◆今日の一言
『最大のマーケットは、社員の頭脳だ』
最近、3年生の皆さんは、エントリーシートの提出でやや「あっぷあっぷ」気味のようですね。
自己管理能力を磨くための良い試練を与えられたと感謝し、スケジュール調整能力や集中力を鍛える材料にしましょう。
今日の業界ゼミでは、学生さんに人気の「旅行代理店」を扱いましたが、そのアプローチ手法はFUNらしく、「そのルーツは平安時代に!」というテーマから切り出しました。
なぜなら、僕はこの業界ゼミでの「講義120連発」において、一貫して以下の約束事を自分に課しているからです。
業種の属性や扱う商品がどうであれ、以下の視点から仕事を捉えれば、就職は楽しくなり、内定後も惑わず、営業はうまくいき、研修も成功し、採用も的中し、提携もうまくいくからです。
①どんな業界・業種でも、財務諸表上のキャッシュの動きから仕組みを捉える。
②その仕事の由来と歴史を知り、仕事への愛着と先人への敬意を育てる。
③時代が変わっても変わらない本質を見つめ、他業種との関連付けを行う。
④「情報」ではなく、情報を見抜き、自分で考えるための「考え方」を提供する
。
ということで、今日の「旅行業界」では、平安時代にそのルーツを持つ「御師(おし)」という人々が行った「旅行代理業の祖先」としての仕事から、旅行代理業の本質を考えていきました。
「御師」なんて言われても、大半の学生さんは知らないでしょう。というか、僕の友達だって、一人も知りません。
しかし、皆さんはお正月になれば初詣に行き、「おみくじ」を引きますよね?あるいは、「お守り」を買いますよね?
実は、これらの慣習は皆、「御師」さんたちが編み出した旅行代理業の原型の一端なのです。
日本人は、亡くなったら神様や仏様になります。そういう素朴な信仰が生まれ、根付いたのは平安時代です。自分は会ったことがなくても、あるいは短い時間しか共有していなくても、「ご先祖様」がいてこそ、今の自分がある…。
ましてや、ある地域には、郷土の発展や農業での豊作、天変地異からの救済に尽くして下さった、ありがたい「神様」がおられ、そういう神様は皆、「神社」に祭られているのです。
ですから、わが国では由緒ある神社は皆、「山のふもと」にあります。それは、山のふもとが一番きれいな水が取れ、そのきれいな水で身を清めて神様をお参りすることが大切だったからです。
このような神社は全国各地にたくさんあり、「御師」とは、特定の神社に所属し、参拝客への道案内や神社の説明、および参拝の奨励、宿泊の仲介・世話、土産物の販促活動を行った人々のことです。
遠方や他国(他の地域)から訪れた参拝者は、当然ながら、その地域も神社も全く初めての場所であり、出身地が遠ければ遠いほど、宿泊の必要も生まれ、帰る時には何らかの「証拠」を持って帰りたかったはずです。
ということで、遠方からの参拝者の不安を察知し、ニーズを突き止め、「おみくじ」というイベントを発明したり、「お守り」という記念グッズを考案したり、「特産品」というおまけを生み出したりしたのが、御師たちなのです。
アメリカのマーケティングの1,000年先を行く、わが日本の先人の「ユニークで温かい発想」はこれに留まりません。さらに近代的なマーケティング・営業手法を、先人の方々は既に平安時代に編み出していたのです。
例えば、商売繁盛や家内安全、無病息災、学業成就など、参拝者の参拝目的をパッケージ化して標準化し、神様のご利益にあずかって見事、「大願成就」となった際には、「お礼参り」なる「リピーター獲得作戦」も生み出しました。
このような努力が実り、ある地域では特に強い集客力を持つ「メガ神社」が生まれてきました。
御師たちはさらに、信心深い参拝者を「檀家(檀那)」として「固定客」にし、毎年家族を連れて参拝してくれるような参拝者の家には、それがどれだけ遠い場所であろうと、自ら出向いて「厄除け」や先に挙げた「パッケージ祈願」を丁寧に行い続けました。
そして、「このお札を貼っておけば家内安全にご利益があります」、「一家でお守りをどうぞ」などと言い、ちゃっかりと「関連グッズ」の売り込みまで行いました。
それどころか、「三社参り」、「お陰参り」など、現代にまで続く「民族大移動」すら、御師たちの着想から生まれているのです。
先人が目を付けたのは、「商品」や「サービス」などという、表面的で移ろいやすいものではなく、「文化」であり、「伝統」でした。
これらの風習は、まず「貴族」の間に普及し、それから「武士」に広がり、最後は「農民」にまで完全に定着していったわけです。なんと長期的、かつ本質的で、遠大な事業戦略でしょうか。
御師たちがこれを事業と捉えていたかどうかは分かりませんが、①宿泊施設の仲介、②関連グッズの販売、③説明による感動と思い出の提供など、現代の旅行代理店の業務の原型は、1,000年前に完成されているのです。
さらに、御師たちの「ビジネス手法」には、「近代的マーケティングの鉄則」としてかつて大々的に喧伝された、
①新サービスは金持ちから流行させるべし。
②言われてからではなく、自ら顧客をフォローすべし。
③「商品を売る」のではなく、「商品で売る」べし。
④顧客の両親、祖父母、子供から信頼を得るべし。
といったルールが、全て完璧なまでに、かつ自然に組み込まれているではありませんか。
御師たちの発想と手腕ほど、日本の歴史において巨大な「町興し」を行った例はありません。平安時代に生まれた慣習の功績は、「新幹線」よりも巨大です。
小さな田舎の神社に、定期的に多くの人が訪れる。そして、地元の人たちと遠方の人たちが理解しあい、親睦を深め、相互の名産品や情報を交換する。その交流はやがて「小川」から「大河」となり、永遠に「感謝のサイクル」を循環させ続ける…。
今や、初詣では全国で数千万人の人々が神社を参拝し、ここ福岡でも、太宰府天満宮や箱崎宮には、短期間で300万人もの人が訪れます。そして、おみくじやお守り、お札、記念品、「梅が枝餅」などを買っていくのです。
考えてもみて下さい。「1,000年」ですよ。たった1日で「300万人」もの人が遠方から一ヶ所に訪れるなんて、そんな超巨大スケールの集客ができる業種が、他にどこにあるのでしょうか。
わが国最大の広告代理店・電通がありったけの資金をつぎ込んでも、平安時代か
ら根付く「文化」には到底勝てないでしょう。
僕たちはもっと文化や伝統を尊敬し、今では「当たり前」となっている数々の風習や慣習に込められた先人たちの挑戦や努力の跡を観察し、その姿勢と願いに敬意を払うべきだと思います。
大事なヒントや求めていたきっかけは、案外身近な「足元」にあるのに、なぜ見かけの良いものや、噂や根拠薄弱な評判で宣伝されたものばかり求めるのか…。実にもったいないことだと思いませんか?
この「御師」の話を旅行代理店に勤める友人に話しても、誰一人として正確に答えられた人はいません。それどころか、JTBで採用を行う知人、阪急交通で新人研修を行う小学校時代の同級生に聞いても、「何、それ?」です。
あんたらねぇ…
「感動と発見のテーマパーク」を作り、町興しと人々の心の交流に貢献する旅行代理店の社員として、歴史と地理を知らないことを、恥ずかしいとは思わんのか!
とでも言いたくなりますよ、ほんと。
この「御師」は、日本文化の破壊と伝統の壊滅を目指したアメリカのGHQ(連合国軍総司令部)が禁止し、「以後、このような人心を惑わす行為をしてはいけない」と廃止させました。
アメリカには学ぶ点もたくさんありますが、いかんせん、歴史と伝統がないばかりに、人様の国の風習を土足で蹴散らすような真似をされると、なんとも言い難い気持ちに駆られます。
アメリカ人と話すと、英語の発音はかっこいいですが、話している内容を聞く限りでは実に頭が悪く、「こいつ、本国ではただの借金野郎だな」と呆れる人間もいっぱいいます。
地元の優れた先人の思いは無視して、ハワイだグアムだ…なんだか、先人に申し訳ないですよね。僕も郷土史をしっかり勉強して、将来はたくさんの「ミニ旅行」商品を開発する予定です。
ということで、大事なことの大半は、ほとんど過去に考えつくされ、発明され尽くしているものです。「新しいこと」と口で言うのは簡単でも、実践するのはなかなか大変なものです。
だからこそ、どの企業も求めてやまない「最大のマーケット」や「最高のビジネスチャンス」は、中国でも途上国でも、未開拓地域でも他社のエリアでもなく、「社員の頭脳」の中にこそ存在する、といわねばなりません。
そういう「ビジネスの大前提」から考えれば、わが国の旅行代理店の大半は、全くもって「勉強不足」だと言うほかありません。
国内にしろ海外にしろ、心の奥底から感動と尊敬の気持ちが湧き上がる旅行商品を作ってもらいたいものです。
貧乏人が「3,000円の宴会」には金を出すのに、「3,000円の本」は買わないように、不景気の業界、会社は、「社長や社員が勉強不足」と決まっています。
また、今いる場所で最高の努力をできない人ほど、場所や環境を変えれば何とかなる、と甘く無意味な願望を描いて時間を空費します。
御師たちは、居場所でできる最高のことを考え、それを地道にやり続けたに過ぎません。彼らの頭の中には、「有り難い神様の存在」を多くの人に知らせ、参拝者の家庭や事業がうまくいくように、という願いが最優先にされていました。
僕たちは一体、平安時代からどれだけ成長したというのでしょうか。
どの仕事をするにしろ、遡れる限りの原点にまで立ち戻り、先駆者の努力と着想への敬意から、業界・企業研究を行っていきたいものですね。
FUNでは僕が、そのような図書に毎月10万円近くつぎこんでいるので、将来は必ず「社会人が冷や汗を流すほど勉強してきた学生」を続々輩出し、全国の会社の経営陣をFUN出身者で埋めていくのが顧問たる僕の夢です。
今日は、毎日開催している「業界ゼミ」の旅行編のレジュメから、約「4分の1」に相当する内容を、簡単にご説明しました。
①仕事への愛着、②先人への敬意、③会計的視点、④使命感とビジョンを持って臨めば、人事部長の方から「わが社以外は受けないでくれ!」と言ってきますよ。
去年、西南のM地君がそうなったように。
以上、今日は「旅行代理店」の由来のご説明でした。毎回、業界ゼミではこれ以
上の内容を全業種にわたって話しているので、興味がある方はぜひどうぞ。