ベトナム人の特性⑶

 

 ハノイでのアパート生活も、半年以上経過した。私の住んでいるアパートはサービスアパート(Serviced Apartment House)なので、洗濯・掃除は全くする必要がないし、使用済みの食器も洗ってもらえる。実に快適である。また、大型のテレビでYouTubeはもちろんのこと、日本の地上波のテレビ番組も、メジャーなものはすべて無料で視聴することができる。そして、何よりも素晴らしいのは立地である。徒歩2分以内にはTOTOの設備のあるきれいなカフェがあり、日本人がたくさん住む地域なので、日本の食品等を扱うスーパーが徒歩3分以内にある。ありがたいことに、このスーパーは夜10時まで営業している。

 

 このスーパーは夜8時ごろになると、弁当や総菜の値段が20%~50%引きになる。この値引きされた弁当などをたくさん買い込んで、アパートの大きな冷蔵庫の冷凍庫に保存しておくのだ。通常、この手のスーパーは割高な商品がほとんどなので、この割引は本当にありがたい。そして冷凍庫のあるアパートの恩恵だと感じている。しかし、こんなアパートにももちろん問題がある。そしてそれは非常に大きな問題である。

 

 このアパートは交通量の多い車道や夜遅くまで営業する飲食店からは離れているので、平時であれば静かな環境なのだが、同様のアパートばかりが林立している地域に特有の問題に見舞われている。まず、そこら中でアパートの立替え工事が行われている。私のアパートの斜め向かいが当該現場となった。一時期は、ドリル音のためカフェに脱出を余儀なくされた。しかし、ドリル音が納まっても騒音は継続している。深夜まで続くだけではなく、早朝の7時前から騒音は始まる。ベトナム人は早起きだ。おかげで私も早起きになった。しかし、騒音問題は工事が終われば静かになるという一時的な問題にとどまらない。

 

 入居して間無しのある日曜日の夕方、カラオケの下手くそな歌声が聞こえてきたのである。最初、アパートの近所にあるカラオケ店が元凶かと思ったが、そうではなかった。なんと向かいのアパートの警備員がアパートの前にカラオケの機械を出して、マイクを握っているではないか!2時間は続いただろうか。しかし、夏が終わり寒い季節になると、この一人路上カラオケは終了した。

 

 余談であるが、ハノイではアパートや店舗の前にはほぼ必ず警備員がいる。その大半は男性老人で、彼らは椅子に腰かけてボーっとしていたり携帯をいじっていたりしている。店舗前に駐車するバイクの管理のためとも言われるが、私には番犬のように思われてならない。ベトナムの家は日本の家とは異なり、店舗だけでなく民家も玄関前には鉄格子が設置されている。ベトナムではよほど他人を警戒しなければならないのだろうか。

 

 テト(ベトナムの旧正月休み)が近づいていたある晩、10時は回っていただろう。どこからか笛の音が聞こえてきた。祭囃子のような甲高いピーヒャラ・ピーヒャラという音であった。1回切りであれば風情も感じられるのだが、同じフレーズが何度も繰り返される。つまり、本番に向けて笛の練習をしているのだ。やがて美しい笛の音もだんだん騒音と化したのであった。犯人はアパートから約50m離れたT字路の角にある焼肉店の警備員だった。この練習も長期間続いた。

 

 騒音の発生源はアパートの外部だけではない。アパート内部からの騒音もある。最近、夜11頃からドンドンというリズミカルな低音が聞こえてくるようになった。これは12時を回ってもずっと鳴り続けている日もある。私はこれを毎晩聞かされているのである。日によってリズムが変わるのは曲が違うためだろう。早く寝てくれることを願うばかりである。

 

 内部騒音は上からだけではない。下から聞こえてくるのはブーンブーンというモーター音だ。最近、半地下の倉庫兼ガレージの洗濯機を新調したようだ。これまた早朝7時頃から鳴りはじめ、ほぼ一日中鳴り続けている。アパートの住人たちの洗濯物を乾燥するには長時間稼働させる必要があるのだろう。しかし非常に不快である。不快な目覚ましだ。

 長々とアパートの騒音事情について述べてきたが、以上のベトナム人に共通していると思われるのは、他人の迷惑をあまり気にしないというところだ。こういうベトナム人は少なくないのではなかろうか。