美紀は夢を見た。
心の底から笑っている私。
それは、自分が今抱えている悩みなんて
ちっぽけな破片に過ぎないよと訴えているかのように。
「ここは‥」
「俺の家。途中で気を失うもんだから」
笹木健一は淡々と語った。
そうか‥、私は意識を失っていたのか。
でもそれは、私自身を守る為に
私の体が起こした防衛反応だったのかもしれないね。
人間を作った存在がいるならば、
記憶、意識、心の三つの扱いには相当、手を拱いたんだろう。
心を失ったら、
この世に生きている事の意味が、
人間として存在している意味が、なくなってしまう。
記憶を失ったら、
今まで生きてきた軌跡、
生きてこられた奇跡が何の意味もなくしてしまうものね‥。
だから、
三つの中で一番失った時の代償が少ないもの‥
意識を失わせたのかな‥。
死という人間の末路と隣り合わせなのにね‥。
「これ、飲め。少しは体を温めろ。」
「ありがとう‥」
美紀は、健一から手渡されたココアを飲んだ。
それはとても温かかった
美紀の冷え切った心を優しく包み込むかのように‥。