■「内定への一言」バックナンバー編
「起業家とは、
生産性の低いあらゆる資源を、
生産性の高い分野に移す者のことである」
(ジョセフ・セイ)
最近も毎日ベローチェで作業をしていますが、夕方あたりになると、学生さんたちがぽつぽつと集まり始めます。そして、時々業界や会社についての質問を受けたりします。
その中で、昨日今日と引き続き、西南のMさん、M君から、「リース」について質問を頂きました。この面白い仕事について知っておけば、経済や経営、金融が面白く思えてくるでしょうから、今日はこのリースについて、簡単に説明してみましょう。
実はリースとは、「世界最古の金融業」と言われています。正しくは、貨幣経済が機能する前の段階から活用されてきた制度だそうで、紀元前2,000年頃の中東のある王国の歴史書には…。「神官が農民に農機具をレンタルしていた」という記録があるそうです。
日本人が海幸彦と山幸彦だった頃から、アラブでは自然発生的に、人々が納得するシステムが生まれていたなんて、興味を惹かれますよね。
リースとは、簡単に翻訳すれば「物融」であり、器具・設備の「立替払い」を通じて入手を代行し、現物を貸し付ける制度のことです。ビジネス書などを見れば、「動産の賃貸借」と説明されていますが、「動産」とは「不動産」と違って、移動可能な資産・設備を指す言葉です。僕は、「可動産」と呼ぶと分かりやすいと考えています。だって、動かせて、儲かるんですから。
リースはとにかく便利で、関わる人々にそれぞれメリットをもたらす、古典的で画期的なビジネスです。考えようによっては、銀行や証券以上にダイナミックで、いつも新分野に挑戦し、新たな可能性が開拓されている業種である点が、学生を引き付けるのでしょう。
例えば、「手元に200万円の現金があって、150万円のコピー機を購入したい」と思っている社長さんがいるとします。
もし、新品のコピー機を現金で買えば、その会社の帳簿には、固定資産の欄に「複写機」と記録され、現金の欄からは「150万円」がなくなるでしょう。そして、支出欄には新たに、「メンテナンス代」とか、「トナー代」といった項目が表れ、さらに決算期になれば、「固定資産税」を課せられます。
だって、この大掛かりな機械は、その会社のビジネスを応援する「資産」なのですから。困ったときは売却すれば、数十万円の担保価値も持ちます。資産は資産として、こういう意味も持っています。
しかし、「150万も出すのは痛いなぁ…」と思う会社も多くあることでしょう。もし、このコピー機をもっと安く導入できれば、空いたお金をもっと有効活用できるのに…。
そこに登場するのが、リース会社です。リース会社が扱える商品は、人間と軍備以外は、無限といって良いほどの幅の広さで、想像力次第で、どんなものでもリースの対象となります。
社長さんの要望を聞いたリース会社は、「分かりました。では、月額5万円で最新のコピー機が使えるように手配しましょう」と言って、クライアントに代わって設備を立替払いで購入し、コピー機を社長さんに貸し付けます。当然、このコピー機の「所有権」は、リース会社にあります。
ということは、月々のややこしいメンテナンス代も、あの嫌な固定資産税も、リース会社が負担することになります。もっとも、「手数料」という万能の意味を持つ名称の下に、若干、メンテ代や税負担を転嫁されることもありますが…。
社長さんは、もし手出しなら150万円の資金が消えていたところに、リース会社が立て替えて買ってくれたことで、なんと「145万円」の資金を手元に残すことができ、このお金を採用や広告、商品開発に回すことができます。
「最新」とか「最高」、「最大」なんて言葉は、売る側の都合しか反映していない「うるさい売り文句」で、最も良いのは「最適」です。リースはこの「最適」を、相手の財務状況や経営目標、経営環境に応じて、自由に組み合わせることができるビジネスです。
例えば、昨年、世界で一番多く航空機を購入した会社は「GEキャピタル」です(2位はフェデックス)。名称からも分かる通り、金融会社です。なぜ、金融会社が飛行機を買うんでしょうか?社員旅行のため?いえいえ、そんなはずはありません。
世界的に航空業界の業績が厳しく、規制緩和の流れで新規参入する航空会社が世界中で増えているため、手元に資金的余裕がないそのような航空会社に「貸す」ために、飛行機を数十機も購入したわけです。
「だったら、直接そのお金を貸したっていいじゃないか」と思う人もいるでしょう。
しかし、銀行の本質である「カネ貸し」のスタイルでは、「返ってきたら終わり」です。銀行は他人のお金を預かって「お金を転売する商売」をしているため、設備投資額が巨大で、先行きも見通しにくいような航空会社には、なかなか貸しません。
しかしリース会社は、実質的には設備を貸し出して、その賃料を毎月受け取るという点では「銀行」と同じ金融機能を持ちながら、貸し出し期間が終了したら「再リース」でさらに儲けたり、あるいは「売却益」でさらに稼ぐことができます。
例えば、1台の「カローラ」で考えてみましょう。
もしこのカローラを売れば、100万円の現金が入ってきます。そして、ビジネスはそこで終わり。
しかし、「この車を買うお金」を貸すとしましょう。利息5%なら、「105万円」のお金が入ってきます。
では、「1日=1万円で借りる人」が、年間で200人いたら…?なんと、100万円の車が、200万円ものお金を生み出してしまうのです。レンタルビデオと同じですね。
さらに、リースやレンタル目的で使うには「ちょい、古いね」という状態になれば、中古車屋さんに売却すれば、20万円くらいにはなるかもしれません。
リースは、銀行よりも儲かる上に、場面に応じて銀行、商社、中古品販売会社と、姿を変えていきます。ユニークな商売ですね。
だから、リース会社はいつも、「この設備が一番多い収益を生むには、どういう活用方法をすべきだろうか?」と考えています。中途解約規定など、リースとレンタルの基本的な差は、リース会社のHPを見れば、どこにでも詳しく書いていますから、そちらに譲るとして、「経営資源の最適な活用方法」を考えるのが、リース会社の仕事です。
例えば、喫茶店の絵画や、オフィスのコーヒーの機械、観葉植物、熱帯魚の水槽なども、リースの対象になります。パソコンやテレビなどは、言うまでもありません。
読者の皆さんの中で、飲食店やお菓子屋さんなどでバイトをしている人がいたら、レジスターや冷蔵庫、エアコン、テレビ、カラオケ機器などに「小さなシール」が付いていないか、調べてみてはどうでしょう。きっと、身近な場所に、リース物件がいっぱい見つかりますよ。
また、多くの人が「憧れのマイホーム」と呼ぶ一戸建てやマンションも、現金一括払いで購入していないのなら、それは全て「リースホーム」と呼べます。高い金利を払って、銀行の資産の中に間借りしているわけですね。車も同じです。現金で買わなければ、それは全て「カーリース」の仕組みで乗っているのと同じです。
もちろん、使用上は完全に個人使用目的で使えますが、所有者は信販会社や銀行だったりするわけです。トヨタの新車に乗っている人は、現金で買うのと割賦で買うのでは、同じ車に対しても払う金額が違うわけですから、メーカーとしては「現金大歓迎」と言いながらも、本当はローンやリースで使ってもらえた方が、儲かるわけです。「トヨタ銀行」と呼ばれるゆえんです。
このような仕組みで、商社が豪華客船を購入して旅行代理店に貸し付けたり、メーカーが球場を購入して球団や広告代理店に貸し付けたりと、リースの視点なしには、社会の正確な動きは掴めません。
今では、クライアント企業が保有する資産をリース会社が買い取って、残余価値を見積もって再度貸し出す「リースバック」と呼ばれる手法や、巨額の物件をリース会社が仲介者となって購入資金を集め、利用料収入を投資者に還元する「レバレッジド・リース」と呼ばれる手法もあります。
不動産の証券化と似たような手法を、多くの物件に対して、実にダイナミックに活用しているわけなんですね。
お客さんの財布に余裕ができて、バランスシート上でも流動比率が高まって、メーカーも安心できて、リース会社も儲かる…。こんなに便利な仕組みだから、大昔のアラブでも、このリースの仕組みから経済が動き始めたのかもしれません。リース会社を志望する皆さんは、どのような商品を扱ってみたいですか?想像力を駆使して、多くの社長さんの可能性を一緒に創造していきましょう。