「お気を確かにして下さい」



父親が美紀の死を知ったのは、警察からだった。


美紀が部屋を飛び出し、その後健一君が、外に飛び出した‥。


その後、私は、この女の暴言に苛立ちを抑えらなかった。


その時、アイツはこう言ったんだ。




「美紀は、死ぬかもしれないわね。そうなるとアンタの子は助からない。


当然私も三千万は手に入らない。だから、私は、これを入手しておいた‥」



そう、見せてきたのは、賄賂の受け渡しの決定的場面が写っているという


カメラ。流石に最初は信じる気などさらさらなかったが


アイツのホテルでの行動や言動は尋常なものではなかった。


美紀が死んだという事実がある以上、アイツは何をしてもおかしくない。


となると、あの写真が収められている可能性は高い‥。


あの日に起こった出来事を全て話したいが、


今、警察に全てを話すと私の首にも関わる‥。


父親は正直、焦燥しきっていた。


昨日の出来事が夢のような出来事で未だに、現実感を帯びない。



「健一君を呼び出したのは、美紀さんのお母さんという事で


よろしんですね?」



西警察署捜査一課の中川は、冷静に父親に尋ねる。



「はい‥。それで健一君は今どうしているのでしょうか?」



「今、取調べ中です。詳しい事はまだわかりません」



捜査上では、凶器となったガラスから美紀と健一の両指紋が


検出された事から、口論となった上での犯行とみなし、


笹木健一を重要参考人として見ている。


しかし、中川はまだその事は、伏せておいた。



「悪いのは、アイツだ。健一君は何も悪くない!」



「では、どういった経緯で、四人があの場に居合わせることに


なったのでしょうか?」



「だから、さっきも言ったように、私の息子を助けるには美紀の血が


必要で、その為に通らなければならない関門を話し合っていたんです」



「関門とは?」



「私の息子は、多発性骨髄腫という病気を患っていて、その病気は血液を


特殊な方法でないと助からない病なんです。その為に身内で血の適合性を


調べた結果、唯一美紀が適合したという事で、美紀に相談をする事になって


いたんです。」



「そうですか‥。そうすると、どうして美紀さんが死という最悪な結果を辿ったのか


どうかの疑問が深まるばかりなんですが、何か美紀さんの心に動揺を来すような


話をなさったのですか?」



「それは、母親の言葉だと思います。当初は、美紀は抜きで健一君と三人で話を


する予定でしたから。ですが何を血迷ったか、美紀を呼んでいたんです。私と健一君は


その事を知らずに美紀の心に動揺を来すような話をしたと思います。もちろん母親もですが」



「動揺を来す言葉とはどういった?」



「私の息子を助けるには、まず美紀を研究機関に送らなければいけません。そしてその後に


美紀の血液に多少の有機分解を行う事によって、私の息子と適合させる事になるんです。


その事を話し合っている間に‥」



父親が少し、言葉を詰まらせているのが見て取れた。ここからが重要だと中川は手に持つペンに


力を込めた。



「どうぞ、続けて下さい」



「研究機関からは援助資金が得られるのですが、その資金と引き換えに美紀と交換する。


美紀とも離れられるし、これで私もラクになると‥」



「それは、ひどい物言いですね。実の子をそんな風に突き放すとは‥」



そういうと中川はペンを走らせ記入した。




ー笹木健一と口述内容はほぼ一致ー






あとは、犯行動機だな‥。



中川は、取調べの総括を記入した。




美紀の母親の取調にて


母親の方は終始泣き崩れていてまだ、会話が成立しない。


二人の口述での少し突き放す物言いが引っかかるが、


一人で子を育てるストレス等も考慮するとその考えを持ってしまうのも無理はない。


二人は、母親が美紀を呼び寄せたとばかり言っているが、その真偽は不透明。


母親はその事実を否定。より詳細を捜査する必要あり













自殺の線は薄いとみなす