■「内定への一言」バックナンバー編


「IT革命では、TよりIが重要だ」(P・F・ドラッカー)

その②




大学生の人気企業ランキングで毎年上位に来る「電通」が、当初は「東京電報通信社」だったことは、あまり知られていません。しかし、「ラジオ屋になろう!」ではなく、ラジオ番組の空き時間に宣伝を流すという先見性があったからこそ、映像も同時に伝える「テレビ」の到来に、チャンスを見抜くことができたのでしょう。




想像力=チャンスを見抜く能力」って、ホントですね。




さて、時代はパソコン全盛の九十年代に移ります。「これからはITの時代だ!」、「IT関連の資格を取ろう!」、「IT化に備えてパソコンのスキルを上げよう!」とは、誰もが聞いたことがあるでしょう。



しかしこれは、「これからは電話の時代だ!」とか「印刷屋(紙屋、ラジオ屋)になろう!」と言っているのと同じではないでしょうか?つまり、「I」より「T」を見ているという証拠。




九十年の「Forbes」で、億万長者としてランク入りしたパソコンメーカーの社長は、十人のうち六人がランクから消えました。(『デルの革命』マイケル・デル、日経ビジネス人文庫より)。つまり、Technology」にこだわって、今までと同じ過ちを犯したからです。



そして今も残っている企業は、マイクロソフトビル・ゲイツ)、デルコンピュータマイケル・デル)、ヤフージェリー・ヤン)などです。ランク外のグーグルラリー・ペイジ)もあります。これらの「見た目はIT企業」の共通点は何でしょうか?それは


1.技術力がない

2.ボロ小屋から始まった

3.創業者が数兆円の自己資産を持ち、全員大学中退



でしょうか?それも事実ですが、本当の共通点は



1.「インターネットがあれば、どういうコミュニケーションが成り立つか?」を考えた

2.パソコンを「個人の情報保存機器」ではなく、「ネットワークの媒体」と捉えた

3.PCを「買って終わる」ではなく、「買って始まる」というビジネスモデルを生み出した



ということ。




つまり、「ウチの方が優れた技術だ!」といった不毛な争いは無視して、「パソコンは何でもいいから、とにかくウィンドウズ(ヤフー)を使え!」と先手を打ったのです。デルは「買い方」を商品化し、先進国のPC市場を食い荒らしています。




かわら版、新聞、ラジオ、電話、テレビそしてパソコン。全て「情報の伝わり方」を変えた機械です。しかし、機械だけに着目していては、大切なことは何も分からず、「これからはパソコンの時代だ!」という、昔も登場して消えていった人たちと同じ思考パターンになってますよ、ということです。



「速度が速い」、「画素数が多い」、「音質が良い」といった基準で競い合っているメーカーは、何百億円もかけて消耗戦を繰り広げています。時には大幅な値下げをして、「キャンペーン」という名のムダを繰り広げています。



他方、マイクロソフトやデル、ヤフーは、この間、値下げどころかどんどん値上げをしています。「モノ(技術)」より、「コト(情報)」をしっかりと握って、覇権を確立したからです。




昨年、中国のレノボグループIBMのパソコン事業部門を買収しました。中国のマスコミは、「アメリカの誇りを二○○○億円という安値で買収した。これからは中国の時代だ!」と騒ぎました。



しかしIBMは、「これからはサーバー事業とソフト開発に特化する」と言い切り、中国マスコミの時代遅れぶりに笑いをこらえきれませんでした。




これって、「聖書バカ売れ」で笑いが止まらないグーテンベルクから、「印刷機を買ったぞ!」と騒いでいるドイツの田舎モノと同じ構図ですよね。



もちろん、IBMもそれはしっかり理解していて、一連の買収劇は、「中国人がデルに勝てるわけがない。あんたらは得意の人件費の安さを武器に、不毛の消耗戦でも展開しとけ」と勝利宣言をしたのと同じです。「ゴミを二○○○億円で買い取ってくれて、ありがとう」とアメリカ人は喜んでいるでしょう。




冒頭の指摘、「TよりIが重要」の意味は分かりましたか?IBMが情報を保存・蓄積・伝達する「サーバー事業」に切り替えたということは、これからは「ネットワークの拡充が重視される時代」と決断した、ということ。IBMもまた、より付加価値が高い「コト」を重視する賢明さを持ったのです。ファミコンより、ソフトが大事なように。



さて、大学生の就職観と言えば、マルクス主義めいた時代遅れの「唯物論」が支配的です。


「いろんな人に出会いたいからマスコミ」

「憧れだから客室乗務員」

「旅行が好きだから旅行代理店」

「人の笑顔が好きだから接客業」

「英語を生かしたいから商社」



これが悪いとは言いません。そういうふうな意識で働いてくれる従業員も必要です。しかしそれは、「聖書が好きだから印刷会社」と言っているのと同じです。目に見える現象だけを見ていては、いつも判断を誤ります。根底で動いているコトとは、一体何でしょうか?知りたい方は、ドラッカーを読んで下さいね。



これから先は、自分の頭で考えてみましょう。あなたが「モノ」と「コト」のどちらにこだわって、将来を描いているのか、を。あなたが志望している仕事を見る際、「T」的な要素と「I」的な要素の区別は、できていますか?