■「内定への一言」バックナンバー編
「効率的という言葉は良くない。創造的と言うべきだ」
(ジャック・ウェルチ 元ゼネラルエレクトリック会長)
その①
今日の就活コースは今までにない盛況で、一時間の「実践タイム」を含めた三時間があっという間に過ぎてしまいました。エントリーシートの下書きが仕上がった人もいれば、面接で手応えを掴んだ人もいて、早速「エントリーシートにハマりそう」、「面接って楽しいですね」という声も。
その通りです。さっさと成功するよりも、手応えを積み重ねながら成長していく方が、物事はずっと楽しいものです。
さて、「実践タイム」の中で、ある学生さんから「接客のアルバイトをどう伝えたらいいか」という質問を受けました。表情や体験談から、アルバイトを大切にして頑張ってきたことはよく分かりました。
途中、初心を忘れかけ、あまり工夫をしなくなった時期も少しばかりあったそうですが、「これじゃいけない」と思って、また努力を始めたそうです。素晴らしい態度だと感心しました。
慢心や慣れによる手抜きは、何かに打ち込めば誰もが直面すること。大事なのは、「それを自覚した時にどういう行動に出るか」で、長期的に見れば、能力やマニュアルよりも、性格や習慣の方が仕事により大きな影響を与えます。
「さらに良いと思われるやり方を考え、小刻みに変えて成果を試していく」ことの効果がいかに絶大か、それを示すエピソードとして有名なのが、GE(ゼネラル・エレクトリック)のジャック・ウェルチ元会長の手腕です。
ウェルチさんの本は何冊も出ていて、そのほとんどの紹介文に「二十世紀最高の経営者」という称号が書かれています。
ウェルチさんは創業者ではありませんが、忍耐強さと大胆さを遺憾なく発揮し、たった十四年間で、従業員が三十万人を超える巨大電機メーカーを、瀕死の状態から時価総額世界一位の座に導きました。
その驚くべき経営改革の詳しい内容は、数年前にベストセラーとなった「ウェルチ わが経営を語る」(日本経済新聞社)で余すところなく明かされていますが、ビジネス書の初心者でGE改革のエッセンスだけを知りたい方は、「ウェルチ リーダーシップ31の秘訣」(ロバート・スレーター著 日経ビジネス人文庫)がお勧めです。
彼が社長に就任した時点でのGEには、エジソンが創業した世界最初・世界最大の電機メーカーという誇りや安心感からか、「事なかれ」を旨とする官僚主義がのさばっていました。
社員は自分が何の仕事をやっているのかすら知らず、知ろうともせず、日々ただ漫然と業務をこなし、昼間から退職金や年金の計算をしている、という状態でした。
「モチベーション低下」がガン細胞のように組織に転移し、伝統ある巨大企業は現在のGMのように、瀕死の財務状況。しかし、倒産すればアメリカ産業界に及ぼす影響は測り知れません。そんな同社を救うべく、彼は社長に就任したのでした。
歴史に残る経営改革の中で、彼は何をしたのか?
それを端的に示す言葉は「選択と集中」です。つまり、「生産性の低い事業は撤退か譲渡、生産性の高い事業は確実に世界一にする」というだけの、シンプルな基準を作ったのです。
「生産性が低い」と言っても抽象的な響きなので、彼は明確な基準を作りました。それは「現状で、世界一ではない製品を作っている事業部」のことだと設定したのです。
二位の製品は、シェアが二位なだけではありません。販売努力、販売コスト、広告宣伝費、時間コストなど、全ての質が二位かそれ以下です。
つまり、一位になろうと思ったら、一位の会社以上の経営資源(人材、資金、モノ、時間など)を投入しなければならない、という意味です。
要するに、彼は「同じ目標を達成しようとしても、同じ量ではない経営資源を投資しなければならない」という事業を捨てる決意をし、「最小限の努力で最大の成果を得られる事業」だけに特化したわけです。
それは、三十万人が歩調を合わせる巨大なドラマでした。彼は末端の若い社員がいる現場にも足しげく通い、自分の目で自社の様子を確認しました。それまでは、幹部社員が「書類」で想像して決裁していた仕事の現場を、トップ直々に視察したわけです。
夢を抱いて入社したのに、やりたいこともさせてもらえない社員、正論を吐いても相手にされない社員、会社が大好きだったけど、もう辞めてもいいかなと思っている社員…そんな「GEマン」の気概を、彼は見逃しませんでした。
彼は、「やる気のある人が思う存分やる気を発揮できる環境」を作るために、実におびただしい数の工夫に着手します。詳しく知りたい方は、先に紹介した二冊のうちどちらかを読んでいただけばよいでしょう。
その中で、稀代の名リーダーが社員を褒める時に使った言葉に、僕は大変興味を持ちました。それが今日の一言、「効率的という言葉は良くない。創造的と言うべきだ」です。
会社の将来を思う若い社員が、「もっと仕事がしやすくなるように」と、ある小さな提案を行いました。それを聞いた上司は、さも他人事のように「効率的だね」と受け流すのが、それまでのGEの社風でした。しかし彼は、「効率的とは何事か!」と怒るわけです。
「もっと良いやり方を考えて、今までやっていた方法から新しい方法に変える。その結果、新たな可能性と時間が創造され、今まで有効に活用されていなかった時間と労力は節約され、新たなエネルギーが社内のどこかに創造される。そういう提案は、効率的ではなく創造的と呼ぶべきだ」と、若い社員をトップが直々に「You're creative!」と褒めたのです。
誰でも、「あなたは効率的な人だ」と言われてもあまり嬉しくないでしょうが、「あなたは創造的な人だ」と言われれば、喜ぶでしょう。
だって、今まで一時間かかっていた作業が、「ある創造的な方法」のおかげで、五九分で済むようになれば、それは「一分」という時間を創造したことになります。その一分は、さらに価値ある仕事や商品を生み出すための「貴重な経営資源」になります。