■「内定への一言」バックナンバー編


「長江は、所によっては西に緩く流れ、所によっては北に激しく流れる。

だが、全体としての流れは東に向かっている」(毛沢東)





僕の学生時代に、「ワイルドスワン」(講談社)という小説がベストセラーになりました。中国共産党が全国民に仕掛けた偏ったイデオロギー闘争に巻き込まれ、文化大革命の時代を力強く耐え抜いた一家の物語で、著者のユン・チアンさんは本書で一躍、「世界的作家」の仲間入りを果たしました。




そのチアン氏の最新作と言えば、英文資料の注釈だけで一四ページを超え、五○○人近くの関係者に十四年かけてインタビューを行い、イギリス人の夫とともに長年の推敲を繰り返して書き上げた「マオ 誰も知らない毛沢東」(講談社)ですよね。



既に世界でベストセラーになりそうな前評判の本書は、中国だけでは「発禁処分」にされています。なぜでしょうか。




それは、毛沢東が中国共産党設立メンバーではなかった、という新事実が解明されている、中国政府が自国民を七○○○万人殺害した事実が記されている、毛沢東が日本軍に助力を頼み、日本の支援に感謝したという記録が明らかにされている、という本書の「告発性」のためです。




本書の発刊を認めたら、中国政府が世界中に隠し続けてきた真実や、つき続けてきたウソが国民の目にさらされることになります。



既に中国政府は国民の「自由」へのエネルギーを押さえかねており、携帯電話の電波はいつでも政府が止められるようになっているし、インターネットでも自由主義的概念を想起させる言葉では検索ができないようになっています。




つまり、政府が進んで情報の検閲を行っているため、日本では毎週報道されている炭鉱爆発事故や河川の汚染、有害物質の海洋投棄なども、中国国内のメディアでは扱われないそうです。




しかし、隠せば隠すほど知りたくなるのは人間の常。これまで政府は「逮捕」、「業務停止処分」、「営業権剥奪」などの強行手法で中国国民の「知る権利」を奪ってきましたが、モグラ叩きももはやこれまで。政府が叩けないほどの巨大モグラが、こともあろうにアメリカに住む自国民の作家の手によって作られたのですから。




毛沢東は戦争の達人だと思います。その言葉に「長江は所によっては西に緩く流れ、所によっては北に激しく流れる。だが、全体は東に向かっている」とあります。



これは「大局的な流れを分かっておけば、一時的・部分的な状態・現象で判断を左右されない」という戦略思想の例え話ですが、事業や就活にも当てはまります。



元々どうなろうと思って取った行動なのか、今は本来何をする時なのか「西東」の流れを踏まえておけば、焦りや不安も防げます。「木を見て森を見ず」は避けたいところですね。