野田佳彦首相【拡大】

 野田佳彦首相は24日夕、官邸で記者会見を開き、韓国の李明博大統領の島根県・竹島上陸や、許しがたい「天皇陛下への謝罪要求」に決然とした見解 を示す。衆院も同日午後の本会議で、抗議決議を民主、自民、公明3党などの賛成で採択する。これに対し、韓国側は、野田首相の親書を郵便で返却するという 非礼外交で対抗した。先鋭化・泥沼化する日韓関係。国会では「韓流スターの入国拒否(ビザ却下)」という案も飛び出した。

 竹島をめぐる国会決議は、韓国が国際法に反して沿岸水域の主権を一方的に示す「李承晩ライン」を設けた後の1953年、「日韓問題解決促進決議」以来で約59年ぶり。

 決議案では、竹島を「わが国固有の領土であり、歴史的にも国際法上も疑いはない」と強調。「不法占拠に基づいて竹島に行ういかなる措置も法的な正当性を有するものではなく、決して容認できない」と韓国側をけん制し、大統領上陸を「強く非難する」としている。

  一方、韓国側は、玄葉光一郎外相が「韓国が竹島を不法占拠している」と発言したことを「暴言だ」と抗議し、撤回を要求。野田首相の李大統領宛ての親書を返 却することも決定した。在日韓国大使館の参事官が23日午後、返却のため外務省を訪れたが、構内立ち入りを拒否され、書留郵便で日本政府に送り返した。

 李大統領の常軌を逸した暴挙をきっかけとした日韓対立は、国民感情を背景にして、双方が引くに引けないチキンレースとなっている。日本としては、韓国による主権侵害や天皇陛下に対する侮辱発言に対して、「確固たる抗議の意思を世界に示していく」(官邸筋)方針だ。

  現時点で、日本側は対抗措置として、日韓通貨スワップ協定について「白紙の状態」(安住淳財務相)と見直しを示唆したのをはじめ、今月下旬に韓国で開催予 定だった日韓財務対話を延期した。首脳会談も当面、取りやめる方向。韓国は今秋の国連総会で、安全保障理事会非常任理事国に名乗りを上げているが、日本は 「不支持」を表明するとみられる。

 こうしたなか、竹島・尖閣問題を集中審議した23日の衆院予算委員会で、みんなの党の浅尾慶一郎議員から注目すべき提案があった。

  浅尾氏は「これからは政府の判断だが…」と前置きしたうえで、「今回、有名な韓国の映画俳優(=ソン・イルグク)が泳いで竹島に行っている。そういう人が 営業目的で日本に来ようとしたときに、なぜかビザが下りないようにする。発表する必要はない。そのことが、ある種のメッセージになるのではないか」と語っ たのだ。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「韓流スターを全員対象にすることはないが、ソン氏にはビザ却下はあり得る。やれば韓国へのメッ セージになる。ビジネスマンのビザ申請を厳しくするのもいい。通貨スワップの見直しは、極めてソフトな対抗手段だ。『冷静に対応せよ』という人は『何もす るな。韓国の言いなりになれ』と言っているようなもの。淡々と対抗措置を取ればいい」と語っている。