■「内定への一言」バックナンバー編


「笑顔に勝る化粧なし、素直に勝る技巧なし」
その②



現代人は「やればできる」という、人生で必ず成功する言葉を聞いても、すぐに「嘘だろ」、「それくらい分かっている」と冷たくあしらい、相手にしません。



しかし、このようなありふれた言葉でも、もし聞く側に素直さがあれば、「そうか、そういうことなのか!」と心から感動するでしょう。でも、「やればできる」という言葉を素直に受け止める寛容さを持ち得ない人は、大金と膨大な時間をつぎ込んでは、「秘訣」を求めてさまよいます。



経営の世界であまりに有名な「ダム経営」は、松下幸之助さんが提唱した「豊かな社会、豊かな経営」を象徴するキーワードで、この言葉についても、とても有名なエピソードがあります。



戦後を代表する大実業家となった松下幸之助さんは、「蛇口をひねれば水が出るのは、ダムに水が蓄えられているからだ。同じように、もし経営資源が欲しいと思って、その時に必要な資源を手に入れようと思ったら、会社にも資金やアイデアのダムを作るのがよい」と考えたわけです。



もちろん、これは「欲しいと思った商品が豊かに提供される社会に」という願いも込められている言葉ですが、社内にも適用できる考え方でした。



ある日、京都で、時代の最先端を行く不世出の大経営者が、その持論である「ダム経営」について語る講演会が開催されました。まだ経営に余裕がない社長さんたちが大勢集まり、会場は超満員に。



松下さんは、おだやかな関西弁と分かりやすい例えで、テーマである「ダム経営」についての講演を終えました。



さて、講演終了後の質疑応答の時間。経営にゆとりを持ちたいと思ったある経営者が、「わが社もダム経営を行いたいんですが、どうやったらできるでしょうか」と質問しました。その質問を受け、松下さんはただ、「そうですな。それは、ダム経営をやりたいと思うことです」とだけ答えました。



会場は「なんだ、そんなことくらい分かっている」、「もっとましな答えは言えないのか」、「期待外れの答えだ」と言いたげな失笑と冷笑に包まれました。



しかし、そんな白けた会場でただ一人、「そうか、そう願えばいいのか!なんと大切なことを教えてもらったんだ!」と感激している若者がいました。



それが、まだ創業間もない京セラ社長・稲盛和夫さんだったというのは、学生さんが「ミスチルとサザンは、一緒に歌を歌ったことがある」と知っているのと同じくらい、経営者の中では有名な話です。



この話は3年前、福岡女子大でFUNが発足する時のミニ講演会でも紹介しましたが、僕のお気に入りサイトの一つ「Nikkei Biz Plus」が、ちょうど最近のコラムで紹介していました。

http://dp.nikkei.co.jp/colm/nakajimat.cfm?i=20060620ck000ck


この講演会に参加していた会社で、京セラ以上の成長を成し遂げた会社は、もちろんありません。それは、稲盛さんの感動が一番大きかったからです。



つまり、「一番素直だった」ということです。「経営に余裕が欲しい。余裕が必要だ」と、他の何事も考えず、ただその一念に集中した稲盛さんだけが、事の本質を洞察し、現実に挑戦できたのでしょう。



学生さんにも、受かり方とか人事担当者の考えなどを聞いて、まめな準備をしたがる人がいますが、心から「働きたい」と思っていなければ、そういうテクニックも全く意味がありません。



化粧やファッションが大事だという情報もあるようですが、表情が暗ければ、余計な違和感を強めるだけです。



反対に、実務知識はあまりなくても、素直に指摘を受け止め、着実に前進できる若者は、必ず伸びます。また、有り難いことや感動する話を聞いて、心からの笑顔を捧げられる人は、相手にこれ以上ない印象を与えられます。こういう資質は、事前の練習で身に付くものではありません。



だからFUNでは、発足当初から「本気は疲れない」と言い続け、本気で大学生活を送ることが最高の準備だ、という考えで活動しています。



世の中には、頑張る方が「疲れる」と決め付け、本気になるのを引き伸ばして周囲を観察してばかりの人もいますが、そういう人は寂しく、悔しいだけなんです。若いうちは、そうやってひねくれてしまうこともありますが、一度感動すれば、若者は驚くべき変化を遂げます。



だから、皆さんが「本当は何かに熱中したいんでしょ?一緒に頑張ろうよ」と励ましてあげましょう。二つの最高の財産をもって。