ヴァンラーレ八戸は運がいいチームである、と自分は思う。
JFLに参入した際も、現在で言う所の地域CLを勝ち抜く経験なく昇格を果たすことができたし。
参入後には、ライバルチームの潰し合いを尻目に、組み合わせの妙もあって、ステージ優勝をすることもできたし。
しかし、運だけで前へ進み続けるほど、ステージが高くなればなるほど甘くはなくなるのは自明のことだろう。
最終節、降格が濃厚(試合開始時点では、降格が決まってたのかな?)の栃木ウーヴァFCと対戦。前半で退場者を出し、10人になった栃木を相手に決めきれず、千載一遇のPKのチャンスも外した。栃木はカウンターを狙い続け、後半唯一のシュートという文字通りのワンチャンスをものにした。栃木は20本のシュートを浴びながらも1点を守り切った。八戸は、J3昇格のためには、八戸の勝利が前提でFC大阪の結果次第だったが、八戸がリードをする場面も無かったので、他会場の経過を気にすることもなく、今季の全日程を静かに終えたのでした。
では、ヴァンラーレ八戸は運だけのチームなのでしょうか。また実力が足りなかったのでしょうか。
この点、自分はそう思いません。強豪ひしめくJFLにあって、安定して優勝を目指せるかと言えば懐疑的にならざるを得ない部分もあるのだけれど、少なくとも年間4位に値する実力は充分持っていると思います。JFLの門番と言われ、天皇杯でも話題になる強豪Honda FCとの過去3年の対戦成績は、6戦して八戸の3勝2分け1敗。対Honda FC戦でここまで明確な結果を残せているチームは、現在のJFLでは八戸以外にありません。
一方で、勝負所やここ一番という試合で脆さが出たのも今季のヴァンラーレ八戸の戦いでは明らかだったかな、とも思います。
開幕から6連勝という最高のスタートを切ったファーストステージ。結果的に、上位の実力の相手がステージ後半に集中していたという見方もできなくはないけれど、ステージ後半の7試合で0勝3分け4敗と全く別のチームになったようになってしまいました。ちなみに、擁護する点があるとすれば、この時期の八戸は、出場メンバーを固定しておらず、戦力を底上げしながら結果も求められるという状況だったことは付け加えられるだろうけど。
セカンドステージも、最初の9試合を6勝3分け0敗で戦うことができていたものの、終盤の大事な時期となった第10節から3連敗。そして、J3昇格の可能性が残った最終節も、JFL降格が決まった相手に敗戦を喫してしまいました。これもちなみになのだけれど、最下位相手だからといって勝利が当たり前というほど簡単ではなくて、実際自分が応援している浦和レッズも、2007年に勝てば優勝が決まるという最終節に、J2降格が決まっていた横浜FCと対戦。その試合に0-1で敗れ、優勝を逃したことがあります。つまり、どんな試合でも難しさはあるものなのだけれど。
別の見方も。今年、ヴァンラーレ八戸がホームゲームに2000人以上の観客を集めた試合は8試合ありましたが、その通算成績は八戸の2勝1分け5敗。720分で取った得点は5。0対1での敗戦が4。プレッシャーがあるのかは分からないが、単純に上位を狙える結果ではなかったと言えるでしょう。
年初のこのブログで、近年JFLからJ3に昇格したチームの結果からみて、昇格に必要となる成績の目安は18勝7分け5敗(勝ち点61)だと書いた記憶があります。今季のヴァンラーレ八戸の結果は、15勝6分け9敗(勝ち点51)。そもそもファーストステージの段階で5敗をしてしまっており、例年であれば昇格はシーズン前半時点で相当厳しい状況だったと言えます。それが、最終節まで昇格争いが残ったのは、強豪ソニー仙台の失速(とはいえ、対八戸戦では、何で連敗しているのか分からないくらい完膚なきまでに叩かれたのだけれど)や、新勢力のFC今治の台頭等、混戦に拍車が掛かったから。もちろん八戸のセカンドステージの粘りもあった訳だけれど、本来であれば早々に可能性は消滅していたはずだったのです。
勝負弱さという点では、やはり「青森ダービー」にも触れなければならないでしょう。今季ラインメール青森に勝利できたのは、天皇杯につながる青森県予選の決勝のみ。JFLのリーグ戦では、2敗といいところがありませんでした。対青森に関しては、JFLの対戦だけに限れば4戦4敗。これでは、とてもではないが胸を張って昇格することもできないでしょうね。
敗因をメンタルに求めてしまうと、大抵の場合お話が陳腐なものになってしまうことが多いのだけど、前節の東京武蔵野シティFC戦で、0-0で終了した前半は、おっかなびっくりしながらの戦いぶりだったところ、後半冒頭にたまたま先制してからは、ポゼッションも見違えるようになり、シュート数でも武蔵野を圧倒できたという試合内容一つをとっても、ヴァンラーレ八戸の選手が感じているプレッシャー、あるいは精神的な弱さというものは、我々が観客側として見ている以上に大きく、あるいは深刻なものだったと言えるでしょう。そうでなければ、ここまでに挙げたネガティブな結果について説明がつかない、と自分は思っています。少なくとも、自分たちにのしかかるプレッシャーを払いのけ、持っている実力を如何なく発揮する手段を最後まで手にすることはできなかった、ということなのでしょう。
今季のヴァンラーレ八戸にとって、一番の明るい話題は、平均観客動員数がJ3昇格基準の2000人を満たしたことだと思います。スタジアムも整い、集客面も充実したとなれば、J3昇格に向けては文字通り「あとは結果だけ」のクラブにすることができました。本来JFLに呼ぶことが難しいレベルの選手でも、”J3昇格へ向けてまずは1年だけ八戸へ来てくれないか”というオファーの仕方ができるのは、大きなことだと思っています。来季に向けての補強が結果的に成功した場合、半分くらいは今季スタジアムで観戦してくれた八戸圏域を中心としたお客さんがもたらした成果だと言えるに違いないです。
最終節終了後、スタジアムでのセレモニーの場で「責任」という言葉を口にした柱谷監督。成果は選手に帰し、責任は監督に帰すという考え方からすれば、当然とは言えるのだけれど、個人的には可能であれば来季も指揮をして欲しいですね。それは、今季柱谷監督の就任が決まったのは、ある程度補強選手が発表された後であり、純粋な意味で監督が希望する選手が加入していたかどうかが疑わしいから。JFL独特の雰囲気にも慣れ、チームの弱点等も見ることができた上で、来季に向けた補強等必要な判断を監督自身が下すのは、至極当然のことだし、そもそも監督をコロコロと変えること自体あまり良いことではないと思うので。
柱谷監督は、必要とされるだけの”熱”を感じたから監督のオファーを受けたという趣旨の話を就任時にしていたと記憶しているけれど、であれば、平均2000人の観客が詰めかけるようになった状況だけ捉えても、その熱量は続いていて、さらに成長し続けている訳だし、監督自身の家庭的な事情でもない限り、監督就任2年目に突入するのは当然のことではないだろうか、と思う。
最後にサポーターについて。地道なビラ配りやポスティング等の成果もあって、年々集客数は着実に成長し続けています。この状況は、J3昇格を狙う他のJFLチームの模範になるものだと思うし、その継続的な努力には本当に頭が下がる思いです。その中心にいらっしゃるゴール裏の皆様には特に感謝を申し上げたいと思います。地方の一都市がサッカーで盛り上がれる環境になる。それが着実に進んでいるのはとても幸せなことだと思っています。まずはゆっくり休んでもらって、来季また新たに挑戦し続けて欲しいですし、微力ながらできる範囲でサポートできればと思っています。
たまたま、今日隣の席に座った方が、結構お年を召したおばさま2人組でいらっしゃいました。成田選手を推しているらしく、ヘディングで相手の攻撃を跳ね返すたびに歓声を上げ、選手交替で退く時には不満をもらすくらい熱を入れていらっしゃいました。ちらっと見ると、選手紹介のパンフレットを自身で切り貼りして、試合観戦の参考にしている様子で、とても微笑ましく感じられました。
サッカーと言うと、若い層の娯楽と考えがちなのかも知れませんが、超高齢社会なこのご時世、高齢者層も含めた視点が必要なのだと思います。その意味を含めての「地域全体」であるし、「地域貢献」でもあるのでしょう。クラブの成長という視点で、今日隣に座ったお客さんは有難い人たちだったし、試合観戦を後押しした最大の功労者こそが、ヴァンラーレ八戸の中心に居るサポーター達だと思っています。
正直言って、来季の盛岡遠征や、学生時代思い出のある秋田遠征が無くなってしまったのは心底残念なのですが、JFLはJFLでの面白さもあるし、ダービーマッチ勝利という宿題等も残っている以上、老若男女一丸となって、来季も戦えればと思います。
冷静に考えれば、J3昇格は遠のいたかも知れないけど、その先のJ2を見据えた場合、どのみち3000人以上の集客が必要だとすれば、J2までの時間的距離は変わってないかも知れないしね(スタジアム要件は置いておくとして)。
来季に必要な補強についても書きたいのだけれど、長くなってきたので一区切り。選手、関係者、サポーターの皆様、お疲れ様でした。そして、スポンサー企業の皆様も1年間ありがとうございました。