<討論その12>

 

参加者:今井氏、佐々木氏、田淵氏、平石氏(司会進行)

 

⒀25:51~26:32

佐々木「今井さんにもう一個聞きたいんだけれど、野生の動物でね、肉食獣っているじゃないですか。トラとかライオンとか。あれが他の動物食べるのはどう思うの。」

 

今井「あ、もちろんそれはいいと思いますよ。動物が動物同士で、そのーあのー、食べるっていうのは当たり前に…。」

 

佐々木「人間が食べるのとは違うんですか。」

 

今井ヴィーガンって言葉自体が、人間に対しての言葉なんですよ。人間がやるものであって…。」

 

平石「佐々木さんの問いに答えるとすると、人間だったらいいんですかっていうことです。」

 

今井「人間だっ たら食べないのは、草食動物だからですね、もともと。それから知的、知的だし…。」

 

田淵「それはあなたの発想で、あなたが草食なのはいいけど。」

 

今井「知的だから…。ちがう、知性があるって言いたかったんですよ。」

 

平石「知性があるから、人間は動物を食べちゃいけないってことですか。」


【概 要】

 ①佐々木氏は、動物が動物を食べることと人間が動物を食べることの違いを問うが、今井氏の返答が間違っていたため、議論がおかしな方向へと進んでいく。

 

【問題点】

 ①今井氏は以下のような三段論法を用いているが、そもそも動物に人間のルール(善悪の判断)を適応すること自体無意味なので、大前提自体が間違っている。今井氏は、「ヴィーガンって言葉自体が、人間に対しての言葉なんですよ。人間がやるものであって…。」と今井氏は訂正しようとしているが、この後の議論に反映されなかった。この訂正を正しく議論に反映するなら、今井氏は佐々木氏の「動物が他の動物を食べるのはどう思うのか」という質問に対しては、「良いとも悪いとも言えない。」と答え直すべきであった。

 

               今井氏の三段論法

                    大前提:「動物は知性がないので他の動物を食べてもよい」

                    小前提:「人間には知性がある」

                    結 論:「人間は動物を食べてはいけない」

 

 ②平石氏は「佐々木さんの問いに答えるとすると、動物だったらいいんですかっていうことです。」と言うべきところ、「佐々木さんの問いに答えるとすると、人間だったらいいんですかっていうことです。」と言い間違えている。

 

 ③討論その6同様、田淵氏の「それはあなたの発想」という発言も、いわゆる「それってあなたの感想ですよね。」というはやりの煽り文句と同じで、相手の主張をただ否定するために用いられる主張で、相手の主張が誤りであるということを指摘し得ているわけではない。また、人間が他の動物より知的なのは厳然たる事実でもあるので、「それはあなたの発想」だという発言は相手を攻撃する意味しか持たない。

 

【分 析】

 ①平石氏は、司会進行役としての役目を果たせていない。

 

 ②この討論その12の議論は無意味な議論であるが、佐々木氏の質問の意図を読み取ってみると、「ヴィーガンが動物世界の弱肉強食を許容するなら、強者である人間が弱者である動物を食べることも許容すべきである。後者を許容しないのなら、前者も許容すべきではない。」という論法が」用いられていると推測されるが、前半には以下のような三段論法が潜んでいる。

 

        大前提:「強い動物は弱い動物を食べてもよい」

        小前提:「人間は強い動物である」

        結 論:「人間も弱い動物を食べてもよい」

 

 これは動物と人間を同列に並べて考えているわけで、人間と動物の間に質的な差異を想定しない場合には妥当である。しかし、動物と人間という表現自体がすでに動物と人間の間に決定的な質的差異(※)を潜入させている以上、小前提は成立せず、よってこの論法に妥当性はない。

 

 (※)「動物と人間」という表現が用いられるとき、動物は人間以外のすべての動物 

  という意味で用いられており、この動物という概念に人間は含まれない。ゆえ

  に、人間以外のすべての動物と人間の関係は自然と人間の関係と同様、二項対立 

  の関係として認識されている。そして言うまでもなく、この二項対立は人間優位

  の二項対立であり、人間以外のすべての動物と人間の間の決定的な質的差異を特

  徴づけているのがこの「人間の人間以外のすべての動物に対する優位性」なので

  ある。人間の優位性についてここでは議論しないが、人間以外のすべての動物と

  人間が対立的に語られる場合、常に暗黙の前提となっているので、「人間≠強い

  動物」となり、この三段論法は不成立となる。