眼科医と眼科専門MRのためのデータ分析あれこれ!! -3ページ目

眼科医と眼科専門MRのためのデータ分析あれこれ!!

かれこれ20数年の間、眼科領域専門のデータ分析に携わってきた経験の備忘録です。
一般的なデータ分析の内容も書きますが、眼科にこだわって書いていきます。

こんばんは

ご無沙汰しております。

学会も終了し、論文化についての作業が粛々と進む毎日です。

今日から数回にわたりEZRに関連する書籍の紹介をさせていただきます。
ご紹介する本は新谷 歩 先生著「みんなの医療統計」です。
副題に「12日間で基礎理論とEZRを完全マスター」とあります。
中身をすべて解説してしまうとよろしくないので、
参考になると私が独断と偏見で感じたところをご紹介いたします。

本日は3日目の研究デザインについてです。
先ず、皆さんに覚えて欲しいのが36頁にあるヒルの因果関係の条件です。
また、37頁に太字で協調されている
「統計的有意差はヒルの条件の中の9つもある項目の一つにすぎず、
残りは、生物学的な知識と、どのように研究が行われたかという
疫学的な知識である研究デザインがベースとなります」と記載されて
います。
その次に続くセンテンスにも、めちゃめちゃ大切な言葉が記載されています。
ここにはいかに研究デザインが重要かというメッセージがあります。
何か適当にデータを取って専門家に解析してもらったら、何か学会発表できる結果が
得られるであろうというような安易な研究は医療資源の無駄になるのでやめましょうという
メッセージです。
是非、この後に続く研究デザインの解説についても読んでいただければと思います。

それではまた!
こんにちは!
お久しぶりです。

最近は今月中旬にある学会の関連で結構忙しくさせていただいており
なかなか本ブログを更新できずにいました。

先日、MRの方とお話ししていると以下の質問をいただきました。
・医学のデータになぜ統計が必要なのか?
この質問は多くのMRの方々がお持ちの疑問では?と考え記載してみます。

まず、得意のGoogle先生で「統計はなぜ必要か」と検索してみました。
もちろん多くの識者の方々が説明をされていらっしゃるので是非読んでみてください。
また、佐久間 昭 先生の医薬統計Q&AのQ1にも「医学研究に統計学がなぜ必要か?」がありますので
手元にある方は今一度ご確認いただければ幸いです。
私なりにこういった「○○は何故必要なのか?」という質問に回答する時には
「では○○が無い世界を考えてみましょう!」と質問者と一緒に考える解決手段をとります。
それでは医学の世界に統計がなかったらどうなるでしょうか?
ドライアイの患者様に処方するお薬を選ぶにしてもお薬が一つしかなければいいのですが
現在は代表的なものでも人工涙液、ヒアレイン、ジクアス、ムコスタ等があります。
統計的な評価がなかった場合には、
・高名なオピニオンが推奨の薬を使うとか
・お気に入りのMRさんの薬を使うとか
・勘で選ぶとか
いずれにしても責任を持った処方ができないと思います。
もちろん、統計が無かったらお薬そのものが承認されないのですけど。

その他いろいろ弊害が出そうです。
新しい手術を考えたとしても、これまでの手術に比べてどういいのかを
客観的に説明する手段がありません。
つまり比較するということができないので、何も進歩しなくなる世界だと思います。
いかがでしょう?

それではまた!

おはようございます!

本日は無作為化について書きたいと思います。

 

プラセボ対照比較試験に代表される介入研究のデータ分析において、

比較する群の比較可能性を担保するためには、可能な限り試験へのエントリー時点で

各群の背景因子など、結果に影響しそうな因子を均一にしておく必要があります。

 

この比較可能性を担保するための手法が無作為化(randomization)です。

この無作為化の目的は、比較する群間の年齢、性別等の既知の結果に影響する因子の

分布を均一にすることですが、無作為化することにより、知られていない因子の影響も

均一化することが期待できます。

 

最も単純かつ簡便な無作為化法は、コインを投げて裏表で決める方法です。

これは比較群が2群のみの時には、裏か表かで割り付ける群を決定します。

また 、比較群が3群以上になれば、サイコロを使用する方法もあります。

より厳密に無作為化にするためには乱数表やパソコンで乱数を発生させて

無作為化する方法もあります。

また、最近はあまり使用されているのを拝見しませんが、封筒法という方法もあります。

これはあらかじめ割り付ける群を記載した紙を封筒にいれておき、来院順などの順番に

その封筒を開封して、記載されている群の処置をその患者に実施するというものです。

 

ただ、上記の単純な無作為化方法では、標本数がある程度大きくならないと、

因子の分布に偏りが生じることがあります。

 

この偏りを防ぐ方法として、一定の人数毎(6人が基本)にブロックを作り、

そのブロックの中で無作為化を行う方法があります。

これを置換ブロック法といいます。

ブロック内で無作為化されているので、ブロックを消費する毎に無作為化が完了している

仕掛けです。

置換ブロック法は製薬会社が治験でよく使用する方法ですので、治験に参加されたご経験

のある先生はなじみが深いかもしれません。

ただ、臨床研究で無作為化をするといってもなかなか難しいと思います。

 

最近ネットで見つけたのですが、イルカシステム様という会社がクラウドを利用して

無作為化をすることができる「ムジンワリ」というシステムを公開しています。

フリー版とお金がかかるプレミアム版があるのですが、単一施設で1群30例程度の

小規模な探索的比較研究であればフリー版で十分ではないかと思います。

無作為化をCRO等の業者にお願いすると100万単位で費用がかかります。

このような無料で無作為化試験ができるのは素晴らしいと思います。

先生がお持ちの研究仮説について、ムジンワリを使用した探索的な無作為化比較試験で

確認した後に、仮説が証明できそうであれば、探索的な無作為化比較試験の結果を

利用して例数設計や次の試験プロトコールを作成し、必要であればプレミアム版で

共同研究することで質の高い研究を自信を持って実施可能ではないかと想像します。

 

注:「ムジンワリ」を提供されているイルカシステム様と私には一切の利害関係が

無いことをここに記載しておきます。