リビングに通された健一は
写真たてがあるのに気付き、
母親が、コーヒーを入れている間に
覗き込んだ。
‥!?
これは‥誰だ?
その時
こちらに来る足音が聞こえたので
健一はすぐに椅子へ身体を預けた。
「あなたは美紀の何を知ってるの?」
健一は、動揺を抑えつつ切り出した。
「あなたが美紀さんを見捨てるつもりだと言う事を」
「何を言ってるの?私の一人娘を捨てるなんて事
ある訳ないじゃない」
「ではどうして、父親と夜に会ったりしているんですか?」
母親は、煙草に火をつけて大きく息を吐いた。
「会っても良いじゃない。別れたら会ってはいけないなんて
法律もないんだし。そもそも、用件は何なのよ!」
健一はやれやれ、もう言う事になるとは‥と心の中で反芻した。
「美紀さんの血液と引き換えにあなたは父親から三千万を
受け取り、その後、飛ぼうとしている。そんな事はさせないと
言いに来たんです」
しばらくの沈黙の後、母親が口を開いた。
「全て知っているという事ね‥
いいわ、明日の夜7時にここに着て」
母親は、走り書きをしたメモを健一に手渡した。
健一は、なぜか寒気を感じた。
写真に写っている人物を尋ねようとしたが
それは、なぜか憚られた。
彼女には話は明日という口実をつけられ、
健一は家を去った。