■「内定への一言」バックナンバー編


「碎啄同機(そったくどうき)」 (禅語)




「コミュニケーションとは、なんと奥が深く、面白いのか」との感想を、今週の面接塾に参加した多くの学生さんから聞きました。ただの「面接対策」と思って参加した方は、内容があまりに予想と違うのに、最初は驚いたことでしょう。




やるからにはぜひ、一つ一つの駆け引きを心から楽しみ、成長のスリルを味わいながら、面接や説明会のたびに失敗と達成を積み重ねましょう。そして、「自分の実力」を心ゆくまで味わいながら、感動の内定を勝ち取って、その先の社会人生活にもつなげていきましょう



就活に役立つことは、人生の全てに役立たねばなりません。



・TOEICが500点以下でも、800点の人に勝てる話し方

・バイト、サークル、ゼミ、旅行これといった話題がない人でも、「キラキラの経歴」を持った学生に勝てる話し方

・何気ない「フツーのネタ」を、相手に「すごいね!」と感じさせる伝え方



世の中には、こんな信じられないことを可能にしてしまうテクニックが、存在するのです。それが「トップセールスマン」と呼ばれる会話のプロたち。彼らの考えは、通常の人々が考える「コミュニケーション」とは、全く逆です。それも、驚くほど全てが逆です。




何を扱っても気持ちよく売り込み、相手と共に成功する、ごく一握りのトップスターたちの考えを象徴するキーワードとして考えられるのが、面接塾のテキスト(第4回P16)にも紹介している啄同機」ではないでしょうか。。




これは、教育や悟りの本質を表す禅の言葉で、鎌倉時代、ある高僧が弟子に話した例え話が由来のようです。にわとりの親子に学んだその話とは



」とは、ヒナが卵の内側から、殻を割ろうとして殻をつつく動作。

「啄」とは、親鳥が卵の外側から、殻を割ろうとして殻をつつく動作。



ヒナは、親鳥が卵に宿した新しい命です。親元で誕生までの時間を過ごし、いずれは生まれる時、つまり、殻を破って外の世界に飛び出す時を迎えます。生まれる時、ヒナは小さな体で内側から殻をつつきます。生命誕生の瞬間だけあって、小さなひよこの努力は、健気なほど一途です。



しかし卵の殻は、小さなヒナが自力で割れるほど、やわな相手ではありません。誕生には、親鳥の力添えが必要なのです。




もし、親鳥がヒナの努力を見落とし、「まだ出てこないだろう」と思って別のことを考えていると。ヒナはつつく作業に全力を注ぐも、外部から必要な助力を得られず、力尽きて死んでしまいます。タイミングが合わなかった努力()は、「ヒナの死」という悲しい結果を招きます。




また、外にいる親がせっかちで、「まだ生まれないのか」とセカセカしていると、ヒナが生まれるのに十分な状態にならないまま、外から殻をつつき(啄)、ヒナごと殻を破ってしまいます。必要とされるタイミングを先取りしても、やはり結果は同じく、悲しいものになってしまいます。




では、ヒナが孵化し、かわいいひよこが誕生するベストのタイミングとは、どういう時なのでしょうか?それが啄同機」です。




今まさに生まれんとするヒナが、内側から殻をつつき、それに備えていた親鳥が、外から必要十分な力添えを行うことで、ヒナが外に出るのに十分な穴が開き、新しい命が誕生するというタイミングです。「機を同じくして行われると啄」の動作が相乗効果を生み、感動的な瞬間をもたらすわけです。




鎌倉時代の高僧は、弟子に「悟りとは、いかなるものですか」と問われた時、日頃から観察していたにわとりの親子の姿に学び、「それはあたかも、啄同機のようなものである」と伝えたとされています。



弟子の「成長したい!」という情熱()を見逃さず、ベストのタイミングで師匠が「伝えなければ!」と教えを施し(啄)、師弟の熱意や学問的探究心が、新たな段階へと発展していく様子を、わが日本の先哲は、誰もが知る風景を例に説明したわけですね。実に分かりやすく、感動的な話です。




この話は、今では幻の一冊となっているforFUN2003年第3号の『今月の一言』で紹介した話です。FUNは、学生の「感動とともに成長したい!」という情熱()と、社会人の「有望な若者にチャンスを届けたい!」という情熱(啄)がぶつかりあい、学生の新たな可能性を創造するサークルだ!という、創設者の安田光良君(当時法学部4年)の思いを読者に届けたのでした。




」を見捨て、若者を廃人にしてしまう教師と、「啄」に応えず、狭い世界に引きこもる若者。社会の到るところで、逆の「啄同機」が毎日行われています。そんな状況を見て、「内定したくらいでなぜ遊べるのか?悩み、苦しむ後輩たちを見捨てて卒業していいのか?」と思い立った一人の若者が、ゼロどころかマイナスから、今のFUNを作り上げました。




安田君もまた、自らの情熱を「」に、歴史上の偉人の生き様を「啄」にし、偉大な卒啄同機を達成した学生です。その安田君の「啄」に応え、後に続けと全力でを継続してきたのが、大月さん(現在FUNインストラクター)と牛尾さん(証券会社勤務)でした。




FUNもまた、啄同機が到る所で、毎日起こっているサークルです。そして、実は面接塾では、一人の人間と向かい合う時に生じる、あらゆるケースの「」と「啄」のタイミングの事例を研究し、人間心理の本質を見抜き、ベストの状態で「自分」という情報を伝達する訓練をしていたんですね。



あららタネを明かしてしまいました。




何回同じ講義を聞いても、何回同じ相手と模擬営業・模擬面接をしても、次々に課題を発見し、失敗を重ねても次が楽しみになってくるのは、コミュニケーションの本質に根ざした内容を勉強しているから、というわけでした。



全4回を学んだ方は、一通り受講してみて、自分が日頃のコミュニケーションで、「いかに何も考えていなかったか」を実感したことでしょう。だから、面接塾は一度申し込めば、何度でも受講可能にしています。




知らなかったことが分かるのが最初の成長。次は知っていることを増やし、できることを増やし、達成を増やし、この就活の時期で絶大な自信を手に入れてしまいましょう!他の人には「手品」に見えるかもしれないノウハウも、ひとたびその極意(約35個ありますね)を知れば、「そうなって当然」と納得できるものです。



みんなができるまで、僕は責任を持って、何回でも教えます。「」と「啄」の一致という感動の瞬間を、みんなで共有したいからです。




戦後の日本人論の大家で、「山本日本学」と呼ばれる深遠な評論活動を行った故・山本七平さんは、「手品は、仕掛けを知らない者が見れば、なぜそうなるのか不思議である。しかし、仕掛けを知る者が見れば、そうならなければ不思議である」という有名な一文をもって、「日本文化」という歴史の手品を解明しています。



受講された皆さんは、テコのように、小さな力で人間心理を大きく動かす「手品」が存在すること、そして、それは、普通の学生でも十分に理解できることが、よく分かったことでしょう。




さあ、これからは手品を練習し、それを「当たり前に使いこなせる習慣」にまで高める時期です。多くの企業の担当者が、皆さんを本物のコミュニケーターに育て上げるため、多種多様なチャレンジを挑んできますから、一つ一つの質問とハプニングに感謝しながら、楽しく経験を積み重ねていきましょう。



今日は鎌倉時代の「禅」の逸話から、コミュニケーションの極意について考えてみました。