■「内定への一言」バックナンバー編
「コミュニケーションは、逆算すれば勝てる」
広告やマーケティングの世界でとても有名な、「AIDMAの法則」というものがあります。これは、「人が何かを認識し、行動(購買)を起こすまでのプロセス」に共通するポイントを順番に並べたもので、私たちが毎日毎時間、意識に刷り込まれている「広告」や「情報」は、全てこの順番に従っている、と言えるほどのものです。何の意味・順番かというと・・・
Attention ⇒興味をひきつける
Interest ⇒関心を持ってもらう
Desire ⇒欲求を喚起する
Memorize ⇒記憶してもらう
Action ⇒購入・購買
という意味です。二つほど例をご紹介すると・・・
■スーパーに買い物に行った場合
A 「特売」や「割引」の文字を見つけた
I 「何が特売(割引)なんだろう」と確かめたくなった
D 「これは買っておいた方がいい」と感じた
M 「よし、買おう」と計画に入れた
A レジに並んだ
■テレビで携帯電話のCMを見た場合
A 新しく、珍しい機種のCMが流れてきた
I 「何なのだろう」と確かめたくなった
D 「カッコいい(便利そう)」と手に入れたくなった
M 「よし、次はこれに機種変更だ」と思った
A 携帯ショップに向かった
といったものです。
つまり、広告代理店やメーカーは、ユーザー(消費者)の心理を逆読みしてシナリオを描き、そのシナリオ通りに相手が動いてくれるよう、脚本を書き、情報を提供しているのです。要するに、「計算通り」なのです。ちなみに、「衝動買い」とは、AIDMAのプロセスが極めて短時間のうちに処理され、買ってしまう動作のことです。
普段の友達同士の会話では、いちいち逆算などしないでしょう。相手が言った言葉に対し、それに対応することを言って、時には「何だろうね」とか、時には「そやねぇ」と相づちを打ちながら、のんびりと続ける会話も、楽しいものです。
しかし、ビジネスにおいて行われるコミュニケーションには、目的があります。その目的とは、「期待する行動を取ってもらう」こと。つまり、「買う」、「見る」、「自分と組む」、「選んでもらう」といった、相手と自分を関連付ける目的を果たすため、全ての情報は計画的に発信され、並べられているのです。
昔、好きな人に告白したことはありますか?そういう経験がある人はおそらく、「なるようになる!」とか「勢いで言ってしまえ!」と思うよりも、「自分と付き合うためには、どういうことを話したらいいんだろう」と悩んだこともあるでしょう(僕はじっと考える方でした)。
告白は、営業と似ています。つまり、広告と似ているということです。つまり、目指す結果は「楽しかった」といった、友達同士の会話において得られる抽象的なものよりも、「自分と付き合ってほしい」、「当社の製品を買ってほしい」、「当社のサービスを利用してほしい」といった、明確なものです。
では、面接はどうでしょうか?面接で「笑えてよかった」とか「空き時間が潰せてよかった」という結果を求める人はいないでしょう。つまり、行き当たりばったりでは、最初から失敗しに行っているようなもの。
就職活動は「最初の仕事」です。学生生活で「最後のイベント」ではありません。よって、目指す結果があります。それは、「自分を社員候補として認めてもらい、選考の枠に加えてもらうこと」ですよね。
ならば、あなたが目指す会社にも、広告のように目標設定をしてはどうでしょうか。
A 「会ってみたい」と思ってもらう
I 「面白そうだ、話したい」と思ってもらう
D 「この若者と働きたい」と思ってもらう
M 「ぜひわが社に欲しい」と思ってもらう
A 採用する(内定を与える)
というふうに。
あなたが持っている情報、相手に送っている情報は、相手の理解度や気持ちに対する配慮に基いて、コンパクトに整理されていますか?もし整理できていないと思うなら、AIDMAそれぞれの段階に、あなたが日頃伝えていることを当てはめ、その比率や前後関係をまとめてみるとよいでしょう。
テレビCMは自然に放送されていますが、実は何百回も言葉の修正や順序の入れ替えが行われて、初めて十五秒の作品になります。なぜかというと、各種の調査で「人間は新たに認識した情報への興味を、平均十七秒しか持続させない」から、だそうです。つまり、「何だろう?と思っていても、十七秒以上聞いて「価値なさそう」と思ったら、自ら理解を遮断してしまうらしいのです。
だったらあなたのエントリーシートや面接での自己PRも、何度も試行錯誤を経て、相手が順序良く、かつ段階的にあなたに対する理解と共感を深めてくれるよう、簡潔に整理して行うべきですよね。もちろん、熱意や礼儀がこのような配慮以上に大事なことは、言うまでもありません。
しかし、「頑張っているのに成果が出ない」という状態は、改善策が分からなくなって落ち込んでしまい、始末が悪いものです。そういう方は、おそらく表現方法や伝達の順序に問題があるか、相手の理解や共感を無視して、「とにかく準備してきたことを言おう」と焦っているか、どちらかでしょう。
コミュニケーションとは、相手との共同作業です。だから、相手にどう思ってほしいか、相手が自分に対してどういう状態になれば成功かは、先に鮮明にイメージしておく必要があります。そういう目的が分かっていれば、焦ったり不安になったりすることはありません。
「なりゆき任せ」は、ポップスの歌詞としてはカッコよくても、実際の交渉や商談では、情報の乱雑な羅列に過ぎません。成功したイメージをいつも描き、状況に即して千変万化の対応ができるよう、どんな会話も楽しみましょう。
友達があなたに話し掛けるときは、「何を考えているんだろう」と友達の心を想像し、理解を深めるために耳を傾けましょう。そういう心掛けがあるだけで、どんな人と話すのも楽しくなります。