素粒子。 | No Music , No Soccer , No Motersports , No Life

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2020年/ 63冊目 
読書記録/ 2020.06.05〜06.09

『 素粒子 』
原題/ les particules élémentaires 
著者/ ミシェルウェルベック 
ミシェルウエルベック 
miche lhouellebecq 

訳者/ 野崎歓 

2006.01.10 第1刷発行
2019.111.05 第11刷発行
発行所/ 株式会社 筑摩書房 
ちくま文庫 

本書は何よりもまず一人の男の物語であり、男は人生の大部分を、二十世紀の西欧で生き、ほとんどいつも孤独だったが、ときには他の人間たちと関係を持つこともあったりしたが、混沌とした時代に生きた男、男たちの絶望的な愛が描かれている。

同じ遺伝子を受け継ぎつつ、性欲に関しストレートすぎる兄と、物事を理詰めに考えつつ、あるものを秘めてきた弟。異母兄弟は、陽と陰であり、動と静な二つの人生を巡り辿り、彼らの祖父母、両親の時を経て…希薄で怠惰な世界を赤裸々に、リアルに語り綴る。

人類が長い時を経て辿り着き我々生きた世界は、オルダス・ハックスレーが『素晴らしき新世界』で描かれている幸福な社会なのかもしれない。悲劇や激しい感情の排除された社会であり、完全な性的自由が実現し、個性の開花や快楽に対しての障害となるものは何ひとつ存在せず、ちょっとした気分の落ち込みや、悲しみ、苦痛は残るが、でもそれは一センチの錠剤、クスリを服用することで簡単に解決する世の中、それは我々が熱望し人類が思い描いた楽園であったのかもしれない。

官能、悲哀、絶望。

この物語は、この世界が存続するためには根本的な変化が必要となった時、共同体、不変性、神聖さという言葉の意味を信頼にたるやり方で再建することなどできないと現実を見、哲学的問題が明確な指標としての意義をも失い、古い精神的伝統に根差すものも苦痛を示すものとなり、科学しか信頼せず、科学が唯一否定し得ない真実の基準となり、遺伝子的なものによって変化はもたらされることを見出した…異母兄弟の兄の…陰であり静であった弟の分子生物学者ミシェルの生涯を綴る回顧録。

楽園で生きている人類は、人類によって新しく生み出された種族であり、性別をも持たない不死の種族であり、個人性、分裂、生成変化を超克した存在。今の世の中、社会、世界の問題点と課題を克服するためには、人類を再構築し和解するためには、兄弟愛がもっとも必要な要素とし、現代社会の、現代世界の一面を描くことで導き出された近未来的な物語であるのかもしれない。