主要ニュースは、「ロイター通信によりますととか、「AP通信が伝えるところではと言いますよね?




あれは、「カネを出して情報を買った」というサインで、フジテレビや朝日新聞が自前で入手した情報ではない、という意味です。日本のマスコミは、社員は語学はできないし、取材規制も強いし、お金があってもバラエティ番組などに投じているので、自前で情報らしい情報を取ることはできません。そこで、大金を出して情報を購入しているわけです。




僕は20歳の頃、マレーシアの首都・クアラルンプールの貿易会社で働いていました。マレー、中国、インド系の三民族が暮らすこの国では、10近くの言語が使われています。


一応公用語はマレー語、準公用語は英語ということになっていますが、それは都会の話で、田舎に行けば民族固有の言語しか通じません。そこで、言語別に新聞が9つもあります。




マレー語、英語、タミル語、ヒンディー語、ウルドゥ語、北京語、広東語、福建語、潮州語。テレビ画面の半分は「字幕」で、役所に行けば各言語の資料が山積みにされています。バスに乗れば、右、左、前、後ろの人で、それぞれ使っている言語が違います。




日本にいる頃は、「多民族国家って楽しそうだなぁ」とイメージしていたんですが、行ってみると大変なことが多く、なんと効率の悪いことかと何度も感じました。アジアで日本と韓国だけが自前の産業を確立し、最初に先進国の仲間入りを果たせたのも、単一民族・単一言語の国だという理由が大きいなと、肌で感じました。




そんなマレーシアの新聞ですが、一つだけ全く一緒のものがあって、僕はそれに興味を持ちました。それは「写真」です。どの言語の新聞を見ようが、そこには必ずReuterのクレジットが入っています。ドイツ人の名前だな、ということは分かりますよね。



マレーシアはイギリスの植民地だったので、イギリスの通信社であるロイター通信から情報配信を受けています。もっと正しく言えば、お金や人材、ノウハウがないので、情報従属関係にある、ということです。




情報の配信(卸)、仕入れ、販売プロセスに興味を持った僕は、シンガポールやタイ、フィリピンの新聞も買いあさり、国際欄を調べてみました。すると




やはり、フィリピンはアメリカ系の「AP(Associated Press)」の配信を受け、シンガポールはロイターでした。タイはAP、ロイター、UPFなど自在です。日本では「ロイター(共同)」、「UPF(時事)」などとついています。つまり、「ロイターが一次情報を掴み、共同通信が選んで買い(二次情報)、新聞やテレビが味付けして小売り(三次情報)している」ということです。




マレーシアには国営ベルナマ通信、韓国には連合通信、インドネシアには国営アンタラ通信、中国には国営新華社通信(共産党の情報機関)、イランにはイラン学生通信、ロシアにはインタファクス通信という、それぞれ国営の通信社がありますが、各国とも大体、日本の共同通信と同じ働きをしています。(日本の共同通信社は、民間企業ではなく、社団法人です。)



これは、何を意味しているのでしょうか?



まず、「日本及びその他の小国は、一次情報を得る立場にない」ということです。次に、「日本及びその他の小国は、欧米の情報を選別することを報道と捉えている」ということ。最後に、「日本人がマスコミだと思っているものは、コンビニのような小売店に過ぎない」ということです。




例えば、皆さんは「イスラム教」と聞いたら、即座に何を思い浮かべますか?テロ?過激派?イラク?アフマディネジャド大統領?断食?メッカ巡礼?色々連想するでしょうが、恐らく良いイメージのものは、あまりないでしょう。そして、何よりまず、「中東」を思い浮かべるでしょう。



それは、日本のメディアがこぞってロイターやAPから情報を買い、最初から色の付いた情報しか得られないからです。不知不識のうちに、欧米の視点で世界を見るようになっている、ということです。



しかし、世界最大のイスラム国家で、かつ日本に一番近いイスラム国家は、インドネシアです。なのに、日本人がイスラム教と聞けば、インドネシアはまず頭に上らず、イラクやサウジアラビアを連想します。



このようなことは、一事が万事そうであって、一次情報を人に任せれば、入手できるものが「オリジナル」でありえることはなく、情報によって知らず知らずのうちに従属させられてしまう、ということになります。




九州にも、西日本新聞、熊本日日新聞、長崎新聞、佐賀新聞、大分合同新聞などのミニ新聞社があります。テレビでも、TNC、RKB、KBC、FBS、TVQという系列局がありますよね。誰が考えても、これらの吹けば飛ぶような小マスコミが、世界の主要都市に支局を設置し、記者を派遣して、最前線で取材に当たる能力や財務力がある、とは思えません。



事実、そんな力はありません。しかし、世界で起こったニュースは伝えないといけません。


そういう時は、どうするんでしょう?




それは、日本の大手マスコミがロイターやAPにお金を払って情報を購入しているように、地方紙・地方局はお金を出して、共同通信から情報を購入するのです。時には、社説までも買います。



すると、どういうことが起こるのでしょうか。



それは、「金太郎アメ現象」です。共同通信は伝統的に左派系なので、全国紙が読まれておらず、「おらの町」の情報で間に合うような小さな市町村で選挙があったりすると、なんと、革新系の候補者が当選したりする、という珍事が起こります。


ド田舎で「ショッピングセンター進出、絶対反対!」とか、

ド田舎で「ワンルームマンション建設、絶対反対!」とか、

ド田舎で「自動車工場進出、絶対反対!」とか



それで、「ウチらの町には、若いモンはおらんねぇ」とか言うのは、根本的に矛盾したことなんですが、一たび情報が統制されれば、ただ漠然と、「時代の流れ」か「過疎地の宿命」と諦めるほかありません。



あるいは、東京のことも政治のことも何も知らないのに、社説が統一されて配信されるため、反体制的になったり、政策に色眼鏡を付けて見たりしてしまいます