■「内定への一言」バックナンバー編


「ライオンに率いられた百匹の羊は、

羊に率いられた百匹のライオンより強い」(ナポレオン・ボナパルト)




兵法や軍学を初めて経営理論に持ち込んだ経営者・作家といえば、大橋武夫さんです。もう随分前に亡くなられましたが、陸軍中尉として古今の兵法書を読み漁り、敗戦後は東洋精密機械の社長として、瀕死の同社の経営を立て直し、引退後は隠居生活に入らず、東洋や西洋の優れた兵学書、軍事理論を企業経営の世界に翻訳する仕事に人生を捧げました。



そんな大橋さんの著書の中でも、一際優れた内容を誇っているのが、「ピンチは」(マネジメント社)です。




他にも氏は孫子、呉起、六韜、三略、韓非子、戦争論、君主論などの解説書を書いていますが、どれも人間に対する温かい洞察と、冷厳な事実認識に支えられていて、一ページ一ページから、著者の人柄が伝わってくるような迫力を感じます。



大橋さんが多く著書を出したマネジメント社の編集長が、実は僕の叔父だったため、わが家には昔から、軍事や兵学の本がいっぱいあります。最近は、僕が経済誌の記者になったのも、経済やビジネス、人間心理が好きだった元官僚の叔父のこういう影響もあったのではないか、と思っているところです。




さて、そんな同書にも収録されている、あまりにも有名なナポレオンの言葉が、今日の一言です。といっても、読者の皆さんは大学生。企業を経営しているわけでもなければ、戦争をするわけでもありません。



しかし、この言葉は誰にでも当てはまる普遍性を持っているからこそ、ご紹介したわけです。単に「戦争(経営やスポーツも)はリーダーで決まる」という当たり前の事実を強化するために紹介したわけではありません。 この言葉を、個人に当てはめて考えてみましょう。




組織の発揮能力はリーダー次第です。同様に、個人の発揮能力も、リーダーとなる資質次第。 個人で考えれば、誰しも皆が憧れるような長所と、何年も改善したいと思っている短所があるでしょうが、これはまさに「ライオンと羊」、つまり勇将と弱将の関係です。



ということは、「どんなに優れた能力や資質を持っていても、それを引っ張るものが悪ければ、その人は何も成しえない」「さほど優れた能力や知識がなくても、自分を強力に引っ張るものがあれば、その人は何かを成しうる」と言えるのではないでしょうか。




「引っ張るもの」とは、例えば夢であったり、習慣であったり、意志力であったりします。夢があれば行動が生まれ、習慣があれば行動が能力になり、意志があれば、不可能が可能になります。夢、習慣、意志がなければ、全ての知識や能力は浪費され、間違って認識され、廃棄処分されていきます。



愚鈍な人間でも、大きな夢を描けば、夢がライオンとなって、羊だった自分を変えていきます。逆に、ライオンのような優れた資質を持っていた人も、夢が羊になってしまったら、むなしく朽ち果てていくのみです。




さて、あなたはあなた自身に対して、ライオンと羊、どちらの態度を取っているでしょうか?あなたが羊かライオンかなど、さして重要な問題ではありません。あなたを率いるものがどちらの性質に近いかが、卒業後を決めます。



自己認識がどうであるかによって、短所でさえ他人の長所を追い抜くこともできれば、長所でさえ他人の短所に及ばなくなることもあります。長所は「小さな達成の積み重ね」、「決めた行動の繰り返し」で補強できます。行動せずに「可能性」や「将来性」といってみたところで、無意味な慰めにしかなりません。何か一つ、自分が本当の自分になれる行動を決め、何があっても毎日続けましょう。