またまた 帯に惹かれて購入した1冊です。
のどかな 田舎にある山の頂上にある 郵便局が舞台のファンタジー小説です。
山の頂上にあるなんて、郵便局としては面白い場所にあるわけですが、この郵便局は
所在地も面白いけれど、もっと面白いのはその、役割。郵便局なのだから、郵便に関
することが主な仕事に決まっています。が、この郵便局はあの世とこの世の境界線に
建っていて、現世の人には用のない郵便局。ここに来る人たちは、みんなお亡くなりに
なった方たち。なのだ…。
こう書くと、何かおどろおどろしいホラー怪奇小説。と、思う人もいるかもですが、この
物語は実に、あの世とこの世の境界線が非常に低い。設定では登場人物たちも死者
でありながらそれはそれはイキイキとしていて、怨霊と呼ばれる種類の人?でさえ、
自分がなんで怨霊になったのか、どうして成仏できないのかさえ、理解していない。
と、いうなにやら怖くない怨霊なのです。そんな、にわかに信じがたい設定の郵便局に
(れっきとした公共機関なのだそう)いわゆる就職難民の主人公、安倍あずさがやっと
就職が決まったところから始まります。
そう、この郵便局に就職が決まったのです。採用者の郵便局長、赤井の目に留まった
あずさの特技が「探し物を見つける名人」。この郵便局が求めていたのは、探し物を見
つけられる人物。だったのです。
 まず、設定自体が面白く、また飾り気のないけれどしっかりと伝わる文体で読みやすく
楽しかったです。郵便局の名前も「登天郵便局」(とうてんゆうびんきょく)と、言い縁起も
定かでないほど古い神社「狗山比売」(いぬやまひめ)をどかしてまで建てた郵便局が舞台。
そのどかした狗山比売との契約書を無くしてしまったから、大変。
それを軸に物語は展開していきます。その、サイドストーリー的に、殺されて放火までさ
れてしまった「真理子さん」と、いう怨霊が絡みあずさはその事件も解決していきます。
自分でも誰に殺されたか分からなかったことで、怨霊になってしまった可哀そうな霊です
がそういう霊たちが普通にそこここに存在しているのです。
作者はあとがきで「死んだ人は消えてしまうのではない」と、いう思いを精一杯こめて書
いたと、言っています。作者は、青森県在住の作家ですが、この物語の出版にあたって
の作業をしているとき、東日本大震災が起こったそうです。1週間も停電が続く中で、こ
の物語をこのまま世に出していいだろうかと、反芻したそうです。
けれど、作者は「命を落としたからと言って、生きていた人が消えてしまってたまるか。」
と、最後に書いています。
私は、何とはなしにそうかもしれない。と、共感します。そう思う事は、死者に対しての
本当の愛があるのだと思うからです。私も、亡くなった祖母が出てきたところで、怖くも
なんともありません。むしろ、また会えて嬉しいと、思うと思います。そんな、祖母が私の
近くや今はもうないですが祖母の住んでいた場所の界隈で、元気にイキイキと野良仕事
でもしていたり、今の時期だと山菜取りでもしているでしょうか。そう思うと、嬉しくもありま
す。死と生という問題をここまで垣根なく、描いた物って私は読んだことがなかったので、
とても楽しく読めました。
読み終わったあと、口の端がちょっぴり上がっている自分がいました。