■「内定への一言」バックナンバー編
「国を愛しようとしない者には、歴史は真の姿を見せない」(小林秀雄)
夜中、何気なく寄ったブックオフで、高校時代に世界史の先生に薦められて大変感動した「美を求める心」(「考えるヒント3」小林秀雄・文春文庫 所収)を見つけてしまいました…。
このエッセイは、「感動するとは、どういうことか」という話題に対して、深い深い洞察を記した名作です。現代人が「分かった」と言うのは、実は何も分かっていないということで、言葉がどのように感動を邪魔するかを、ライターやすみれの花を題材に、実に力強く説明しています。
僕はこのエッセイを読んで以来、物事を決して浅く見ようとせず、少なくとも「面白い」と思えるまで突き詰めようと、努力するようになりました。簡単に「分かった」と言わず、根源まで遡る知的努力を楽しもう、と決めたわけです。それで物事がよく分かったか、と言えば、そうとは限りません。
しかし、世の中の多くの物事を、よく味わうようになったのは事実です。あのエッセイから得た感動が、20代の僕の価値観形成にどれほど役立ったかは、計り知れないものがあります。それを、引越で紛失して、もう7、8年がたっていたところに、偶然見つけたのだから感激です。
本は主人のところに戻ってくるものですね。ということで、部員の皆さん、今週のBusiness Cafeでは、この絶版の名作「美を求める心」を読みますから、読みたい方は教えて下さいね。
さて、小林秀雄さんといえば、僕はとても好きな、というか尊敬している作家の筆頭ですが、その言葉に「国を愛しようとしない者には、歴史は真の姿を見せない」という一言があります。
現代の歴史教育は、「労働者」と化した教師が、徹底的に子供に「日本なんて大嫌い」と言うように仕向けるだけの集団的努力になり下がっていて、良心的で立派な先生も多数おられますが、多くの若者は、歴史教育の成功を示すかのように、
「歴史?暗記物は苦手なんです」
「歴史?私、カタカナ弱いんです」
「歴史?年号とか忘れました」
と、立派な成果を報告しています。それも、もう、何十年も。「歴史なんて、二度と学ぶか!」と子供に心底思わせるのが、日本の歴史教育の第一目標なので、これは目標を達成したと言うほかありません。
成人して、入試と無縁の状態になった時、二度と自分の国の歴史を学ぼうとしないよう、無邪気な少年・少女時代に「詰め込み」、「ぶつ切り」、「無感動」の歴史を教えるわけですね。
そんな知的ごまかしと、先人への冒涜を「間違っている」と批判し、徹底してその論理的誤りや知識不足を糾弾、論破したのが、小林秀雄さんと山本七平さんです。
経済界では、故・松下幸之助さんや京セラの稲盛和夫会長、キヤノン会長の御手洗富士夫さんが愛読者として知られ、松下さんは「自分の国を愛することができない者は、人間として成長できない」、御手洗さんは「愛国心なしに、世界に通用する製品は作れない」と言い切っています。
世界の最前線で活躍し、国際的に高い評価を受ける日本人ほど、「国際人なんて、馬鹿げている。立派な日本人になることが、世界に通用する唯一の道だ」と声を揃えています。
僕は先日、FUNインストラクターの大月舞さんに、「坂本龍馬と海援隊」(坂本藤良・講談社文庫)という本を薦められ、最近、毎晩読んでいます。本当に素晴らしい本で、大月さんのセンスに感心しました。
内容に触れれば分量が多くなるので、今回は触れませんが、このような良書を理解する際に、もし「日本が大好きだ」という気持ちがなければ、龍馬や数多くの英雄がなぜ、命をかけてまで奔走したのかは、絶対に分からないでしょう。
日本が大好きだという気持ちがなければ、おそらく…
「幕末の日本人って、熱かったみたいだね」とか、
「そりゃ、歴史を動かしたような人物だから当たり前」とか、
「だってさ、時代が時代だから」と、
まるで外国人のような「見当違いの意見」が残るだけでしょう。自分の国の行く末などどうでもいい、日本なんて、単に自分が偶然生まれた国だ、そういえば、海外旅行から帰ってきた時のみそ汁はおいしいな…そんな気持ちで歴史を読んでも、歴史は何一つ、感動や指針を与えることはありません。
従って、読者も決して成長しません。歴史を馬鹿にするものは、社会から馬鹿にされるだけのこと。小林秀雄さんは、そんな現代人の知的傲慢に警鐘を鳴らし続けた、偉大な作家でした。
さて、僕は「若者の職業教育と企業経営のあり方」に関心を持つ、一経営者です。経営や金融に関する本よりも、歴史や外交、戦争、古典に関しての方が、よっぽど読んだ本も知識も多く、自分でも学者なのか教師なのか、それとも社長なのかよく分からない時がありますが、バックボーンは歴史の知識だという自覚があります。
だから、学生さんが企業や仕事を見る時にも、小林秀雄さんの言葉を思い出し、こう考えてしまうわけです。
「世の役に立ちたいと願わない者には、仕事は真の姿を見せない」。
単なる「本歌取り」ですが、FUNで3年間学生のお手伝いをしてきて、やはりそうだという確信を、僕は日々深めています。FUNでは発足以来、呪文のように、「仕事とは、問題解決だ。仕事とは、最高の社会貢献であり、自己表現手段だ」と言い続けています。部員の方で、この言葉を聞いたことがない人は、一人もいないでしょう。
世の中には、無数の悩みや問題があり、多くの人がさらなる可能性や選択肢を求めて苦しんでいます。そして、それを解決するのが「仕事」です。「ありがとう」と言われるのは、問題を解決した時です。「ありがとう」と言われるその瞬間にこそ、その仕事と自分の存在意義があり、働く価値があります。
だから、「感謝が生まれる瞬間に共感できれば、君は正しい働き方ができる」と言い続け、それを身をもって味わってもらおうと、FUNでは企業取材をメインの活動にしています。
なぜなら、今の学生は、就職活動をする際に、「働きに行く」という顔より、「内定しに行く」という顔をしている人が多くいるからです。もし、今やっていることが「活動」なら、そこには成長が伴います。
しかし、それが単なる「手続き」なら、成長などは無縁。「早く終わってほしい」という無感動な日々が続くだけでしょう。そして、見事なくらい、落ちまくる。仕方ありません。それは、「仕事を馬鹿にした者」や「未来の自分を裏切った者」に対する、当たり前の制裁なのです。「内定」という、自分の問題の解決しか考えない人間が活躍する場など、この社会には存在しないのですから。
だから、僕がFUNに来て最初の年(2003年)は、毎週毎週、「皆さんは、活動と手続きの、どっちをやっているんですか?もし手続きなら、それは就活ではなく、就活ごっこですよ」と、何十回も言いました。
そして3年間、広告、証券、商社、リース、不動産、ディベロッパー、流通、出版、教育…ありとあらゆる業界・業種が「志望業界」になるよう、それぞれの仕事の「感動が生まれるポイント」を語り続けてきました。
それは、「社会で活躍したい!」、「自分にもできる!」という自覚を、心の底から持ってほしいからです。その自覚なしには、いくらSPIの点数が高かろうと、全く意味がないからです。僕は就活には興味がありません。手続きの手伝いなど、するつもりはありません。
ただ、「働きたい!」と思う向上心を形に変えるお手伝いを続けてきただけです。これからも、同じです。「社会で活躍したい!」、「世の役に立つ人になりたい!」と心から思った時、その仕事は学生の前に、正しい姿をもって迫ってきます。
だから、もし今まで、志望業界や志望企業が見つからなかった人は、だまされたと思って、「社会の役に立ちたい!」、「活躍したい!」と思いながら、説明会に行ってみて下さい。社会に存在する問題に対し、自分なりの思いやりを働かせ、社会で貢献していくことに意欲と期待を持つ人には、どんな仕事も、正しい姿を見せてくれます。
今月も残りわずか。「やりたいことが多すぎて、眠れない…」という3月を迎えたければ、全ての会社の説明会で、「感動が生まれる瞬間」と、「創業者の思い」を質問しましょう。