■「内定への一言」バックナンバー編
「基準の違いが、結果の違い」(安田隆夫)
「ドンドンドン、ドンキ~、ドンキ、ホ~テ~」と言えば、流通業界の風雲児として何かと話題の「ドン・キホーテ」のテーマソングです。FUNも、2003年4月の連休明けに各大学で部員募集のビラを配り始めた時、西南大ではドンキ前で配りました。配った学生さんたちは、それこそ一晩中、ドンキの歌が頭の中で鳴り響いていたそうです。
そんな「激安の殿堂」を創業したのが安田隆夫さんです。4度の倒産を経験し、それでも「選択権は消費者にある。消費者が心から満足できる流通サービスを作ってみせる!」と、同社を強力なリーダーシップで導いてきました。
社内では、新人社員のアイデアも、面白そうなら「よし、やってみろ」と即決でゴーサインを出し、企画が当たれば給料も倍増。かつての上司が部下になったり、かつての部下が上司になったりと、まさに「下剋上」の社風だと言われています。
その同社を率いる安田社長の口癖が、今日の一言「基準の違いが結果の違い」です。人が行動する際、結果に最も大きな影響を及ぼすのは、テクニックや経験ではなく、「その人の当たり前(自己認識や仕事の定義)」だとし、「私は○○な人間だ」というセルフイメージの絶えざる向上を社員に呼びかけているそうです。
優れたリーダーや、結果を出すスポーツ選手、アーティストを見て、多くの人が「元々他人とは違うんだ」と思いがちですが、そういう才能や実力を引き出したのは、疑いなく「当たり前のレベル」が高いことです。
例えば、もう3年も前に紹介したメルマガ第125号の話も、そうですよね。「当たり前のレベル」が高ければ、想像、判断、行動、結果の全てが変わるということがよく分かる話だと思います。今日はもう一つ、FUNが発足して間もない頃、学生さんに話していた小話をご紹介することにします。
3年前はよく面接前の学生さんに話していましたが、今ではFUNも部員が60名を超え、メルマガ読者も450人を超え、とても一人一人に会って話すわけにもいかないので。
さて、皆さんは「ラーメン」は好きですか?僕は福岡県民でありながら、それほど食べませんが…。
数十年前、ある映画の制作に当たって、主演俳優の人選に悩んでいる監督さんがいました。
絞りに絞って、候補は2人に決まりました。仮に、「鉄矢君と健さん」ということにしておきましょう。この2人のうち、どちらかを主演にすれば、この映画は成功しそうだ、というイメージが監督の頭の中に描けました。
さて、どっちにするか?
監督は、実際にある場面を演じさせることで、2人のうち1人を決定することに決めました。それは、「ラーメンを食べるシーンを撮影してみて、おいしそうに食べた方を採用する」という試験です。
そう、今で言う「面接」と何ら変わりません。監督は鉄矢君と健さんの2人を呼び、告げました。
「君たちのうち1人を主演俳優にする。ついては、2日後にラーメンを食べるシーンを撮影し、おいしそうに食べた方を採用するから、よろしく。では2日後に会おう」
「ラーメンをおいしそうに食べた方が主演?ユニークな提案だが、これこそ俳優の力量を公平に競わせる試験だ」と考えた2人は、早速準備に取り掛かりました。
期限は2日後。そこで、全てが決まります。
鉄矢君はその日から、友人・知人を呼び集め、いくつものラーメン屋に行き、たくさんのラーメンを食べては、表情、食べ方、熱意、照明の当たり具合、食べ終わった後の表情、行儀、座り方…ありとあらゆる「選考対象となりうるであろう動作」を練習しました。
さすが、プロの俳優。
友達が「おいしそうに見えるよ」と言っても、簡単には妥協せず、「じゃあ、この食べ方はどうだ?」、「照明はこっちの方が良くないか?」、「食べ終わった後はこういう顔ではどうだ?」と、寸分の手抜きも許しません。
もう、何杯食べたことか。
常人なら、すでに飽きて味がしなくなるような練習をしても、主演の座を射止めようとする鉄矢君の熱意は冷めませんでした。さらに、鉄矢君の練習ぶりは、翌日も変わりませんでした。この練習量と気迫なら、主演になれるかもしれません。
一方、健さんは何をしたのか?
健さんは監督に、「2日後にラーメンを食べるシーンを撮影してから、主演を決める」と告げられた瞬間から、「よし!じゃあ撮影まで、オレは何も食べないぞ」と決意しました。
夕方、おなかが鳴っても、「いいや、食べん!」。
夜に目が回りそうになっても、「いいや、食べん!」
夜中に食べ物のにおいがしても、「いいや、食べん!」
翌日も健さんは、そんな頑固さで断食を決行し、撮影の時を待ちました。
そして迎えた、撮影当日。
俳優の面子にかけて、これ以上はできないと思うような練習をした鉄矢君と、自ら空腹を決行した健さんがぶつかりました。鉄矢君には、一部の隙もなく、心の準備もバッチリです。
さぁ、撮影スタート!
…しかし、順調に食べ始めたはずの鉄矢君は、健さんのラーメンを食べる形相、気迫、熱意に度肝を抜かれます。
「何だ、このエネルギーは…?」。そう思って見ているうちに、健さんはラーメンを平らげてしまいました。
結果は「健さんの勝ち」。主演俳優の座は、武田鉄矢ではなく、高倉健に決定しました。同じ福岡県出身の俳優が争った結果、軍配は健さんに上がったのです。勝因は何だったのでしょうか?
おそらく、2日間の断食を決行した健さんには、「ラーメン」とは、「おいしく見えるように食べる食事」ではなく、何よりもまず、「食べ物」、「食い物」だったはずです。
おいしいとか、おいしくないとか、そういう理屈は抜きにして、ラーメンは「食べないと死ぬ」、「飢えから救ってくれる食糧」、「3日近く、待ちに待った待望の食べ物」となっていたのです。
「食べずにいられるか!」と腹の底から渇望が湧き上がり、待ちに待った食事を目の前にした時の勢いとは、どういうものでしょうか。
おそらく、何度も食べ方を練習し、「テクニック」の面でいくらか上達したくらいの力量では、到底太刀打ちできないようなエネルギー、迫力に満ちていたはずです。つまり、この2人の勝負は、オーディションをする必要もなく、既に監督が試験内容を告げた瞬間に描いた「基準」の違いで、決まってしまっていたのです。
…という話を、3年前のFUNでは、よく紹介していました。1年以上いる部員の方なら、全員知っているでしょう。毎年この時期、2月を迎え、学生さんが「小手先のテクニック」や「その場しのぎの答え方」で模擬面接に望むと、表向きは「仕事をしたそうな顔」に見えます。しかし、分かる人には分かります。それは「食い方の練習をしてきたに過ぎない」ということが。
表情、目の光、声の調子、言葉遣い、言葉の繰り出し方…そういうものを見ると、「仕事」よりは、明らかに「内定」に意識が集中しているのが、手に取るように見破れます。だから毎年、「言ってることは達者で、まぁ、よく調べてる方だけど、ホントに働きたいの?」と聞くことにしています。答えに詰まる学生さんは、おそらく「受かりたいだけ」だったのでしょう。
そういう態度は、学生の中では「よくできてたよ」と言われても、僕たち経営者から見れば「かわいい芝居」なので、再度、そこで働く意義や目標を語り合い、「仕事や夢に対する食欲」を最大限に高めるよう、一緒に一から勉強するようにしています。
基準が低い人間が直前にどれだけ頑張ろうと、恥の上塗りしかできないからです。基準を上げれば、ちょっとくらいの上達で安心しないからです。基準を高く保てれば、並みの学生が「きつい」、「だるい」と言うことが、楽しく思えてくるからです。テクニックも、ある程度は大事でしょう。立ち居振る舞いやあいさつが綺麗だと、印象もよくなります。
しかしそれは、「働きたい」、「活躍したい」という熱意が感じられてこそ、です。
これから続々と選考が始まります。おそらく、色々な経験をするでしょう。同じ学生だから、経験の内容にそう大差はありません。情報でも、東京の学生が有利というわけでもない時代です。
だからこそ、差は「当たり前のレベル」で開く、ということですね。受け止め方、考え方が、皆さんが得る情報や経験の価値を決めます。ぜひ自分の基準を上げ、行動、習慣、結果に良い影響を与えていきましょう。今日は、「基準の違い」について考えてみました。