■今日の一言(通巻404号)
「舞台に上がる前には、お世話になった人20人に感謝しよう」
今年の新卒就職市場は去年以上に人手不足の影響を受け、学生に有利と言われていますが、それでもやはり、初めて面接に臨む学生さんは最初は緊張するようです。
かつて、バブルの時期は「漢字も書けない短大卒」が証券会社入社1年目で100万円のボーナスをもらったり、某大手銀行はディズニーランドで相談会を行ったり、入社2~3年目のぺーぺー君に高額な予算を持たせて採用を任せたり…
というエピソードがありました。
「いいなあ」と思う人は、そう多くはないでしょう。
だって、こういう時期に入社した人は、入社後に本当の実力が表れて退職する人が多く、不可思議な選考で入社した人たちは、すぐに借金返済マシーンになり、あるいはホステスになったんですから。
就職が簡単になっても、仕事が簡単になるわけではありません。同様に、受験者数が減って入試が簡単になっても、本人の頭が良くなったわけでもありません。
推薦入試で入学して遊びまくり、単位が取れずに留年したり、大学で腐ったりしたら元も子もないのと同じですね。
大学でついていけないなら、自業自得だけで済みますが、会社でそうなると「邪魔だ」、「消えろ」、「やめろ」、「いなくていい」となりますから、採用が簡単な時期にこそ、基礎力を付けておきたいものですね。
一般に、就職が簡単な時期に学生時代をダラダラ過ごした人たちは、自分の将来を表面的に考え、思考力不足に陥って、その反動が入社2~3年目には必ず来ますから、今から5年後には膨大な「フリーターの群れ」が生まれるでしょう。
そして、その「こらえ性がない暴落株」は、派遣会社や資格学校にとっては、巨大なマーケットになるでしょう。
ということで、本当に成長したいと思っている皆さんには、これから4~5年はチャンスですよ。だって、周囲には「内定さえもらえればいい」と考えて就職した人の比率が増え、ただ頑張るだけで自分をアピールできるんですから。
では、「君は面接の時から違っていたよ」と、後にも続く好印象を勝ち取り、実際にその印象どおりの人物になるには、どうしたらいいのでしょうか。
最初の面接は緊張して、「自分が出せない」と言われたりするものですが、「緊張して自分を出せない」のも自分です。「自分」をそんなに都合よく考えては、あまりに虫が良すぎるというものでしょう。
大事なのは緊張しないことではなく、緊張に強くなることです。
「緊張しても自分を出せる自分」になるには、①場数を踏むこと、②本気でその仕事をやりたいと望むことの二つがありますが、もっと手っ取り早くて、しかも本質的なのは「感謝」です。
FUNで毎年、面接前にこうしたらいいよとアドバイスしているのは…
「面接会場に入る前に、お世話になった人20人に感謝しよう」ということです。
もうすぐ始まるというその時に、心の中で、今までお世話になった人20人を挙げ、「○○さん、~してくれて、ありがとうございます」と唱え続けるのです。
これは、僕がある社長さんから聞いて、外せない商談や大事な営業、創業で資本金確保がかかった大事なプレゼンを行う前に、いつもやり続けてきたことです。
もっとも、僕は調子に乗って失敗したことも多かったので、社長さんに聞いた「10人」ではなく、「20人」にしたんですが。
なぜ20人かというと、10人だと簡単に思いついて、身近な人しか連想しないからです。
皆さんなら、まず誰に感謝しますか?
「お父さん、いつも私の学費を稼ぐために、朝早くから夜遅くまで働いてくれて、ありがとうございます」…まず一人。
「お母さん、いつもぐうたらな私のために料理、洗濯、掃除をしてくれて、ありがとうございます」…二人目。
他に、兄弟や祖父母、親戚などが加わって、10人くらいにはなるでしょう。これだけでも、自分がいかに日頃周囲のお世話になり、かつ、いかに恩返しできずに過ごしているか、痛いほど感じて謙虚になります。
そして、次の新たな10人。
「店長、いつもそそっかしくて物覚えの悪い私を励まし、色々な仕事を通じて成長の機会を与えて下さり、ありがとうございます」…11人。
「先生、いつも要領が悪くてギリギリにレポートを仕上げてばかりの怠け者の私を笑って迎えてくださり、ありがとうございます」…12人。
「先輩、いつも自分の悩みばかりを話して相手のことを考えないわがままな私の相談に乗ってくれ、ありがとうございます」…13人。
学校生活を考えただけでも、日頃は「自分で生きているんだ」と思っていたのが実は全くの思い違いで、自分はいつも、バイト先の店長や先輩、学校の先生、先輩、友達に支えられてばかりだったと、今さらのように気付いて頭が下がります。
さらに…
「あの時仲が悪くなった○○さん、不快な思いをさせてすみませんでした。あの対立を通じて、私は人の話をよく聞くようになりました。ありがとうございます」…16人。
「東京にいる○○君。離れた今も、高校時代のようにいつも温かい励ましをくれ、困ったときは側にいるかのように電話してくれてありがとう」…17人。
もはや、自分は「債務超過人間」でしかなく、人の世話や助けがなければ、ここにこうして存在していることはないだろう、と思うくらいに心が謙虚になります。
最後に…「いつもお世話になっている○○ちゃん、身勝手で気分屋の自分なのに、いつも最高の友達でいてくれてありがとう」…19人。
「昔お世話になった○○さん、しばらく会ってないけど、あの時の一言を思い出すと、今でも元気が出てきます。ありがとう」…20人。
1~5人目では「申し訳なさ」ばかりが募り、6~10人目では「恩返し」への意欲が強まり、11~15人目では「期待に応えたい」という気持ちが湧き上がり、16~20人目では謙虚さとそれに裏付けられた自信がふつふつと湧いてきます。
そして、「自分ひとりでやれたことなんて、何もないけど、だからこそ恩返しのために生きていきたいと願う私になれた。この恩を返すために、これから立派な社会人になるんだ。この面接は、私にとって最高の仕事の始まりなんだ」という気持ちになって…
「21人目」になるであろう、面接担当者に会いに行くのです。
その時には、無用の不安や緊張は忘れ去り、「何でも、心行くまで聞いて下さい」と、相手の態度と自分のやってきたことに全幅の信頼を置き、迷いを自信と余裕に転じさせていることでしょう。
緊張も遅刻も寝不足も、全て「ベストコンディション」のうちです。
何かが最高に整わねば最高の自分を出せないなんてのは、うそです。何がどういう状態でも、あるがままの自分はいつも表現されているもの。それを悔いなく伝えるのに、「感謝」ほど大切な心構えはありません。
無料で効果絶大のこの考え方、皆様も面接前に3分ほど活用してみてはいかがでしょうか。30人でも50人でもいいですよ。きっと、感謝した分だけ、自信と余裕が生まれてくることでしょう。