■「内定への一言」バックナンバー編
「名将に赫々(かくかく)たる武勲なし」
人生における、土壇場の大逆転。
仕事における、ギリギリでの突破。
経営における、月末での挽回。
学生生活における、締め切り直前のレポート完成…
ドラマチックです。そして、いかに想像力が不足し、着手と行動が遅かったかが分かります。人は極端なこと、目立ったこと、普段はあまり見ず、聞かず、経験しないことを重宝します。そういう出来事は、とにかく並外れています。それをやった人まで、なんだかすごく思えてきます。
例えば、年末の「珍プレー好プレー」で見るプロ野球選手のファインプレーは、素晴らしき美技です。「さすがプロ!」だと思わずにはいられないほどの反射神経、捕球・送球技術に、平凡な私たちは賛美の目を向け、感心します。
絶体絶命の状況で、社員にも役員にもアイデアが浮かばず、金策に走り回る社長が月末に取り付けた融資は、有り難いです。社員もその時は、「さすが社長!」と褒め称えるでしょう。その場だけを考えれば、これも「経営のファインプレー」かもしれません。
しかしそもそも、野球選手のファインプレーは、立ち位置がずれていたことから生じるのです。社長の月末の融資取り付けは、月末まで商品が売れず、キャッシュが入らなかった時に行われるのです。
予想しない事態が「ドラマ」なら、創業期の会社やスポーツ選手には、ドラマが溢れています。ベンチャー企業の「企業理念」や「経営方針」を見ると、「スピード重視」とか「展開を速く」などと書いていますが、それは僕も経験した通り、「すぐ失敗するし、速く次を考えないと倒産する」から、ファインプレーじみたことをやってしまうのです。
それは、他人が読んだり見たりする分には、楽しいヒマ潰しにはなるでしょう。しかし、その一方で、目立たず騒がず、焦らず臆せず、やるべきことをコツコツと達成し続けている人もいるのです。
今日の一言は、「名将には、目立った戦勝の記録がない」という意味で、優れたリーダーには、土壇場の大逆転や、ドラマめいた、神がかったような勝利の記録はない、というほどの意味です。
話を、僕が二年見てきた「大学生の就活」に置き換えてみましょう。FUNの学生は、秋から先取りで着々と対策を行うため、ファインプレーの話はあまり聞きません。そういうことをしなくても、内定は楽勝だからです。しかし、そうではない学生もいます。例えば…。
「エントリーシートをダウンロードしたらさぁ、提出期限が翌日って書いてあってさぁ、まじありえんくねぇ?と思いながら、リポビタンD飲んで書き上げたぜ!」
「レポートとバイトが重なったのに、留守電聞いたら面接が明日とか入ってて、死ぬほど焦った」
「筆記で落ちたらシャレにならんと思って、二月くらいからSPI対策を始めたら、マジ数学が解けんでさぁ、あん時ゃやばいと思ったね」
「卒業がかかった試験が、持ち込み禁止と思ったら持ち込み可でさ、おい、ふざけんな!って言いそうになったぜ」
三年生や一、二年生の方々は、こういう「極端」な話、あるいは「武勇伝(本人だけがそう思っているに過ぎない)」を聞くと、先輩はすごいなぁ、とか試験や就活って、そんなにきついのか、と思ってしまうかもしれません。しかし、ご安心を。
そういうのはそもそも、始まりが遅く、心構えが甘く、準備の質が低いだけの話です。要するに、下手な一人相撲に過ぎません。社会人でも、そういう「武勇伝」を勇ましく誇張する人間が大勢いますが、無視して差し支えありません。本当に頑張っている人間は、いつも静かに、周囲を気にせず、コツコツと目標に向かっているものだからです。
ファインプレーを誇っている人がいたら、「じゃあ、なんでそうなったんですか?」とでも聞いてみたらいいでしょう。ファインプレーは、失敗よりマシなだけの結果であって、何度も再現できるものでもなければ、客観化して人に教えられるものでもありません。
しかし、自分の甘さが招いた経験を、さも貴重なノウハウのように、何も知らない後輩に伝授しては先輩ぶる人間が、大学にも社会にもウヨウヨいます。そういう人間の情報は、風邪のウイルスよりも危険なので、聞かないようにしましょう。
あなたが打つボール、取るボールは、いつ、どのあたりから飛んでくるのでしょうか。大体の位置は、誰でも分かっているでしょう。しかし、それでも「ボールが飛んできてからね」と言うのと同じように、「周りが始めてからね」と言う学生もいます。その態度こそ、ファインプレーの準備です。
そして、ファインプレーとは、「そのような態勢では成功の確率が十%以下」だからこそ、ファインプレーと呼ばれるのです。つまり、遅れている時点、来ると知っていながら動かないその時点で、もう、九割は失敗だということですね。
静かに事を成し遂げ、後からひそかに尊敬されるような人間である方が、世の中は何かと生きやすいものです。ファインプレーをチヤホヤするのは、どうしようもない人間ばかりで、そういう人間に褒められたところで、何の足しにもならないもの。自分を信じて、コツコツと地道な武勲を刻んでいきましょう。