健一が、公園に着いた時、ベンチに座っている男女がいた。
健一は、耳を潜めた。
「あいつさえ、承諾してくれれば、息子は助かるんだがな‥」
「あの話は本当なんでしょうね?」
「あぁ、美紀の血液が手に入れば、三千万はお前にやるよ。」
「裏切ったら、承知しないから。
また美紀には、私から説得するけど。
あんたの子がどうなろうが知らないけど、私は今、お金が必要なの。
やっと楽ができるわ‥。もう疲れたの
偽りの私を演じるのも、何もかも。
その金で、ゆっくり予後を過ごさせてもらうわ。」
「お前も、ひどいよな、腹を痛めて産んだ子だろ。
そんなに簡単に納得するとは思わなかったよ。
金で娘を売ったようなもんだからな。」
「あんたに言われたくないわよ。‥ふん、どっちにしろ、
もう少し経ったら美紀の前から姿を消すつもりだったけどね。
大学の学費なんて高すぎて払えるもんじゃないわ。」
二人の会話が終わる前に、健一はその場から去った。
このまま話を聞いていれば、
二人を殴り倒してしまう事になりそうだったからだ。
人間とは一体なんなんだ?
どうして、そんな冷酷な事を考える事が出来るんだ?
美紀はそんな事を考えてるなんて思ってもないぞ?
必死に大学の勉強を頑張っているんだぞ?
健一は無償に叫びたい衝動に駆られた。
美紀の事を考えると、心が張り裂けそうだ。
―美紀、絶対守ってやるからな‥―