※これは、事実を元にしたお話です。
全てがフィクションではありませんが、
ある程度の事実に基づいて書いています。
その四
-空襲-
第二次世界大戦も終わりに近づいてきた。
明け方、また空襲警報が鳴った。
冬子(とうこ)が住む町は、北海道で有数の工業の町だった。
日本でも三本の指に入る製紙工場があった。この町の人たちのほとんどは製紙工場で働いていた。
北海道は、めったに空襲に遭うことはなかった。農作業をなりわいとしているので、攻めても効果が薄いからだ。
しかし、海沿いのこの町は工業の町であったので、敵にとってかっこうの標的だったのだ。
サダは、小柄な女だった。
小さなずんぐりした身体に、これまた体型に似合った丸っこい小さな指と爪、丸顔、筆の先でちょん、と墨を落としたように小さい目、息を吸うためだけにある小ぶりの鼻。
そして、口元までも小さい。薄い唇。
小さな薄い口なのに、その唇はよく動いた。
サダは、その人の良さと風貌で、皆から慕われていた。人の良さがにじみ出る姿形であった。
敵機が襲ってくるたびに、その小さな身体で冬子を抱き、リュックを背負い、サダは防空壕へ走った。
これで何度目かわからないほど、敵機の襲撃は激化していった。
防空壕は、暗く、湿って、臭かった。
暗い防空壕の奥の方から声が聞こえた。
「小野さん、小野さん、こっちさおいで!」
サダは、小柄な身体をもっと小さくし、這いつくばり、可愛い冬子をしっかりと抱きしめ、防空壕の奥に入っていった。
近所の知り合いたちが、身体をくっつけ合いサダたちの居場所を作ってくれた。
「めんこい冬子ちゃんの顔に焼夷弾が飛んで怪我したら、大変だべさ。ほら、冬子ちゃんはずっと奥に入り!」
冬子は、みなに守られて戦時中を過ごした。
続く