第10話  あらすじ


清霞が帰宅すると、美世の他にゆり江も一緒に出迎えてくれた。
ゆり江は通いで、夕方には帰るのでいつもはいない。そして美世の様子が明らかにおかしく、俯いてこちらを見ようともしない。
清霞を出迎える挨拶を述べると部屋へ引きこもってしまった。

居間でゆり江から事情を聞くと、本末転倒もいいところだと清霞は頭を抱えた。
自分が斎森の家で話をつけている間に、実家の者に自尊心を傷付けられてしまった。ゆり江には斎森家の事情を話してなかったが、いずれ話して力になってもらうつもりでいた。出遅れてしまった自分に腹が立つ。

「どうすれば自信を持ってもらえるんだろうな」

思わず呟くと、ゆり江はこともなげに

「決まってますよ。女は愛されて自信をつけるので、これから分かりやすく愛情を示して、大切にしてあげればいい」

と伝えるのでした。

遅くなったので車でゆり江を送ったあと、美世と話をするため部屋の前に行く。が、沈みきっていて話ができる状態ではなかった。

「おまえが悩み抱えこんでいるものは、そのうち気にしなくてよくなる。だからあまり深刻に考えるな」

それだけ伝えるとそっとしておくことにして、自室へ戻ると便せんと万年筆を手に取った。

それから1週間、美世は引きこもったまま。清霞は式につけ回され、斎森真一からの返事もなく悶々と過ごしていた。

美世は部屋で組紐を編んでいた。清霞へ贈る分はとっくに完成しているが、今は自分の気持ちを落ち着けるため。

香耶を思うと自分が惨めになるので、清霞のことを考える。

(綺麗で、優しくて、強い旦那さま。彼のそばは居心地がよくてずっとそばにいたい。けれど自分には異能も教養もなく、嫁に相応しくないことを話さなければ・・・)

そこへゆり江が来て、美世にお客様だと言う。

美世の今の居場所を知っている人なんていないのに誰だろう?と思いつつ、せっかく来た人を追い返せるわけはなく通してもらう。

やってきたのは斎森家にいたとき最も信頼していた使用人の花だった。

「大きくなられましたね、お嬢様」

美世が子供の頃、お稽古から戻ると部屋の物がすっかりなくなっていた。大切な実母の形見まで。
花が買い出しの用事に行ってる間に、継母の香乃子が処分してしまったのだ。

この頃は父親が味方してくれると思っていた美世は反論しに行くが、逆ギレされ蔵に閉じ込められる。そして花は解雇されてしまい、それから美世の居場所は完全になくなり、使用人以下になった。

花とはそれっきり会っていない。

突然のことに言葉のでない美世に、花は自分の近況を話しだす。故郷に帰って隣の村の男性と結婚し、今は子供もいて畑仕事をしながら幸せに暮らしていると。

「お嬢様はどうですか?幸せですか? 今日ここに来たのは、辛い思いをなさったお嬢様が、幸せに笑っているところを見たかったからです」という言葉に美世は堰を切ったように泣きながら話し出す。

香耶と幸次の縁談が決まり、自分は追い出されるように久堂家に嫁げと言われた。

絶望したが、相手は清霞でとても優しい人だった。彼に惹かれてるけれど、自分には異能がない。見鬼の才さえも。だから旦那さまの妻には相応しくない。

 

改めて言葉にするととても辛かった。


 

そんな美世に花は優しく問う。

「お嬢様、どうして私がここに来たと思いますか? 斎森家や帝都に縁がなくなった私が、どうやってお嬢様の元に来ることができたと思いますか?」

「最初に手紙をもらったときは驚きました。雲の上の方ですから。―お嬢様、久堂さまは良い方ですね」

美世を優しく抱きしめながら、花は思いもかけない人の名前を言った。


〈感想〉
美世ちゃん、実家の「異能が第一」という概念に囚われすぎて、心を閉ざし真実に気付けない。


清霞が自分の無力さを感じオロオロする姿、やっぱりたまらない( *´艸`)

調書を読んで、酷すぎる家族から美世を守るために斎森家へ絶縁宣言をしに行ったのに。二度とあの家族を美世に近づけないようにしたつもりだったのに。
少し出遅れたために、こんなことになり本末転倒になってしまった。

でも清霞の方は、既に気持ちが決まっていて。

自分の気持ちと、それから異能の有無は変えられないけれど、他のことはこれからいくらでも身に付けていける。そして異母妹や実家のことも気持ちひとつで変えられるということを伝えようとするけれど、傷ついた者に無理強いは禁物だと、向き合ってしっかり話したい気持ちをぐっと我慢する。

優しすぎるよ、清霞~(T_T)


「異能の有無なんて、どうでもいい。ただそこにいてほしい」って早く言ってあげたいね♡