■「内定への一言」バックナンバー編


「その気になれば、今いる場所はテーマパークだ」


天神の「アクロス福岡」といえば、一昨年、FUNがダイヤモンドさんの企画で合同説明会のイベントを行った場所です。現在はインストラクターとして活躍する大月さん、証券会社で活躍する牛尾さんは、その時、ともに卒業前。二人とも独自のテーマを決めてミニ講演を行い、これから就活を迎える後輩たちに希望を届けた、素晴らしい時間でした。


入部した頃は、企業の名前もパソコンの使い方もほとんど知らなかった二人も、今では社会人として仕事の基本を学びつつ、不慣れながらも日々自分の目標に挑戦し、試行錯誤を重ねながら成長しています。


十分な経験や知識がなくても果敢に挑戦し、素直な気持ちで失敗と改善を繰り返している卒業生の皆さんを見ると、「自分にもこういう純粋な頃があったなぁ」と反省することもあります。


二人とも、卒業時にはスピーチもだいぶうまくなって、今では後輩の前で、一通りのテーマを持った話もできるようになりました。


また、今のFUNを引っ張る西南4年のI君は、最初にFUNのイベントに来たのが、このアクロスでした。そして、イベントをビデオで撮影していた九産4年Y君の髪の赤かったこと。さらに、I君とY君が同じ会社に内定をもらうなんてことは、想像もできなかったことです。世の中、本当に不思議な出来事が多いものです。


きっと、大月さんや牛尾さん、I君、Y君がアクロスの近くを通る時は、そんな思い出を振り返っているのかもしれません(聞いたことはありませんが)。


しかし、僕がアクロスの近くを通る時は、僕なりの思い出や、郷土史のことを考えて物思いに耽ります。


明治通りを挟んでアクロスの向かいにある「水鏡天満宮」は、「天神」という地名の由来がある神社です。天神から中洲に行く時、那珂川の手前に小さな川があるのはご存知でしょうか。河川名を見ると「薬院新川」と書いてあります。今ではゴミが浮かぶ深緑色の川ですが、実はこの場所こそ、その昔、菅原道真公が京都から流されて博多に漂着し、最初に踏んだ土地なのです。


漢詩や政治で優れた素質を発揮し、皇室を心から慕って忠義を尽くした道真公は、その才能に嫉妬した藤原時平の讒言で、遠く離れた太宰府に左遷されることになりました。見ず知らずの土地で初めて見た美しい川に顔を映し、「ああ、自分はなんとやつれたのだろうか」とお嘆きになったという故事から、この川のほとりの神社は「水鏡天満宮」と名付けられたわけです。顔がはっきり映るくらい、平安時代の川はきれいだったんですね。まるで鏡のように。

のち、学問の神様である「天神様」が到着された場所ということで、この一帯を「天神」という名で呼ぶようになり、今では九州最大の商都となっています。また、水鏡天満宮の入口にある石碑の文字は、福岡出身の総理大臣・広田弘毅12歳の時に揮毫したもので、少年の字とは思えない威風を備えていますが、見たことはありますか?


と、なぜこんな風変わりな話題から今日のメルマガを始めたかと言うと、同じ場所を通る人が何万人いようが、この場所を通って遠く平安時代に思いを馳せ、道真公の胸中を偲んだりする人は、郷土史を知る人だけだ、ということを考えてみたかったからです。つまり、「歴史」というテーマを持って歩けば、日頃よく行く天神の町も、「テーマパーク」になるわけです。


あるいは、土木工事に詳しい僕の弟なんかは、建造物の基礎工事に思いを馳せ、「ハイテク技術のテーマパーク」と感じるかもしれません。


また、出会いを求めて天神に来た人には、「恋愛のテーマパーク」に見えるかもしれません。


新規開拓に走り回る営業マンであれば、「契約を求めてさまようビジネスのテーマパーク」と感じるかもしれません。


このように、町や社会、時代、あるいは学校、会社などは、そこで時間を過ごす人が設定したテーマに従って、楽しさや辛さを感じさせてくれるものです。テーマパークと言えば、ディズニーランドやUSJ、スペースワールドなど、分かりやすい施設や仕掛けがある場所だけだと思われていますが、大学も立派なテーマパークではないでしょうか。何のテーマパークかは、学生が決めることですが。


ブランド品が並ぶ百貨店も、ブランドに興味がない僕には単なる「冷房付き通路」ですが、ブランドに目がないOLなどが行けば、「美とプライドのテーマパーク」となる可能性もあります。僕には1歳、3歳、5歳の甥っ子がいますが、この3人を連れて立ち寄る「トイザらス」は、ちびっ子たちには「夢と感動のテーマパーク」のようで、片っ端から触れたり遊んだりと、目が離せません。


だから、同じおもちゃ屋さんでも、僕には「謝罪と片付けのテーマパーク」です。「散らかしてすみません」、「すぐ片付けます」、「ちゃんと元の場所に戻します」と、店員さんに何回も謝るからです。


スーパーだって、考えようによっては「買い物のテーマパーク」です。食と住をテーマにした商品が並び、そこで生活を描き、希望の商品を選んで明日を彩るのは、旅行と似た性質の行為です。旅行代理店などは「テーマ」で稼いでいる事業で、テーマ設定が集客率や利益率を決めることが一般的です。


例えば、僕は東南アジアの歴史については、住んでいただけあってプチ・マニアで、マレーシアの知られざる歴史や観光スポットも知っています。だから、JTBなどが売る「JALで行く南国の極上リゾート10日間」のテーマよりは、僕が設定したテーマの方が、友人はもっと多くのお金を払います。


なぜかと言えば、そのテーマを心から楽しみたいからです。こういう形で、韓国やマレーシアの旅行商品を企画し、小さい代理店に提案した時は、商品券をもらったりしました。


もう、何十人にマレーシア航空やシンガポール航空のチケットを買わせたか分かりません。あるいは、本を買わせた人数になると数え切れないほどで、つくづくブックオフと業務提携しておけばよかったと思います。僕は人を説得してある場所に行かせたり、本を買わせたり、物を売ったり、テーマを決めて人を集めるのが割合得意な方なので、将来は旅行代理店も開業しようと考えています。

さて皆さんは、日頃、どんなテーマを持って大学生活、あるいは社会人生活をお過ごしでしょうか。僕は仕事の傍ら、こうして3年間休まずFUNのお手伝いをさせてもらい、2年間欠かさずメルマガを配信してきましたが、その中で一貫して学生と共有を願っているテーマがあります。



それは、「仕事は楽しいんだ、働くことは素晴らしいんだ」というテーマです。なぜなら、このテーマに心から同意できた時、全ての言い訳は姿を消し、先延ばしはなくなり、夢を先取りしようと情熱が溢れてくるからです。


多くの学生さんは、仕事は「楽しくない」と思っています。働いたこともないのに、仕事より遊びの方が楽しいと思っています。しかし、来るべきステップを知っていながら遠ざけ、将来と関係のない一時的な楽しみを追い求めて得る「遊び」の、どこが楽しいのでしょうか。友達と会う時は「楽しいね」と言っていても、家に帰って一人になると、「自分の大学生活は、これでいいのだろうか」と悩む学生さんも多いようです。


考えるまでもなく、それでいいわけ「ない」に決まっています。くよくよしていたら、「今の自分」のまま、何一つ成長せずに卒業式を迎えるだけのことです。「分かってる」と言いながら一向に取り掛からない人間には、学年や残り時間など何の意味もありません。余裕が与えられるほど、人間的に退化していくだけでしょう。


FUNの活動に企業取材を取り入れ、月刊誌を作るように提案し、一緒に編集を練習して学生全員にDTPソフトの使い方を教えたのも、FUNというサークルを「取材と夢のテーマパーク」にしたかったからです。


その一番の功労者は、立ち上げの一番苦しいところだけを負担し、急成長を見ることなく卒業した創設者の安田君ですが、その安田君の学生生活もまた、「挑戦と達成のテーマパーク」でした。他の「大学=手抜きと後悔のテーマパーク」と思っている学生を一人ずつ勇気付け、一歩、また一歩とFUNを築いていった安田君の努力は、並大抵のものではありませんでした。


僕は、FUNに集った学生全員が、実社会を見て「社会って、仕事をもって立ち向かう、挑戦と感動のテーマパークなんだ」と燃え、将来に理想を描き、堂々とチャレンジを重ねてほしいといつも願っています。全ての講義やメルマガは、そういう位置付けで作成し、お届けしています。これは今後も変わりません。


テーマは過ごす時間を「物語」に変え、自分の潜在能力を引き出し、全ての歩みに価値を与えます。しかも、いくら大きく設定しても、いくつ設定しても、全部タダ。これは、テーマを持たずに毎日を過ごすなんて、もったいないですよね。未来の自分のため、夏の自分に積極的なテーマを設定して大学をテーマパークに変え、見えないものを見る観察眼と、不屈の精神力を身に付けていきましょう。