その参
-愛-
宗司(そうじ)は、財産もなく地味で平凡な男だったが、
サダと同じように、施設で出会った冬子をとても愛した。
冬子(とうこ)は、身体が弱かった。
戦時中で食料が不足している中、サダは苦心して冬子の食べ物を調達した。
冬子は、麦やヒエを食べられなかった。芋も嫌いだった。サダは、
あちこちを飛び回って冬子に食べさせる米を集めた。
サダは、とても気の良い女だった。人が困っていると、
自分より人を思いやる女だった。
そんなサダの性格を、周りの人たちも好んでいた。
サダの田舎くさい容姿が、人に好かれる要因のひとつだったのかも
しれない。
やっと集めた白米を、サダは冬子にだけ食べさせた。自分だけ
白米を食べている事について、冬子はなんの疑問も持たなかった。
両親の愛情を当然のように受け入れ、すくすくと育っていった。
大きくなるにつれ、みるみる美貌も増していった。
この町では、冬子の存在を知らない人はいなかった。
「あの綺麗な子」と、町の誰もが話した。
冬子がもらい子だという事も、周知のことだった。
冬子以外は…。
冬子がもらわれたのは1歳の頃だったので、冬子にはもらわれた
記憶はなかったのだ。
続く