東京電力福島第1原発事故で、福島県が全県民を対象に行っている健康管理調査の外部被ばく線量の推計が難航している。算出された線量は今後数十年にわた る県の健康対策の基礎となるが、約206万人の対象者に送付した問診票の回収率は2割強で頭打ち。事故から1年半を経て住民の関心も低下しており、県は対 応に苦慮している。
 調査では、昨年3月11日から7月11日までの行動を問診票に記入してもらい、4カ月間の被ばく線量を割り出す。県は住民の避難が遅れた浪江町と飯舘村、川俣町の山木屋地区で昨年6月末から先行調査に着手、秋には対象を全県に広げた。
 ただ、問診票の回収ははかどっていない。今年7月末時点の回収率は22.8%(約47万人)。先行調査地域でも55.8%、福島第1原発と第2原発があ る県北東部の相双地区も40.4%にとどまる。線量の低い県南や会津、南会津地区に至っては10%台半ばと低迷している。
 県は回収が進まない理由について、記憶が薄れる中、記入の煩雑さ、調査の意義が理解されていないことなどが影響していると分析。問い合わせや説明会への出席者も減っているといい、担当者は「戸別訪問で提出を呼び掛けているが、限界がある」と明かす。
 推計線量の通知も遅れ気味だ。人員不足に加え、回答内容に不備が多く、電話での確認作業が欠かせない。これまでに通知を終えたのは3万6761人と回答者の7.8%にすぎない。県民全体では1.8%。56人に1人しか被ばく線量を知らない計算になる。
 放射線業務従事経験者を除いた一般住民3万4858人の中で、最も線量が高かったのは先行調査地域の25.1ミリシーベルトだが、県は健康に影響するレベルではないとしている。全体の58.0%は1ミリシーベルト未満、97.4%は5ミリシーベルト未満だった。
 県健康管理調査室の小谷尚克主幹は「事故後1年半でも長い目で見ればまだ初期の段階。今後に備え、問診票を返送してほしい」と話している。