心の声 | なんとかなるだろう物語

なんとかなるだろう物語

楽しく楽しくまいりましょう。

  

久しぶりに詩が読みたくなって、本屋をウロウロして、パラパラとページを捲り、素敵な出会いがあったので購入しました。

言葉の力
自由な心
静かな叫び

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


『わたしを束ねないで』

新川和江




わたしを束ねないで

あらせいとうの花のように

白い葱(ねぎ)のように

束ねないでください

わたしは稲穂

秋 大地が胸を焦がす

見渡すかぎりの金色の稲穂



わたしを止めないで

標本箱の昆虫のように

高原からきた絵葉書のように

止めないでください

わたしは羽ばたき

こやみなく空のひろさをかいさぐっている

目にはみえないつばさの音



わたしを注(つ)がないで

日常性に薄められた牛乳のように

ぬるい酒のように

注がないでください

わたしは海

夜 とほうもなく満ちてくる

苦い潮(うしお) ふちのない水



わたしを名付けないで

娘という名 妻という名

重々しい母という名でしつらえた座に

座りきりにさせないでください

わたしは風

りんごの木と

泉のありかを知っている風



わたしを区切らないで

,(コンマ)や.(ピリオド)いくつかの段落

そしておしまいに「さようなら」があったりする手紙のようには

こまめにけりをつけないでください

わたしは終わりのない文章

川と同じに

はてしなく流れていく

拡がっていく

一行の詩




(・_・)