第9章では、もっぱら開発途上国の人口問題がテーマとなり、住環境を改善するために、先進国の協力の必要性が唱えられている。つまり、地方都市を整備することによって大都市への人口集中を緩和し、人口集中による衛生問題を改善することによって出生率を低下させようという先進国側の意図が散見される。
第10章では、海洋や宇宙や南極などの今後の地球資源の利用方法に関する国際的なルール作りの必要性について述べられている。この考え方の根底には、地球は人間の財産、つまり所有物であるという考え方が潜んでいる。
第11章では、戦争をはじめとする国際紛争が地球環境のリスクと密接に関連しているという認識のもと、地球資源を国際的共有財産として全世界が共同で管理監督する必要性が訴えられている。第10章同様、地球は人間が己のために利用する所有物であるという認識に基づいている。
第12章は提言のまとめとして、委員会の以上の報告を単なる報告に終わらせるのではなく実効性を確保するために、具体的方策として、「各国の環境行政機構やUNEP(国際連合環境計画)の強化」、「全地球的モニタリングやリスク評価の推進」、「NGO、学会、産業界等の参加の促進」、「環境保全と持続可能な開発に関する世界宣言と条約の準備」、「多国間援助や二国間援助の改善と強化」、「国際的な活動に対する資金の確保」等の提言がなされている。
ブルントラント委員会の報告書に見られる当委員会の基本的な考え方を以下にまとめる。
①地球環境悪化の主要因は開発途上国の人口増加であるという見解を前提に、開発途上国から人口抑制に対する協力を取り付けるために、開発途上国への配慮を優先している。
②地球環境や地球資源は人類の所有物であるという前提のもと、現文明の維持と発展への貢献度を地球環境や地球資源の価値基準としている。
③エネルギー消費の抑制ではなく、エネルギー消費の増大を前提にして問題の解決策を模索している。
④現文明の在り方自体を問題視するのではなく、科学技術の力によって問題解決を図っている。
つまり、この報告書は、「先進国が築き上げた文明体制の維持」を大前提に、この維持を阻害するものの排除方法の模索を主旨とし、文明体制維持の第1の阻害要因は開発途上国の人口増加による地球環境汚染や地球資源に代表されるエネルギー争奪戦であるがゆえに、阻害要因である開発途上国の人口増加問題を解決するために、開発途上国に対して様々な援助を検討するという内容の報告書である。
