■「内定への一言」バックナンバー編
「成功した交渉に敗者はいない」(G・ニーレンバーグ)
最近は「読者プレゼント」をよくご案内していますが、毎回申し込んで下さる方が数人いて、とても嬉しいです。ノウハウの習得だけではなく、就活の際に話す内容の補強材料としても、ぜひ活用して下さいね。
また、ある学生さんからは短い近況も添えられていて、「就活はこれからが本番です」と書かれていました。別に内定が終わりじゃないし、入社した時に自分の志望動機が本物だったか、少し分かり始めるものです。
本メルマガでは、開始時期や選考状況によらず、少しでも学生さんに役立つと思われる情報を配信する方針に変わりはないので、今後もお役に立てればと思っています。
さて、FUNで「人を動かすスピーチ」と題し、話術について話したのは、2004年10月のBusiness Cafeが最初でした。それが、2005年1月に「ミニ・スピーチ塾」となり、10月には「スピーチ塾」に発展し、2006年の2月から内容を就活用にアレンジし、「FUN面接塾」として提供し、先月をもって終了しました。その中で、一貫して伝えている考え方があります。
僕自身、海外勤務や講演、講義、プレゼン、営業などで何千人もの人と話してきて、また、スピーチや交渉、心理学関係の本も200冊以上は読んできましたが、何を学んでも、いつも落ち着く「基本」があります。それが、「交渉術」(G・ニーレンバーグ/創元社)の「まえがき」に書かれている、「成功した交渉に敗者はいない」という言葉です。
営業やプレゼン、面接と聞くと、すぐに「セールストーク」や「上手な話し方」というノウハウを連想し、「説得」、「圧倒」、「屈服」、「説明」といった過程につなげて考えてしまいがちです。
しかし本書は、「そもそも、そういう考え方こそ間違いの根源だ」とし、人間関係の基本を平明に説いています。熱い語り方、強引な説得、心理的圧迫、利害と打算、見え透いた謙譲、誇張と反復…などは、「話の何たるかを知らぬ者」が広げた悪習慣だということが、読後はよく分かります。
面接塾に参加された方は…多くは第一志望に内定して、もう就活はしていないかもしれませんが、講義で何度も何度も繰り返した言葉を、いくらかは覚えておられるでしょう。忘れたくても忘れられないくらい繰り返したのは…
・PRとは「一方的伝達」ではなく、「Public Relation(相手との関連付け)」だ。
・「共有できること」から先に話そう。
・「モノ」ではなく「コト」を語ろう。
・情報は「与えるもの」ではなく、「欲しがらせるもの」だ。
といったことなど、およそ50項目です。
その中でも、学生さんから特に人気が高く、
「またエントリーシートが通過してしまいました」
「最終面接がバッティングしてしまいました」
「内定辞退って、大変なんですね」
と多くの苦情を頂いたのが、「共有できることから先に話そう」です。これは、面接塾では「情報の重層化」として説明しました。第②回の(1)でしたね。 新卒の就職では今でも「ド素人」の僕が、
・私はずっと夢見ていた留学を果たし、異文化と触れ合いました!
・私は昔から商売に興味があって、商社に興味を持ってきました!
・私は好奇心旺盛で、チャレンジ精神なら人には負けません!
といったパターンで語られる、多くの学生さんの志望動機を聞いて、何よりすぐに気付いたのは、「おまえのその話し方こそ異文化だ」、「自分、自分とうるさいなぁ」、「そんなの知るか。だから何?」ということでした。聞いていてイライラし、時間が無駄に思えてきました。なので、とりあえず「就職課にだけは、絶対に行かないように」とだけ忠告したのも、懐かしい思い出です。
以来3年間、FUNのお手伝い係を担当しながら、学生のことも大学のことも全く分かりませんが、「この話し方だけは、どうにかせんといかんなぁ」と思って、「順番」については力を入れている次第です。
では、「情報の重層化」とは、一体何なのでしょうか。これは、僕がある科学の本を読んだ際、「レーザー光線」ができる過程を知って、「こりゃ、スピーチと一緒やんか」と思って名付けたものです。
こんな言葉が実際にあるかどうかは、知りません。なくてもどうでもいいことです。ただ、そういう言葉を使った方が、短くて実感しやすいと思ったので、毎度のことながら、我流の造語を乱発して、学生さんの思考時間を節約しています。
では、具体的に面接の事例に置き換えて、考えてみましょう。「情報の配列の際は、順番が大事だ」というのは、面接、特に志望動機には、以下の2通りの話し方があるからです。
(1)小→大
(2)大→小
…「何の意味だ?」と思った方のために、さらに分解してみます。
(1)自分→相手(共有しがたい要素から、共有しやすい要素に展開)
(2)相手→自分(共有しやすい要素から、共有しがたい要素に展開)
ということです。
上記を項目別・チャート式に表すと、以下のようになります。
(1)自分→仕事→企業→業界→社会
(2)社会→業界→企業→仕事→自分
です。
別に、全ての面接でこの5項目全てに触れるのが重要、という意味ではありません。展開の順番において、「共有しやすい要素から先に切り出しているか」が大事なだけです。例えば、面接塾でもよく使った「人材派遣会社のコーディネーター」の例で考えてみます。以下の①~⑤の順番で語る面接を想像してみて下さいね。
◆「1型」の面接
①私は多くの人と出会えて、日本を元気にする仕事を希望しています。
②そんな私に合う仕事は、人と人をつなぐ仕事だと思いました。
③人材派遣会社では、コーディネーターが派遣先と求職者をつなぎ、新たな可能性を模索しています。
④派遣業界は、これから中高年の退職者にもチャンスを提供できる業界です。
⑤今の日本社会には、知識と経験はあっても、活躍の場がない中高年の方が多くおられるので、私はこのような方のお役に立ちたいです。
…さて、結果やいかに?
【このタイプの面接で、面接担当者が持つ感想】
・あんたが日本を元気にしたいかどうかは、うちには関係ない。
・勝手に「人と人をつなぐ仕事が合っている」と言われても、意味不明だ。
・派遣会社が人と会社をつないでいるなんて、当たり前だろ。
・別に中高年だけがマーケットじゃないんだよ。
・だったら、他の業界・会社でもいいんじゃないの?
…と、極めてシビアな感想で、これは「伝わったかどうか」以前の問題です。さらに、これで「不採用」となった学生さんが、「やっぱり熱意が足りないのね!」、「メイクが合ってなかった」、「業界研究と自己分析が足りなかった」とか言っていたら、これはもう、「パロディ的悲劇」です。
きっと、「自己PR」という言葉を、自分で都合よく解釈したか、頭の中にあった原稿を「忘れないうちに読み上げてしまいたい」と、相手の顔を見ずに苦しい笑顔で面接に臨んでしまったんでしょう。
間違った考え方からは、正しい対策は生まれず、このような学生さんは、延々と同様のパターンの面接を繰り返し、最後は「やっぱり不景気だ」とか言って、公務員試験か何かに方向転換するだけです。
そして迎える、「卒業式」ではない「失業式」…かわいそうに。
というパターンを、3年前の冬の模擬面接を見てすぐに察したので、FUNに限っては、このような「ミス以前のミス」はありません。受かる志望動機は、以下のように「順番が逆」です。
◆「2型」の面接
①これからの日本社会を考える時、豊かな知識と経験を持つ中高年の力を経済に生かすかどうかが未来を変えると、私は感じています。
②そのような方々が、活躍の舞台として選ぶに最もふさわしい場を提供できる業界を探した結果、それは人材派遣業界だと分かりました。
③御社では、他社に先駆けて中高年向け派遣サービスを開始し、先駆的事例と信頼がバランスよく築けており、今後の可能性を感じました。
④その信頼の原因は、御社のコーディネート能力にあると、私は考えています。
⑤私は多くの人と出会い、人と人をつないで、日本を元気にする仕事がしたいと望んできました。
…さて、結果やいかに?
【このタイプの面接で、面接担当者が持つ感想】
・そうそう、我が社もまさに、日本経済を左右するのは中高年の潜在能力の活用だと思ってるんだよ。
・派遣業界は、君が言う通り、全ての人にチャンスを提供する業界だよ。
・そうそう、うちの努力とビジョンを、よく分かってるね。
・そう、コーディネートこそ信頼の基盤なんだよ。苦労したもんなぁ…ありがとう、分かってくれて。
・君のような人が「人と人をつなぐ」ことが好きだなんて、ぜひ一緒に働こうじゃないか。
…という感じです。
おかしいですよね。話している内容は、さほど変わりはないのに。なぜ、こういう逆転が起こってしまうんでしょうか。
そのヒントこそ、「重層化」にあります。(2)型の面接では、「社会→業界」というふうに、まず相手と「共有できる要素」から切り出し、相手の心の中で「yes」を積み重ねているのに、気付きましたか?
そして、それらの前提(広域情報)を踏まえた上で「御社(会社)」を切り出すと、会社の位置付けも同時に伝わり、相手は「そう!」と感じずにはいられなくなります。
それが伝わっているのが分かったら、相手の中にある「仕事」に着目し、その意義と必要性を語れば、面接官は、あなたがどんなに単純で当たり前のことを話しても、「よく分かっているね」と思ってしまうでしょう。最後に「私」を語ります。「私」について語っていることは、(1)でも(2)でも「多くの人と出会い、人と人をつないで、日本を元気にする仕事がしたい」というだけのこと。
内容としては、中学生が夏休みの作文で書きそうなくらい、恐ろしくシンプルで抽象的です。しかし、その「シンプルで抽象的な内容」を、「自分、自分」と焦って最初に切り出すと、「だから何?」と思われてしまいます。当然です。
相手は初めて会うあなたのことなど知らないのに、いきなり「自分」について語られても、反応のしようがないのです。つまり、「yes」と言いようがない。こうして始まったからには、最後の最後まで、味気なく反応の薄い時間が流れるばかり。
「先に話した要素」は、「後に出てくる要素(情報)」に何の影響も与えないばかりか、「目的なき展開・集中の分断・情報の相互無関係」ばかりが目立ち、「情報なき不採用」の通知が届くだけです。それが、「共有できる要素」から切り出し、「広い要素」から「狭い要素」にフォーカスしていく順番で話すと…最初に切り出した「社会」についての認識が、次に来る「業界」の捉え方に影響します。
さらに、「業界展望」は「会社の把握」に良い影響を与え、必然的に「仕事」にも肯定的な余韻を残します。よって、最後に話す「自分」についての情報が、いかにシンプルで抽象的で、当たり前のことしか語っていなくても、その「私の情報」は、既に「社会・業界・会社・仕事」に対する前提認識を踏まえた上で語られるので、「そうなのか!ぜひ来てくれ」と思ってしまう、というわけですね。
赤いフィルムは、それだけなら「赤」にしか見えません。しかし、その上に「青いフィルム」を置くと、「紫」に見えます。さらに「緑のフィルム」を置くと、「黒」に近い色に見えます。それぞれは別の色でも、重なると(重層化されると)、違った色に変わっていくのは、誰でも分かるでしょう。
だから、いくつかの階層(レイヤー)を重ねて、「相手が好きな色」になったら、最後に「透明(自分)」というフィルムを置けばいいのです。実に簡単な原理です。伝わらないのは、最初から「透明」を置いてしまって、次の色に何の影響も作用も及ぼさないからなんですね。
話す順番って、大事ですね。