おはようございます!
本日は無作為化について書きたいと思います。
プラセボ対照比較試験に代表される介入研究のデータ分析において、
比較する群の比較可能性を担保するためには、可能な限り試験へのエントリー時点で
各群の背景因子など、結果に影響しそうな因子を均一にしておく必要があります。
この比較可能性を担保するための手法が無作為化(randomization)です。
この無作為化の目的は、比較する群間の年齢、性別等の既知の結果に影響する因子の
分布を均一にすることですが、無作為化することにより、知られていない因子の影響も
均一化することが期待できます。
最も単純かつ簡便な無作為化法は、コインを投げて裏表で決める方法です。
これは比較群が2群のみの時には、裏か表かで割り付ける群を決定します。
また 、比較群が3群以上になれば、サイコロを使用する方法もあります。
より厳密に無作為化にするためには乱数表やパソコンで乱数を発生させて
無作為化する方法もあります。
また、最近はあまり使用されているのを拝見しませんが、封筒法という方法もあります。
これはあらかじめ割り付ける群を記載した紙を封筒にいれておき、来院順などの順番に
その封筒を開封して、記載されている群の処置をその患者に実施するというものです。
ただ、上記の単純な無作為化方法では、標本数がある程度大きくならないと、
因子の分布に偏りが生じることがあります。
この偏りを防ぐ方法として、一定の人数毎(6人が基本)にブロックを作り、
そのブロックの中で無作為化を行う方法があります。
これを置換ブロック法といいます。
ブロック内で無作為化されているので、ブロックを消費する毎に無作為化が完了している
仕掛けです。
置換ブロック法は製薬会社が治験でよく使用する方法ですので、治験に参加されたご経験
のある先生はなじみが深いかもしれません。
ただ、臨床研究で無作為化をするといってもなかなか難しいと思います。
最近ネットで見つけたのですが、イルカシステム様という会社がクラウドを利用して
無作為化をすることができる「ムジンワリ」というシステムを公開しています。
フリー版とお金がかかるプレミアム版があるのですが、単一施設で1群30例程度の
小規模な探索的比較研究であればフリー版で十分ではないかと思います。
無作為化をCRO等の業者にお願いすると100万単位で費用がかかります。
このような無料で無作為化試験ができるのは素晴らしいと思います。
先生がお持ちの研究仮説について、ムジンワリを使用した探索的な無作為化比較試験で
確認した後に、仮説が証明できそうであれば、探索的な無作為化比較試験の結果を
利用して例数設計や次の試験プロトコールを作成し、必要であればプレミアム版で
共同研究することで質の高い研究を自信を持って実施可能ではないかと想像します。
注:「ムジンワリ」を提供されているイルカシステム様と私には一切の利害関係が
無いことをここに記載しておきます。