■「内定への一言」バックナンバー編


「歳寒うして、然る後に松柏の彫むに後るるを知る」(論語)




最近、FUNの一部では中国古典がひそかなブーム。十八史略論語は、僕も時々Business Cafeなどで紹介しますが、毎週土曜日に『絶版論文』を読み始めてからは、みんなの読解力や洞察力が、今まで以上に深くなってきているのを感じます。



先週は山本七平さん『人望の研究』(祥伝社文庫)を読み、その縁で久しぶりに氏の傑作『論語の読み方』(NONブック・祥伝社)を読みましたが、奥の深さに脱帽させられました。ウラ表紙の書評では、サントリー会長だった佐治敬三さんが絶賛の言葉を寄せていますが、それに応えるだけの圧巻の内容です。




さて、今日の一言は、その論語からの引用です。僕がこの言葉を知ったのは、学生時代にブラジルの日系移民の歴史を描いたドキュメンタリーで、松柏学園」という日本人学校を知ったからです。



学校名は昭和天皇の御製「降り積もる深雪(みゆき)に耐えて色変へぬ 松ぞ雄々しき人もかくあれ」から拝借して付けたそうですが、そこで同時に、「松柏」の由来が論語にあることを知りました。では、この言葉はどういう意味なのでしょうか。



読み方は、「歳(とし)寒うして、然る後に松柏の彫(しぼ)むに後るるを知る」です。直訳すれば、「寒くなってくると、松や柏が枯れずに残っていることが分かる」。では、真意を意訳してみましょう。



「雑木林の木々は、夏や秋は葉が青々としていて、どれがどの木なのか分からないが、冬になって寒くなり、他の木の葉が枯れてしまうと、初めてどれが松や柏の木だったかが分かる」。




このような意味から、よく企業経営では「不況の中でこそ、本物の企業が分かる」と引用されたり、スポーツの世界では「苦しい練習や逆境の中でこそ、誰が本物か分かる」と言われたりします。有名な言葉なので、誰しも一度くらいは聞いたことがあるでしょう。



今日この言葉を紹介したのは、これがもちろん、就職活動にも当てはまると思ったからです。僕は今年で、仕事の合間にFUNで学生さんのお手伝い係を始めて三年目です。振り返れば、いろんなことがありました。いろんな学生さんがいました。



みんな、入部した頃は控え目だったり威勢が良かったりして、僕は最初の印象だけでは人を判断しないため、ゆっくりと人格を知っていくようにしていますが、本人も不本意と思うような退部の仕方をした人のことを振り返ると、「冬でメッキが剥がれた」ような経緯が共通しています。これは、社会人も一緒です。




まだ就職活動が本格化する前の時期や、あるいは取材にも行っておらず、「ゲスト」としての態度で参加しているうちは、色々とサークルに要求も出せば不満も言い、就職活動に対してものんびりと構えています。あるいは、ただ意識が低いだけなのかもしれませんが、そういう順境では、その人の本当の姿は分からないものです。



それが、予想外の不採用や膨大な作業量、次々と迫る締め切り、連日続く面接などを迎えると…つまり「冬」が来ると…途端に枯れ、朽ち果ててしまう学生もいます。一方、そういう逆境になってこそ、余計に頑張る学生もいます。




逆境や失敗は誰にでも訪れるもので、その対処の仕方こそが個性であり、学生の流行り言葉で言えば「自分らしさ」です。逃げて「本当の自分」が見つかるのではなく、逃げるのが本当の自分です。つまり、松や柏に似た、別の木ですね。




ブラジルに渡った日系移民たちは、一○○年以上も不慣れな大地を開墾しては現地の人の信頼を獲得し、「異郷でも枯れない木になろう!」という松柏の精神を守り抜き、今では「ジァッポネーゼ・ガランチード(信頼できる日本人)」という言葉がポルトガル語の慣用句になるほど定着したそうです。



その日系移民の信頼をさらに高め、可能性を追求していくための子孫たちを育成する学校が、「松柏学園」だったというわけです。素晴らしい名付け方ですね。




これから冬が来ます。あなたがどんな人間か、それを知る絶好の時間が訪れようとしている今、松柏の姿に学び、風雪に耐えてなお、強く立ち向かう学生として、企業の方々を圧倒していきましょう!



あなたはただ耐え、立ち向かい、明るくあり続けるだけで目立ちます。それが冬のメリット。夏や秋に目立てなかった方も、こんな絶好の季節を味方にしないわけにはいきませんね。