■「内定への一言」バックナンバー編


「笑顔に勝る化粧なし、素直に勝る技巧なし」
その①



FUNの取材企業数も発足3年で300社を超え、僕が経済誌の記者時代に行った数の半分にまで迫ってきました。やっぱり、集団戦は強いですね。これは、追い抜かれるのも時間の問題でしょう。


僕の取材はもちろん「仕事としての取材」だったため、本来の目的は「商談」だったわけですが、それでもお互いの信頼関係がなければ、その後の良い関係は構築できないため、時間を空けては事業観や人生観を聞いていました。



その中で、名言めいた人生訓やスローガンにも触れ、良い言葉と出会うと一日が幸せな僕は、そういう言葉を書き残しては、自分の独立のアイデアを練り続けました。行っていない業種は葬儀屋さんと原発くらいで、他はありとあらゆる業種の会社を取材・営業で訪問したものです。



そんな中、人数が少なかった前の会社では、2~3ヶ月に一度ほど、急用ができた先輩社員に代わって取材を行うことがありました。その「代行取材」でも一番困ったのが、唯一の女性社員だったGさんが訪問の予定を入れていた、某下着販売会社の取材でした。



僕は焦りとか不安、緊張という感情にほとんど縁がなく、何かやる時は「うまくいったらどうしよう?」と悩むことがほとんどなのですが、さすがにこの時は「何だって?」とちょっと焦ってしまいました。だって、「下着」ですよ、下着。



男ならドンキか100円ショップで済ませる人もいるし、変な趣味がない男以外、そういうものに興味を持つ人はいません。それを、よりによって最年少の僕に、女性用の下着会社の取材に行ってくれとは。困った。話題がない。



他の会社なら、「最近、こんなのが出ましたね」とか、「A社の○○は優れものですよね」、「利益率を上げるには、ここをこうしてはどうでしょう」と様々な角度からアプローチできるのに、下着ではそうもいきません。



ましてや、事前の商品調査や売り場調査でもしようものなら、「変質者」として逮捕されかねません。値段も流行も全く分からず、知っているのはワコール創業者・塚本幸一さんの伝記だけという状態で、取材に臨みました。



さてさて、会社に入ると「今日は男性の記者さんって聞いたから、これはよかった、色々聞けると思って、楽しみにお待ちしてたんですよ」と、おばさんのちょっと手前、という感じのにこやかな女性社長が出迎えてくれました。しかも、社員も全員女性。



経済誌の取材というのは、そう頻繁にあるものでもないので、3~4人の社員が「話が聞こえる所」で仕事をしています。「こりゃ、こっちが取材されてるみたいやんか」と腹をくくって、取材を始めようと思ったら相手がどんどん商品を持ってきて、ニコニコしながらあれこれ聞いてくるではありませんか。



「この商品、どう?これ、パットが入れやすくなってるんです」とか言われて、「着けたことがないので分かりませんが、脱げば一緒ではないでしょうか」と答えると、「やっぱり、男の人は中身が好きなんですね」と笑顔うぅそう取るのか



他の社員もこっちを向いて笑っています。「脱げば一緒なんて、冷たいですよ。女の子は必死なんですから」と、リーダーっぽい人に笑顔で言われてしまいました。



「そりゃ失礼しました」と思いながら、「でも、男のシークレットシューズと同じ仕組みじゃないですか」と付け加えると、「あら、そうですね。お友達でも、その靴を履いている方がいらっしゃいますか?」と、また笑顔で質問。



「居酒屋に行くと、5cmくらい背が小さくなる友達ならいます」と答えると、「なるほど。じゃあ今は、コンプレックスを解消する商品だったら、男女問わず、比較的若い層にも受け入れられるんですね」と、メモを取っていました。



他にも、AだとかDだとか、女性の基準を教えてもらいましたが、女性読者が70%を占める本メルマガでは、これ以上書くと良くないので、これくらいにしておきます。ただ、女性の生活はなんとお金がかかることかと、改めて感じました。



さて、本題はここから。この会社に入って、話を聞いている間ずっと感じていたことですが、とにかく笑顔が多い。それも、作り笑いなどではなく、心から歓迎し、感謝しているような笑顔です。



さらに、ビジネスではあまりに基本的なことでも、恥ずかしがらずにどんどん聞いては、「ありがとうございます」と律儀に返し、メモを続けています。設立して1年足らずということで、僕の方が「他の会社と比べて、当社の経営はどうですか?」と、たくさんの質問を受けたほどでした。



しかも、話を聞いていくうちに、どうやら「会長」と呼ばれる人がいることが分かり、その会長さんの信念が、社員に仕事に対するやりがいを感じさせているようでした。



その会長さんは当時、50歳近くということでしたが、小学生の頃にお母さんを亡くされたそうで、ご自分が母親の享年を超えた時に、改めて母親の美しさを感じ、それまでの美顔器や健康器具の通販事業に加え、下着販売事業にも進出されたとのことでした。



そのお母さんが生前、子供たちに大切にしてほしいと願って捧げた「笑顔に勝る化粧なし、素直に勝る技巧なし」という言葉が、この会社(グループ)の社訓となっている、ということでした。



僕は一度聞いて、なんと素晴らしい言葉だろうかと感激し、この会社を訪問してから感じていた温かい雰囲気の謎が解けた気がしました。



「嬉しいから笑うんじゃない。笑うから嬉しくなるんだ。笑顔は無料で持ち運びも自由だし、何回プレゼントしても疲れないし、与えれば与えるほど、自分も幸せになる。しかも、相手の心に永遠の希望を灯す」という人生観を聞いて、接客業ならずとも、人生でこれ以上素晴らしい基準はなかなか探せないな、と感動しました。



また、素直じゃないと、悩めば悩むほど自分の停滞や失敗を認めなくなり、どこかに「秘訣」や「近道」があるんじゃないかと期待して、ますます現実逃避をするようになるものですが、素直ならあるがままの自分を見つめることができます。



素直さとは「今、ここで、自分から」学ぶ資質のことですから、どんなテクニックより近道だし、強力で本質的です。