「なぁ・・・どうするよ?」


「ねぇ・・・どうするの?」


「あたし・・・こわぃ・・・」


さて、3人はその場しのぎで上陸した島の浜辺で、会議を開いていたのだった。


「絶対なんかいるよな?ここ。」


珍しく、ジルが心配そうな顔をしている。


「うん・・・さっきなんか影が動いたし・・・」


さっきアロスは何かを見たのだ。そのナニカが何かわからないから会議をしているのだ。


何がなんだかわからなくてすまない。でも、ナニカが何か、わからないのだ。それしか言いようが無い。


「いやだぁ・・・こわぃ・・・」


さっきから、ミユはずっとおびえている。さっき、豪快に巨大ダコを木っ端微塵にしたのに・・・。


「大丈夫だ!俺が居るだろ!?なっ?」


「ぅ・・・うん・・・。」


ミユは絶対にジルを信用して無い。そりゃ無理も無いだろう。


だが、ミユにひそかに思いを抱いているジルとしては、ここはカッコいいところを見せたいようだ。


「こわくないって!ほら!なにもいないよ!オラー お前なんか怖くないぞー 出てきやがれってんだ!」


アロスは思った。誰もいないと思ってるんだったら誰に話しかけているんだ・・・


ジルが叫んでいると、草陰に影がうごめいた。 


・・・ササッ


「きゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


「うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


この状況を解説しよう。


まず、何かが動いた事によってミユが驚いたのが、最初の「きゃぁあああ」だ。


そしてその声に驚いたジルの声が後の「うわぁあああ」だ。


紛らわしいいな。


「すこしだまっててくれよ・・・」


ボソっとつぶやくアロスだった。




「結果、この島には何かがいると、決断するよ?」


「うぅ・・・いやだぁ・・・」


「大丈夫!俺が付いてる!」


まだ言ってる。


「だってジル、信用できないよー!だって見た目からは想像できないくらい臆病じゃん!」


「!!!!!!!!!!!」


今、名もなき無人島にて、1つの桜が散った・・・。


「お・・・俺が・・・臆病・・・」


「おーい、ジルー、おーい」


だめだ。目が真っ白だ。


CMで「ほらみて!こんなに真っ白!」っていってる洗剤であらったと見せかけている新品のシャツみたいに真っ白だ。


「あれ・・・あたし、マズぃ事イッチャッタ?」


ぅん、とてもまずいよ。 ジル、ヤバいもん。


THE・失恋


「臆病・・・そうか・・・そうなんだ・・・」


アロス・ミユ 「へ?」


「そうか、お前らは臆病って言うんだ、俺のこと。じゃあ俺、いらないよな。」


「え、ちょっ!ジル?」


「俺、いいよ。充分迷惑かけちゃったし。ここで分かれようぜ。じゃぁな」


ジルは深い森のなかに猛ダッシュで突っ込んでいった。


その目には、キラリと光る、儚い結晶がみえた・・・。


「あっ、まって!ジルぅ!!」




・・・ そりゃ無理も無いよな・・・


好きな人に臆病なんていわれたら・・・ショックだもんな・・・


でも、ミユは気づいて無いだろうな・・・


幼馴染だもんな・・・


「どうしよぉ・・・あたしどうすればいいの・・・」


突然、泣き崩れてしまうミユ。


「あたし・・・ジルばっかに責任負わせてたのに・・船旅の時だって、酔って寝てたときも付きっ切りで看病してくれて・・・そのせいで船が止まらず変な方向に言っちゃって・・・それなのに、ジルは悪くないよ、とすらも言ってあげられなかった・・・本当に臆病なのは私なのに・・・ジルはあたしのために尽くしてくれたのに、恩を仇で返すようなまねしちゃって・・・あたしってほんとにサイテー・・・」


自分もそうだったのかもしれない・・・


ジルにばっか責任をもたせて、それが当たり前かのようにしてて・・・ ジルは自分達のためにこんなにがんばってくれていたのに、それに気づかずに一緒に居た。


ジルの泪を見たのは初めてだった。


きっと、どんなに苦しくても、負けじと踏ん張っていたのである。


守りたい人がそばにいるから・・・


だけど、その守りたい人に臆病といわれてのである。


もう視界が真っ暗になったんだろうなぁ、と思った。


ミユはずっと泣いていた。けど、ミユと同じように、ミユは悪くないよ、といえなかった・・・


「どうする?」


「っく・・・ひっく・・・ジル・・・ごめんね・・・」


だめだ・・・こっちもこっちでまいっちゃってる。


ミユ、責任感強いもんなぁ・・・  おっちょこちょいではあるけれど、何か失敗すると必ず責任を取ろうとするのがミユだった。


しばらくそっとしといたほうがいいかな・・・


そのとき・・・


シュルシュル・・・


ニョロニョロがきた・・・


あのニョロニョロが・・・


「・・・ん?」


なんか這ってる・・・


シャァ~~~~~~~~~~


「ひっく・・・ひっ・・・・・・・・・・・・・・きゃあああああああああああああああああああああああ」


蛇だ、しかもかなりデカイ


「くそっ!魔物かっ!」


「きゃああああぁぁ・・・っう」


「ミユ!」


かろうじて受け止めたが、ミユが気絶してしまった。


「俺だけで倒すの?無理だろ・・・」


アロスはすっかり覚醒している。


アロスは責任感や、勇気が覚醒すると、勇敢な性格になるのだ。


なんっだろーね? ねー?


アロスは地面に転がっていた木の棒を持つと蛇に殴りかかった。


「きっと、蛇なんだから毒をもってるはず。だとしたら牙には気をつけなきゃ。」


機転まで利くようになってる。そーゆー体質だとおもってください。RPGの勇者的な。


頭に一撃を与えると同時に、牙が腕にめり込んだ。


「くっ・・・ 気をつけていたつもりなのに・・・」


傷跡を押さえながら応戦するアロス


「! 牙を叩き折ればいいのか!」


アロスは力いっぱい蛇の口に棒を突っ込んだ。


すると、バキっと音を立てて、牙が折れた。


! おりゃっあああああああ!


そして飛び上がった反動で身体を思いっきりねじり、遠心力に任せて顔面に蹴りを入れた。


ジャァ~・・・


巨大蛇は動かなくなった。


アロスの熱がだんだん冷めていく・・・


「ふぅ・・・倒せた・・・自分でも驚きだなぁ・・・」


気づくと、蛇にかまれた腕がはれ上がっている


「うわぁ~~痛い・・・ これ、どうしよぉ・・・」


僕は一気に不安になった。


死ぬのかなぁ・・・こんなところで。ジルとミユはどうなるんだ、ジルは帰ってきてくれるだろうか、ミユは1人でも大丈夫だろうか・・・


「ん、ん~・・・」


「あ、ミユ。気が付いた?」


「あれ、アロス。ここは?」


「蛇をみて気絶したんだよ。」


「あっ!そうだ、蛇は!?」


「僕が倒したよ。」


「え!?ヒトリで!?アロスってそんなに勇気あったっけ?」


「んーん。僕は臆病だよ。けどね、なんか熱くなって熱っぽくなると、なんだか勇気がわいてくるって言うか・・・テンションが上がるんだよねぇ」


「なんだそりゃ、へんなのw」


「あははw  ・・・っん」


「え?怪我してるの!? あ、毒!?」


「ぅ、うん・・・噛まれちゃってさ」


「そっか、あたしのために・・・アロスまで・・・ごめんね・・・」


再び泣き出してしまうミユ


「いぁ、僕の不注意だから気にしないで。」


「違うよ・・・私が気絶なんかしなければ銃だってあったし・・・ごめんねぇ・・・」


「いや、平気だって!」


「うぇ~ん・・・あっ アロス、ちょっとその腕かして!」


「え?う、うん。」


アロスはミユの前に腕をだした。


ミユは黙って傷口を少し舐め、手をかざした。


すると、ミユの手からボヤっとした緑色の光が出てきて、アロスの傷口をつつんだ。


だんだん痛みが消えていって、ついには痛みが完全に消え去った。


「え?なにしたの!?」


「これは解毒魔法。船乗りには必須よ?船旅中に、食料が尽きたとき、海の魚を食べる前には必ずかけるの。お父さんに教えてもらったのよ。」


ミユは魔法まで使えたのか・・・すごいなぁ・・・


それに比べて俺は・・・何ができる?


「・・・すごいね、ミユは。本当に尊敬するよ。」


「なんでよwアロスだって、魔法つかえるじゃん。」


僕も一応、回復魔法できるけど、成功確立は五分五分・・・


「あれはだめだよw失敗する事の方が多いよw」


「じゃぁ火炎剣技は?」


あぁ、アレも一応魔法?かなぁ・・・


「あれも、魔気が集中するまで時間がかかるよ。完璧になる前に先生亡くなったから・・・」


「そっか・・・」


「とにかくありがと!」


「ううん、守ってくれたお礼だよ!」


ジル、こんなセリフをまっているんだろうな・・・ちょっと罪悪感だな・・・


「じゃあ、ジルを探しに行こっか・・・」


「うん・・・謝らなきゃ・・・」


アロスとミユは密林へ足を進めるのだった。