■「内定への一言」バックナンバー編



「短所は、我々に素直さという最高の長所を与えてくれる



今日は女子大FUNゼミの日でした。司会は国文学科1年生のNさん。発言や行動からサークルに対する意欲、愛着が溢れていて、成長著しい学生さんです。誰よりも早く教室に到着し、近況報告のお題やタイムテーブル、グループ分け、進行などをいつものようにニコニコしながら、うんうん唸りつつ考えている姿を見て、とても頼もしく感じました。


もちろん、成果もばっちり。今日は選考で参加者が少なかったのが残念でしたが、少人数ながらも明るい雰囲気で過ごせました。Nさん、どうもお疲れ様でした。これで、春から訪れる後輩を明るく迎えられますね。さすが、先日のBook Offツアーで35買っただけのことはあります。




さて、面接塾ではしばしば、学生さんが驚く発言があるようです。



「自己PRってのは、自分を伝えることじゃないぞ」

「落ちる学生は、自分は特別だと言いたがる」

「情報は与えてはいけない」

本題から切り出すな」

言いたいことを言いたいように言うな」



などなど数え上げたらきりがありません。しかし、中でも最も印象に残る言葉の一つは、「短所に自信を持とう」かもしれませんね。




多くの学生さんは、「短所」に不安を持っているようです。「こんな短所を話して、落とされないだろうか」、「これって、短所なんだろうか」、「短所って、どう伝えればいいんだろうか」と悩んでいる学生さんには、いつも「優れた経営者は、短所の塊だ」と話しています。短所の塊であるからこそ、優れた長所を持つ人材を周囲に結集させ、目標を達成できるのです。


実例を知りたければ、『経営に終わりはない』(藤沢武夫・文春文庫)を読んでみて下さい。本田宗一郎さんを支えた名脇役の経営哲学が、余すところなく、分かりやすい口調で語られています。業界・職種を問わず、企業研究や自己分析にも、たいへん役立つ一冊になることでしょう。ちなみに、西新のブックオフに\100で1冊、売ってましたよ。




以前もメルマガでお話した通り、社長と従業員の関係は「桃太郎と子分」の関係。桃太郎は、空も飛べなければ嗅覚も人並み、まして手先が器用でもありません。しかし、「鬼が島に行くぞ」というビジョンを持っています。このビジョンがあるからこそ、必要な作業を割り出すことができたのです。


距離を測り、敵地を探るため、キジにマーケティングを任せ、必要な道具を開発・加工するためにサルに「商品開発」を任せ、ライバルの接近を知り、必要なアクションを起こすため、イヌに「営業」を任せ、「きびだんご」という給料で、有能な子分たちをM&Aしたわけです。


わが国の物語は、創業にも立派に役立つモデルを備えた、立派なビジネス事例でもあります。




ところで、なぜ桃太郎はキジ、サル、イヌを配下に持つことができたのでしょうか。桃太郎は、「鬼が島に行きたい。しかし、距離も道も分からない。必要な道具もない。敵のことも知らない」という自分の現状を知っていました。それらの課題を解決する能力が、「自分にはない」ということも、謙虚に自覚していました。だからこそ、必要な能力を持った動物たちの長所を見抜き、その発揮の場を想像することができたわけです。


桃太郎は、短所ゆえに人の長所を集め、使命を遂行できたのです。短所があり、その短所に素直であったからこそ、人の良さを正しく認め、尊重し、活躍の機会を譲ることができたんですね。すごいです。




このように、短所は素直に自覚すれば、周囲の優れた知識や能力を、無限に集める磁石にもなります。別に共同事業をしなくても、あなたが短所を持っているなら、それが短所ではない人の振る舞いを注意深く観察し、謙虚な思いにさせてくれるでしょう。


例えば、「人前でうまく話せない」という短所を持っている人は、話す、聞く、といった行動に対して、人一倍気を使い、常人なら見過ごす小さな達成にも敏感になって、着実に成長していけるでしょう。




素直になると、大切なものを見落とさなくなります。素直じゃない人は、毎回「感動しました!」と言うものですが、その感動は、以前も味わった種類のものでしょう。感動が浅く表面的だから、何度も何度も味わわないと、行動一つにすら、結び付かないわけです。「何回感動したら、君は本気になるのか?」ということですね。


一回ではうまくいかないことがあるから、人は謙虚になれます。思い通りにはいかないから、相手の気持ちを考えるようになります。分かっていてもやれないことがあるから、友達を尊敬できるようになります。短所があるから達成の喜びが倍増し、短所があるから人の情けが有り難く、短所があるから感謝の気持ちが持てる




人生には、長所よりもむしろ、短所によって得る幸せの方が多いのではないでしょうか。20代を「できそこない」で過ごした僕の、素直な実感です。できそこないだったおかげで、各分野の優れた経験、知識、見識を持つ人々の最上の要素に、たくさん触れることができました。それを全て、僕が身に付けられたかどうかは疑問ですが


行動力やチャレンジ精神、好奇心、発想力よりも役立つ人生最大の長所は、「素直さ」です。




なぜか?素直であれば、人はあなたに「教えたい」と思うからです。自分の献身を手放しで喜んでくれる人を前にして、「忙しい」と言う人はいません。人生で持ちうる大半の長所は、人から学ぶことができます。


さぁ、あなたの短所を数えてみましょう。いくつ見つかりましたか?5個?10個?おめでとうございます。素直なあなたは、成功したも同然ですね。