■「内定への一言」バックナンバー編
「与える手が美しければ、受け取る手も美しい」(ゲーテ)
今日は赤坂ベローチェで、小さな小さな「読者の集い」が開かれました。参加してくれた学生さんそれぞれが、印象に残った作品を持ち寄り、感想や今後の展望を語り合う、という形式で過ごした時間を振り返り、僕は「みんな、なんと優しい心を持っているのか」と感動しました。
皆、出会って数ヶ月もたっていません。中には、今日が2回目だったという人さえいました。なのに、心が通い合い、これからの就職活動に沸々とやる気が湧いてきているのがよく分かり、いつの間にか3時間もたっていました。また、みんなの読み方も個性的で深く、執筆者としても嬉しい時間でした。そして、考えました。「なぜ、こんなに幸せなのか?」と。行き当たった答えは、ゲーテの「与える手が美しければ、受け取る手も美しい」(「いきいきと生きよ」手塚富雄・講談社現代新書)という言葉でした。
僕は仕事のかたわら、3年前から学生さんのサークルをお手伝いすることになり、今は特に就職活動中ということもあってか、本業以上の時間を割いて学生さんと接しています。そこで接する学生さんは、最初は少し緊張もしていたりしますが、慣れ親しんでくると、一人一人がとても個性的で優しく、熱い思いを込めた夢を描いています。僕は社会で当たり前のことをしゃべっているだけですが、学生さんは深々と頭を下げ、「ありがとうございました」と心からの感謝の言葉でねぎらってくれます。それは、就活対策の一環として、その場限りで練習したような「虚礼」ではなく、その人の温かい心持ちが表れた感謝の姿です。はっきり言って、社会人以上です。「私は何の才能もありませんが…」とか謙遜している学生さんもいますが、「感謝できる素直さ」こそ、人生で発揮しうる最大最高の才能だと、ぜひ知ってほしいです。
つまり、学生さんの「受け取る手」は、この上なく美しいのです。そして、それは同時に「与える手」でもあります。僕に「今日も頑張ってよかった」という達成感を与えてくれ、「明日もさらに上を目指すぞ」という挑戦の意欲を与えてくれるからです。僕は教師を目指したこともなく、教職の履修経験も教育現場の知識も皆無の一経営者に過ぎませんが、教育とは、こういう「心の響き合い」の上に築き上げていくものなんだろうなぁ、と3年を経て、ようやく実感しています。
面接塾で、よく言う言葉があります。第④回の冒頭で話すことです。「皆さんはよく、相手のいい反応が欲しい、と考えるかもしれませんが、自分がどういう反応をしているか、考えていますか?」。姿勢、視線、問い…これらも全て「言葉」以上のメッセージとなりうる、皆さんの立派な自己PRの手段です。それに気付かず、「話す内容」や「使う言葉」だけが自己PRだと勘違いしては、面接で望む結果も得られないでしょう。なぜなら、「受け取る手」がきれいでなければ、「与える手」、つまり面接担当社員の質問も、意地悪で難解なものになるからです。
全ての問いは、あなただから繰り出されるわけです。 「与える手」の内を探ったり、読んだり、警戒したり、怖がったり、必要以上の過剰な防衛反応を示したりする前に…。あなたの「受け取る手」がどうであるかを、今一度、確認しておきましょう。「美しい受け取り方」は、瞬時に「美しい与え方」に転じます。お金にしても、本にしても、時間にしても、与えたり貸したりした時の無意識の仕草、1秒にも満たない表情の変化、目の動きを見れば、その人がこの「贈り物」に対して何を感じたか、はっきりと分かります。
僕は「払う側の人間」ですから、もらい方が後ろめたい表情の人間や、間が悪そうに会釈する人間は、絶対に伸びないことを知っています。逆に、小さな善意にも大きな感謝を示せる人は、年齢や経験によらず、大成していくものです。なぜでしょうか?それは、そういう人は、周囲の人が「伸ばしたい」と思う人間だからです。「自己成長」という言葉も大切です。しかし同時に、自分で実現できる「成長」など、社会人生活では10%以下だと知っておきましょう。あとの「90%」は、あなたがどういう人間であるかを判定した周囲の人々の協力で成し得る成長です。
感謝できず、認めきれず、信じてお願いできない人間は、10%の中で圧迫され、自分の奇形化したプライドの中で窒息死するだけです。あなたは、10%で終わりたくはありませんよね。誰でも、残りの90%の成長を達成したいはずです。それは、「受け取る手」と「与える手」の美しさが決めます。言うべき時に、ふさわしい仕草と声、表情で、相手より先に「ありがとう」を言える若者になりましょう。
時を得て発せられたあなたの「ありがとう」は、世の中の素晴らしい知識、経験、考え方、情報を、あなたという「成長株」に向かって投機資金のように呼び込むでしょう。しかも、永遠に返済不要です。1日24時間勉強する人でも、どんなに独力で学習できる人でも、「感謝できる人」には絶対に勝てません。なるのは、どちらが簡単でしょうか?考えるまでもありませんね。