:「踊る」シリーズの生みの親である亀山千広さん(現在はフジテレビジョン常務取締役総合メディア開発映画事業局長)拡大「踊る」シリーズの生みの親である亀山千広さん(現在はフジテレビジョン常務取締役総合メディア開発映画事業局長)

:「今は15年間、支えてくださったファンの方への感謝の気持ちでいっぱいです。でも自分たちの想像をはるかに超えたブームに、怖くなったこともあるんです」と亀山さん=いずれも黒澤義教撮影拡大「今は15年間、支えてくださったファンの方への感謝の気持ちでいっぱいです。でも自分たちの想像をはるかに超えたブームに、怖くなったこともあるんです」と亀山さん=いずれも黒澤義教撮影

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 フジテレビのプロデューサーとして、平均視聴率29.6%を記録した「ロングバケーション」をはじめ数々のヒットドラマを生み出してきた亀山千広さん。 「たまには恋愛ものではなく、男の子っぽい作品をつくりたい」と、彼が刑事ものに目をつけたことが「踊る」シリーズの始まりだった。主演の織田裕二に加 え、脚本の君塚良一、監督の本広克行といった主要スタッフが決まり、「今までにない刑事ものを」と、警察への取材を進めるなか、興味深いことが次々と分か る。

 「刑事ってドラマではワイルドなイメージがあるけれど、日常はかなり地味なんですね。彼らは法律でがんじがらめにされた公務員で、指揮命令系統から逸脱 することは許されない。そして日々、膨大な調書や報告書を書いている。事務職じゃないかと思うほどです」。そんな公務員として、組織人としての刑事に着目 したことが、この作品の斬新さ、魅力となった。

 その後、現在公開中の最終作まで、一貫して描き続けてきたのが、警察組織の矛盾と、そこで信念を貫く青島刑事(織田裕二)の姿だ。所轄と本庁が足を引っ 張り合い、縦割り組織の弊害や規則により、救える人も救えない。そんな警察組織の矛盾をユーモアとともに描いてきた「踊る」シリーズだが、決して組織を全 否定しているわけではない。

 「僕自身、テレビ局という組織のなかでものをつくってきたわけですから、上からの命令で自分が正しいと思ったことができなかったり、現場を知らない上司 に振り回されたり、そんな組織の弊害は身にしみて知っています。でも、自分を含めほとんどの人は組織と無縁では生きていけません。『踊る』シリーズだっ て、フジテレビという組織の力なしにはつくれなかったわけですしね」

 そんな組織人としての亀山さんのジレンマは、作品にも投影されているのではないだろうか。ちなみに亀山さんは、最初の映画化の際、彼にとって理不尽と思 える提案をした映画会社の幹部にかみつき、会議室を飛び出した、という青島のような武勇伝をもっている。「当時はテレビマンとしてのプライドから映画界に 喧嘩ごしなところがあって……。後で上司からこっぴどく叱られ、謝りにいきましたけどね(笑)」。そんな熱血な一面をもつ亀山さんだが、直接制作にたずさ わらない立場となった今は、作品内容に関しては本広監督を中心としたスタッフに全面的にゆだねている。それでも興行成績が悪ければ、亀山さんの責任とな る。青島を信じながらも、ハラハラさせられっ放しの室井(柳葉敏郎)と同じ立場といえるだろう。

 今回、完結編をつくるうえで、改めて主人公である青島という男に焦点を当て、彼を突き動かしている青島イズムとは何なのか、スタッフ間で議論したという。

 「青島は決して正義感だけで動いているわけではない。刑事を仕事として選んだ以上、どんなに警察組織に矛盾があろうとも、市民の安全を守るために全力を 尽くす。青島イズムとは、そんな自分の仕事への責任感に尽きるのではないか。市民を守るという責任に忠実だから、時には上司や組織の論理と衝突することも ある。でも、本当に強い組織の条件とは、現場の一人ひとりが青島のような責任感をもち、さらにそんな部下を理解し、その責任をとる覚悟をトップがもってい ることではないでしょうか」

 しかし現実に、そのような組織はどれほどあるのだろう。現在の日本の社会を見て、そんな思いを抱く人もいるかもしれない。だからこそ、「今『踊る』をや る意味がある、青島イズムを改めてきちんと描く必要があると思った」と、最終作に込めた思いを語る亀山さん。「でも、決して声高にならず、お茶目にね」 と、最後に付け足した。