■「内定への一言」バックナンバー編
「松下電器は、人を作っている会社です。併せて電器も作っています」
(松下幸之助)
就職活動中の方は、「会社」と聞けば即、「採用」とか「仕事」という言葉を思い出すかもしれませんが、それも正しい答えです。
しかし最も本質的な部分で会社の役割を挙げれば、やはり「人作り」といえるでしょう。生産しているのは自動車、家電製品、食料品、おもちゃ、化粧品、紙、繊維など、それこそ挙げればきりがないくらい、世の中には企業が作ったモノが溢れていますが、それらも全て、人が作ったもの。
だから、「良い人材」を育てれば、必然的に良い商品やサービスが生まれると言えます。松下さんの冒頭の言葉は、企業という組織が持つ使命を簡潔かつ端的に言い当てており、僕もこうして小さな組織の長として生きる際には、よく参考にしています。
松下電器と聞けば、日本を代表するメーカーであり、誰もがパナソニックとかナショナルとロゴの入った商品を使ったことがあるでしょう。「家電製品を作っている会社」というのも、正しい答えです。
松下幸之助さんが家電製品を作り始めたのは、そもそも、目の悪い母親が夜遅くまで内職に励んでいる姿を見て、「どうにか子供の自分でもできる親孝行はないか」と考えに考え抜き、失敗に失敗を繰り返し、小さな電球を開発したことがきっかけだそうです。
のちに、生活費や銭湯の代金にも事欠くほどの「どん底状態」を味わった時も、あるいは戦後に生産設備が破壊され、「物品税の滞納王」と政府に批判された時も、松下さんは絶対に子供の頃の感動と情熱を忘れませんでした。
創業時に電球やソケットで成功したのは、「母への思い」が原点だったように、事業が軌道に乗り始めると、今度は「日本中の母親を重労働から解放し、空いた時間を子供の教育に当てられるようにして、強く優しい子供たちをたくさん生み育ててもらおう!」と決意し、一日五5時間とも言われた苦行=「洗濯」を代行する夢のような機械「洗濯機」を開発します。
今では「仕事と家庭の両立」とか「女性の自由」と聞けば、すぐさま法律に頼ったりジェンダー論を持ち出したりと、「嫉妬と虚栄心」という女性の最も醜い部分が現れる事例も多々ありますが、「家電製品は家族だ」と考える松下さんは、生産によって女性を解放した偉大な先覚者でもありました。
戦争で国のために命を捧げた若年男性は二四○万人。実感が湧かなければ、「今年から十二年間続けて、大卒の男子が全員死亡した」と置き換えると同じ数字です。そのような状況になったら、人口構成に不均衡が起こり、母子家庭が増え、社会のあちこちでどんな問題が起こるか、想像できるでしょう。
「戦争で死んだ父親たちの分まで働く機械があれば、日本はきっと復活できる!」松下さんの信念は、このような時代の要請に応えて偉業を成し遂げました。しかし、その松下さんの思いが日本の母親たちに通じたかと言うと、必ずしもそうとはいえない面もあります。
これは人間なら仕方ないでしょうが、母親達は空いた時間をテレビや遊び、食事に当て、教育は学校や塾任せにして、「ほら、あんた!勉強していい成績を取らないと、大学に行けずに人生が台無しになるよ!」と言いつつ、自分は毎年脂肪の脱着を繰り返すばかり…。
その世代に子供として育った世代が今では母親になり、その子供たちは「尊敬する人?いないよ」、「人生?面白くないね」、「なんで勉強するの?」と口々に言い、親の世代に強烈なしっぺ返しを食らわせています。
会社でも学校でも家庭でも、未来を担う人をしっかり育てておくことは、本当に大事ですね。人さえ作れば不安はいらない反面、モノやカネをどれだけつぎこんでも、人を育てなければ、全く意味がありません。
ちなみに、宝くじで大金を手にした人の実に八○%が、賞金以上の借金を抱えて人生が破綻したというデータがあります。以来、第一勧銀(現みずほ)は億以上の賞金を小分け配当しています。
貧乏人がいきなり大金を持っても、昔貧乏だった時と同じ使い方しか頭の中にはインプットされていないのですから、そうなって当然というのは誰でも分かります。多くの芸能人やスポーツ選手が巨額の借金に苦しんでいるのも、膨れ上がった虚栄心に滅ぼされた証拠です。
生き方、働き方、稼ぎ方、使い方…「これだけが唯一正しい」というものはありませんが、適切な教育を施さねば、あちこちで破滅の連鎖が起こるだけです。