ギリシャショックにより欧州から逃げ出したマネーは取り敢えず米ドルにシフト。
その後、欧州危機も下火となりドルからユーロに戻る動きを見せたものの、それも長くは続きませんでした。
結果的に、それ程面白みのないものの安全とみられる円に資金が流れ込まざるを得なかったというのが昨日の動きかもしれません。
それまでの過程を今一度検証してみたいと思います。
FOMCでは欧州の金融状況が経済成長を弱めていることなどの要因で米国景気回復ペースが当初の予想よりも鈍化する事が示されました。
この事を受け米国長期金利の利回りが下落し始めました。
その後発表された米国GDP確報値が2.7%と前回の改定値から下方修正されたことで、米金融緩和政策は長期に渡り継続されることが再確認されることになりました。
NYダウは最初低金利を好感し買われる場面も見られましたが、最終的に景気回復の鈍化から次の日はマイナス145ドルと下落。
また、ドルと円との金利差が縮小するとの見方からドル円の上値が重く推移。
G20では2013年までの財政赤字を日本以外は半減する事を宣言して終わりました。
これら一つ一つをみるとこれ程今回のNYダウの下落を誘うものには見えません。
寧ろ、見方によってはプラスの材料として受け止めることもできるものです。
米国低金利の継続は景気にとっては本来追い風になります。
財政再建も長期的にみれば世界経済にとって当然プラスになるものです。
何故市場はネガティブに受け止めたのでしょうか。
燻っていた不安感に最初に火をつけたのが昨日の中国の株価急落でした。
米国コンファレンスボードは4月の中国景気先行指数が計算ミスから1.7%から0.3%に修正された事を受け中国株価が急落。
これ自体はそれ程大きな問題ともいえないものでしたがタイミングだったのでしょう。
それを受け欧州各国の株価も下落し、それが米国株価までを押し下げる結果となりました。
NYダウは前日に比べ268ドルのマイナス。
ナスダックはマイナス85ドルと大きく下げた事でリスク回避の動きが強まりました。
欧州が駄目なら米国へ資金を移そうと思った矢先に、米景気回復もままならない状況が示されました。
それなら中国などアジアへというところだったのでしょう。
ところが、その頼みの綱であった中国の株価が急落。
資金は行き場所を失い最も安定した円に資金が流れ込んだという事のようです。
市場には欧州を中心としたユーロ売りが一先ず収まり、方向感を失ったところで世界景気への漠然として不安感が漂っていたとみられます。
その時に今回のような悲観的な見方が強まると過剰反応を起こしやすく、一斉に安全なところへ行こうとしたのではないでしょうか。
このように今の市場のセンチメントは変わりやすく、もし強気の意見が出始めると一斉にリスク志向が高まることもあります。
それまで、もう暫く流れを見極める必要がありそうです。
今週金曜発表の米雇用統計はそのきっかけとなるのか注目されます。